ライター藤田華子
【PR:ローソン×藤森哲也五段】-2年間で700本の動画を公開!はにかみながら、軽やかに遠くへ-藤森哲也五段の素顔
ライター: 藤田華子 更新: 2022年12月01日
スイーツを口にする時間は、ほっとひといき、素の自分に戻るとき。今回はローソンの「アイスカフェラテ」を飲みながら、藤森哲也五段の素顔に迫ります。
彼の解説にかかれば、将棋を知らない人でも盤面に目を向けずにはいられない――藤森哲也五段には、そんなふうに人を惹きつける魅力が。将棋をテーマにしたYouTubeチャンネル『将棋放浪記』は2年間ほぼ毎日更新し、チャンネル登録者数は14万人。そのチャンネルを起点にアパレルを展開し、動画の内容を書籍化する新しい試みにもチャレンジするなど活動の内容は多岐にわたります。 「どんどん動きたくなっちゃうんですよ。いろいろな景色を見てみたい。それは盤上でも、YouTubeをやっていても、趣味の自転車をこいでいても同じです」 父は、さまざまのアマチュア棋戦で活躍した藤森保さん。母は、女流棋士・藤森奈津子女流四段という将棋一家だけれども、「先生じゃなくて、てっちゃんと呼んで欲しい」、そう言ってはにかむ笑顔は、近所のお兄ちゃんのよう。YouTubeのこと、ご家族のこと、実は人見知りという告白まで、じっくりお話を伺いました!
2年間で700本の動画を公開!
将棋YouTubeチャンネル『将棋放浪記 』の裏側
――YouTubeチャンネル『将棋放浪記』で初心者にもわかりやすい将棋の動画を公開されています。今、何本ほど公開されているんですか?
もう700本は超えてますね。
――700!?
始めてから2年間、ほぼ毎日更新しているんですよ。最初はネタを考えるのも大変だったんですが、「将棋を楽しんで強くなる」という方針が決まってからは迷うことも少なくなりました。 家に撮影用の部屋があるので、「今日は撮るぞ!」っていう日は朝9時〜夕方18時ごろまで籠もって撮影します。そうすると10本くらい撮れるんです。3日間やれば30本溜まるので、1ヶ月いけるじゃないですか。
――1日に10本...動画1本20分ほどの尺で、ほぼノーカットですよね?体力的にも大変そうです。
そうなんです、だから途中で酸素がちょっと足りなくなることがあって(笑)。撮影が終わったら30本分のサムネイルを考えて、デザインしてくださる方に素材を渡します。どんなフォントが一番インパクトがあるか、たくさん観ていただけるのは黒・赤のサムネイルだなとか、知見が溜まってきました。こうして話していると、いったいなんの職業なんだかわからない感じですよね(笑)。
――その情熱は、視聴者に伝わっていると思います。いま、登録者数は14万人ほどです。
ありがたいですね。やってみてわかったことですが、Twitterで僕をフォローしてくださっている方とはまた別の層の方が観てくれているんですよ。たまたまYouTubeのオススメ一覧から見つけてくださったり。初心者だったけど有段者になりましたとかコメントをいただくと、やってて良かったなと。あと、知らないところで自分のことを師匠だと思ってくれる方、チャンネルをきっかけに僕の公式戦にも注目してくれる方も多くて、モチベーションにつながっています。より一層、頑張りたいと思いますよ。
――心がけていることはありますか?
とにかく「将棋は難しそう、頭のいい人がやるもの」というイメージを取っ払いたいんですよね。僕は特別勉強ができるわけではありませんが、それでも将棋の棋士にはなれました。誰でもプロになれるとは言いませんが、将棋は誰でもできるんだよと広めたいです。あと皆さん僕のことを強い存在として視聴くださっていますが、いや、もっとすごい人はいっぱいいるんだよ、将棋界は魔界なんだよと、魔界の面白さへいざなうような立ち位置でいたいですね(笑)。
――将棋に対するハードルを下げるために、スーツではなくパーカー姿で収録されているんですか?
