西山が女流名人奪取 2月下旬の注目対局を格言で振り返る

西山が女流名人奪取 2月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年03月07日

 ダブルタイトル戦の藤井聡太竜王ですが、激戦を制して白星を先行させています。逆転勝ちの続いた朝日杯でも優勝を飾り、一般4棋戦の完全制覇が見えてきました。

第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第5局

【第1図は△3三桂まで】

 第1図は第72期ALSOK杯王将戦七番勝負第5局(▲藤井聡太王将△羽生善治九段)。激闘の続く王将戦です。第1図の△3三桂は退路を作った好防手です。▲4六銀が「桂先の銀定跡なり」で、5七の地点を受けました。以下は△6九飛から後手にもチャンスのある将棋でしたが、最後は4五の桂を食いちぎって、後手玉を即詰みに打ち取りました。

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写真:翔

第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局

【第2図は▲9一飛成まで】

 第2図は第48期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局(▲渡辺明棋王△藤井聡太竜王)。角換わり腰掛け銀から激しい展開となりましたが、後手が抜け出しています。金銀に囲まれている先手玉のどこを攻めるかですが、△8六桂が「要の金を狙え」の寄せ。この金をはがせば△4七歩成から二枚角が先手玉に直撃しますし、▲7九金も玉が狭くなり右辺からの寄せが効果的になります。▲5一竜の形作りに△7八桂成から寄せ切り、挑戦者が2連勝としました。

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写真:将棋世界

第49期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第4局

【第3図は△4五玉まで】

 第3図は第49期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第4局(▲西山朋佳女王・女流王将△伊藤沙恵女流名人)。二転三転で迎えた最終盤です。△4五玉で一見「中段玉寄せにくし」のようですが、そうではありませんでした。▲3三歩が見た目以上に厳しく、△4七歩成▲3二歩成△5三金▲3三とが「と金の遅早」で、後手玉の入玉は難しくなっています。本局を勝ち、挑戦者が3勝1敗で女流名人を奪取しています。

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写真:八雲

第16回朝日杯将棋オープン戦決勝

【第4図は△6四同銀まで】

 第4図は第16回朝日杯将棋オープン戦決勝(▲藤井聡太竜王△渡辺明名人)。後手の雁木に先手は急戦を仕掛けました。▲7三角が玉形の差を生かした強手。「居玉は避けよ」と言われるのはこういった手が成立するからです。△同銀▲同歩成で先手は駒損ですが、玉の近くにと金を作れたのは大きな戦果です。以下は細かく手をつなぎ、先手が制しました。藤井竜王は朝日杯で早くも4回目の優勝です。

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写真:中野伴水

第34期女流王位戦挑戦者決定リーグ紅組

【第5図は△4四銀まで】

 第5図は第34期女流王位戦挑戦者決定リーグ紅組(▲甲斐智美女流五段△西山朋佳女王・女流王将)。3連勝同士の直接対決で、勝者はリーグ優勝が決まる大一番です。▲2四歩△同歩▲同飛が「飛車先交換3つの利あり」で、△2三歩▲2九飛となって先手が作戦勝ち模様です。歩をもう一枚手にしたことに加え、飛車先が2三に直射するようになったため、後手は3二の角を動かしにくいのが痛いところです。以下はねじり合いとなりましたが、先手が押し切っています。難敵を破り、甲斐女流五段が挑戦者決定戦に進出しました。

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写真:紋蛇

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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