それもありますね。僕は棋士ですが、そこらへんの兄ちゃんと一緒です(笑)。皆に、"先生"よりも"てっちゃん"と呼ばれたい、そんな関係でいたいんです。昔から知っている方たちはそれで慣れていますが、最近知り合った方や他の業界の方たちは先生と呼んでくれるんですよね。照れくさいし、もっと距離を縮めたいから"てっちゃん"でお願いします(笑)。
220円でこんな幸せを味わるなんて!
毎日のおとも「アイスカフェラテ」
――では、今日のお姿はいつもの編集スタイルなんですね。かたわらに置くドリンクとして、ローソンの「アイスカフェラテ」を選んでいただきました。
ふだん、できあがった動画を確認するシーンそのものです(笑)。家の近くにローソンがあるので、いつもお昼ご飯を食べた後にカフェラテを買って飲むことが多くて。気持ちが落ち着くんですよね。本当に、飲んでいるときはボ~っとしている感じで(笑)。1日中撮影している日は、貴重な息抜きの時間ですよ。
――お味はいかがですか?
すっきりしていて飲みやすいのも、気に入っているポイントです。ミルクの味もしっかりしていて、このクオリティのものが220円で飲めるなんてすごいですよね。220円ぴったりレジに置いて「この値段でこんなに幸せな気持ちになれるなんて」っていつも思ってます。カフェラテと一緒にローソンでスイーツを買うこともありますよ。
――そして収録後は、お酒ですか?
そうです、そうです(笑)。夜はビールで、昼はカフェラテ。この2つは、日常で欠かせないものですね。僕のYouTubeも、そんなふうにスイーツや好きなドリンクなどを片手に、リラックスの時間に楽しんで観ていただくのもうれしいです。
自転車をこいだ 青春時代。
アマチュア強豪の父と女流棋士の母のもとで育って
――自転車もお好きだと伺いました。
地元が蒲田なので、多摩川の土手を走ったり、羽田空港まで行って展望デッキから飛行機を観たりしていましたね。高校時代、奨励会の良い気分転換になっていました。当時はママチャリで、棋士になってからクロスバイクを買って。
――いまも乗られているんですか?
それが、前傾姿勢になるからか腰を痛めてしまって。腰の痛みもなくなってきたので、いまは電動式のママチャリに乗っています。自転車で世界一周した石田ゆうすけさんの『行かずに死ねるか! ―世界9万5000km自転車ひとり旅』という本を読んだことがあって、それがすごく面白くて。時間ができたら、自転車で日本一周旅行をしてみたいんです。もう少し若かったらテント泊でも良かったなって。
――東京ご出身でシティボーイというイメージがありましたが、ワイルドな一面もあるんですね。
そうですね。男友達と二人で、スーパーカブで四国を一周したり、北海道の函館から江差町まで行ったりしました。それは『水曜どうでしょう』が好きで真似したくなって(笑)。
――青春ですね!
自転車やバイクだと海の匂いや風、自然を感じられるのが好きなんですよね。いまは結婚しているので、妻との旅行は新幹線で行って楽しんでいます。
――3年前にご結婚されましたね。
妻とは同い年で、価値観が合うと思います。おいしいと思えるものが同じだったりとか、一緒にテレビを見ていて笑うタイミングが一緒だったり。
――藤森家といえば、お母様は女流棋士、お父様はアマチュア強豪です。YouTubeでも、お父様と対局された回がありますね。
700本近く動画を作ってきた中で、一番思い入れがある回です。 奨励会に入るまでは、僕が道場で将棋を指しているあいだ、父親は近くのカフェで待っていて、終わった頃に迎えに来てくれていました。僕を強くするために、本当にいろいろな将棋道場に連れて行ってくれて。
でも12歳で奨励会に入って、24歳で棋士になるまで、父親とほぼ将棋は指さず、将棋についても浅い会話しかしてこなかったんです。
――お父様と将棋盤を挟んでみて、どうでしたか?
YouTubeをやってなかったら、お互いに照れくさいところもあるし、父親と対局することもなかったと思います。早くビールを飲みに行きたくなりましたが、カメラが回っているので真剣にやりましたよ(笑)。
――お母様とは指さないんですか?
母親から教わったのは、将棋界においてのマナーや考え方で、平手で将棋を指したことはなかったと思います。視聴者からリクエストはあるんですけど、本人に聞いたら「いやいや!」と(笑)。いつかやってみたいですけどね。
――「哲也」というお名前は、麻雀小説作家の阿佐田哲也さんが由来になっていると伺いました。将棋が身近にあるご家庭でしたか?
そんなことないんです。家族それぞれ自由な家なので、みんなで将棋を指すこともなかったです。奨励会に入ってからは、一人で頑張るしかありませんでしたし。
家庭の中心が将棋で、「絶対にプロになりなさい」なんて夢を託されていたら、逆にプロになってないかもしれませんね。いまはのびのびやらせてくれた分、恩返ししたい気持ちがありますね。
――その恩返しのひとつが、ご家族でやられている「ふじもり将棋教室」でしょうか?
そうですね。もともとは、僕が子どもの頃に将棋の友達を作るために、両親が始めてくれた場所です。教室を閉めた期間もあったのですが、自分がプロになったとき、当時教室だった場所が空いていたので両親と一緒に始めました。子どもたちもたくさん来てくれていて、小学校入学前の子どもから、中学生まで、みんなかわいいですよ。僕自身も子どもたちに癒しをもらっていますし、これが親孝行になっていたら良いなと。
――YouTubeに将棋教室に、何かを形にするパワーをお持ちですよね。
何かを始めるのが好きなんですよね。YouTubeを起点に、Tシャツやパーカーも作りました。デザインはサムネイルをお願いしている方と一緒に考えました。
――ほかに何か、追求してきたことはありますか?
解説です。弱いので麻雀はやらないんですが、日吉辰哉さんの麻雀の実況が面白くて。すごく盛り上げて視聴者を釘付けにするんです。観ているうちに、次第に麻雀自体の面白さ、プレイヤーの個性も知ることができ、ハマっています。たぶん観る将の方と似た感覚で、私は"観る麻(ミルマー)"とでもいいましょうか(笑)。ああいう解説をしたいなと。
僕は解説というより、状況説明をするように心がけています。お酒の席で「4六銀が~」とか話しても伝わらないんですよ。そうじゃなくて、その棋士に最大のリスペクトを持ちながら、特徴や魅力を伝えたうえで「この攻めが強い棋士だけど、今はこうなっている」って、できるだけ簡単に伝えるようにしています。僕の解説はその延長上。
――何かをやってみたいと思ったときに、力を貸してくれる人、お手本になる人がいらっしゃる印象です。
自分でも恵まれていると思います。実は僕、こう見えて人見知りなところがあるんです。沈黙や何も喋っていない間が苦手で、いっぱい喋ってしまう。ある意味喋りは逃げかもしれません。でも、まわりには思いつきを気軽に相談できて、ちょっと違うんじゃないかなとか、いいかもねとか、力を貸してくれる人たちがいる。そういった仲間は本当に大切で、おじいちゃんになっても一緒にお酒を飲んで、笑い合っていたいですね。
――これからやってみたいことはありますか?
『将棋放浪記』なので、日本全国を放浪してみたいです。将棋道場や将棋センターを巡って、ここに将棋をやれる場所があるとか、一日1000円でできるんだよとか、視聴者は行ってみたくなるじゃないですか。地域で将棋を活性化できれば、そういう目的もあってこのチャンネルを始めました。もう少し旅をしやすい状況になったら、やっていきたいです。
10問アンケート
インタビューで聞ききれなかった10の質問を、藤森哲也五段に伺いました。
- Q1
- 好きなお店の好きな一品を教えてください。
- 藤森
- 地元の蒲田は、羽根つき餃子が美味しいんです。『歓迎(ホアンヨン)』では400円ぐらいで食べられて、それとビールで優勝です(笑)!
- Q2
- お好きなお酒の銘柄は?
- 藤森
- 基本的にはビールが好きですが、餃子だったら紹興酒やハイボールを飲んだり、料理に合わせて選びます。焼酎も好きで、芋焼酎を飲みます。他の棋士の先生と飲むこともありますよ、松尾歩八段とはイタリアンでワインを飲みました。松尾八段はお酒が強くて、二人で赤ワインを1~2本飲みました。
- Q3
- お好きなご本を教えてください。
- 藤森
- 漫画だったら『ドラゴンボール』『SLAM DUNK』『HUNTER×HUNTER』『こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)』が好きです。小説は、東野圭吾さんの作品を読むことが多いですね。
- Q4
- お気に入りの映画は?
- 藤森
- 『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『オーシャンズ11』ですね。最近は『アベンジャーズ』が面白くて。『アイアンマン』が一番好きです。漫画もそうでしたが、王道ど真ん中が大好きです。
- Q5
- 音楽は聴かれますか?
- 藤森
- 一人のときは作業用のBGMを流しているか、ジャック・ジョンソンをかけています。誰かが来たら、少し盛り上がれるような音楽をかけますね。
- Q6
- 棋士になっていなかったら、何になっていたと思いますか?
- 藤森
- 旅行が好きなので、バックパッカーになっていたかもしれません。
- Q7
- 身に付けたいスキルは?
- 藤森
- 語学力ですね。YouTubeでも海外普及ができるようになりますし。
- Q8
- いつか会ってみたい人は?
- 藤森
- 自転車で世界を一周した石田ゆうすけさん。あとは、サンドウィッチマンさん。落ち込んでいた時、ライブ映像を観てすごく助けられました。
- Q9
- 10年後、どんな棋士になっていたいですか?
- 藤森
- 引き続き自分なりの普及を追求しつつ、プレイヤーとしては、いろいろな戦型で戦ってみたいです。それは、楽しく将棋を指したいという気持ちがあるから。まだ行ったことのない場所に行ってみたいのと同じです。一般的に棋士は自分のスタイルを貫く人が多いですが、僕はYouTubeでいろいろな戦法を説明していて、公式戦で使ってみようかなという思いが湧いてくるんです。当然、スタイルを変える時に成績が伸びなくなることもあるかもしれませんから、力をつけないといけません。
その結果、10年後にどうなっているのかはわかりません。勝てずに引退しているのか、また違った姿の自分がいるのか。今と同じスタイルでこのまま続けていても「こんな感じなんだろうな」と予想できる部分があるのも事実です。それだったら、違うことをやってみたほうが楽しそう。まずは体がしっかりしていないと武器を振り回せないので、今はこれまでやってきたことをしっかり続けて頑張るしかないと思っています。
- Q10
- ファンの方へメッセージをお願いします。
- 藤森
- いつも応援してくださってありがとうございます。もっと将棋ファン、将棋の仲間をいっぱい増えるように頑張りたいです。例えば、5人ぐらいで飲んでいるときに、「将棋好きなんだけど」「私も将棋好き!」って、将棋の話題がポピュラーなものになっていけば嬉しいです。
写真:阿部吉泰
藤森哲也五段
1987年5月9日生まれ。東京都大田区出身。塚田泰明九段門下。2011年10月四段。父親はアマ強豪、母親は女流棋士。「迷ったら攻める」師匠譲りの攻めの棋風の居飛車党。第43期(2012年)新人王戦で決勝三番勝負進出。翌第44期(2013年)、2年連続で決勝三番勝負に進出した。第27期(2014年)竜王戦でランキング戦6組優勝。第4期(2014年)加古川青流戦で決勝三番勝負進出。趣味は競馬と麻雀。