チーム康光VSチーム稲葉 第5回ABEMAトーナメント~予選Dリーグ第三試合振り返り~

チーム康光VSチーム稲葉 第5回ABEMAトーナメント~予選Dリーグ第三試合振り返り~

ライター: 牛蒡  更新: 2022年07月06日

 7月2日(土)に放映された第5回ABEMAトーナメント予選Dリーグ第三試合、チーム康光(佐藤康光九段、郷田真隆九段、先崎学九段)とチーム稲葉(稲葉陽八段、服部慎一郎四段、出口若武六段)の戦いを振り返る。勝ったチームが予選通過だ。

【第1局▲先崎学九段-△稲葉陽八段】

 大事な初戦。先崎は第一試合(チーム天彦戦)に続いて英春流を採用すると、1筋と9筋の両方の端を攻めた。対する稲葉は手にした小駒で反撃。壮絶な斬り合いから1手差の最終盤に突入する。

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先崎の両端攻めをみて、「おー、よしよし、いけいけー!]と郷田

【第1図は△5二同玉まで】

 迎えた第1図は160手目△5二同玉の局面。▲5三銀に△5一玉が実戦的な受けの勝負手だ。先崎は▲5三銀に△6一玉▲3四馬の進行を思い描いていたため、△5一玉には意表を突かれたという。

 実戦は△5一玉以下、▲5二歩△6一玉▲6三香△7二玉▲7三歩成△同角▲同桂成△同玉▲5一角△8三玉で後手玉が捕まらなくなった。最終的に182手で稲葉が勝利。先鋒の務めを果たした。

 「馬を出れば詰んでいたよね」と終局直後の先崎。第1図に戻り、▲3四馬△同銀と切り飛ばしてから寄せにいけば詰んでいた、という意味である。実際に長手数の詰みがあったようだ。ほかにも上記手順の▲6三香に代えて、▲6二銀成△同玉▲7三歩成△同角▲同桂成△同玉▲3三竜から詰ます順もあった。先崎にとっては惜しい一局だった。

【服部の快進撃】

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 第2局は▲服部-△佐藤康戦。戦型は佐藤のダイレクト向かい飛車。中盤は佐藤よしの声もあったが、服部がしのいで自玉の上部に厚みを築くことに成功。そのまま玉頭戦を制した。

 第3局は▲郷田-△服部戦。この将棋は中盤戦で郷田にウッカリがあり、服部の2連勝となった。勢いに乗ったチーム稲葉は第4局も服部に託す。3連投である。

【第4局▲服部慎一郎四段-△佐藤康光九段】

 第4局は第2局と同じカード。先後、戦型、そして佐藤リードから服部が盛り返すという流れまで同じだった。

【第2図は△8二銀まで】

 第2図で▲7四桂が決め手になった。佐藤は見落としていたようだ。▲7四桂に(1)△6七馬▲5九玉△8九馬と飛車を取るのは、▲8二桂成△同金▲7二銀△9三玉▲8二竜△同玉▲8三金で詰み。(2)△7四同金▲同歩を入れてから同じように飛車を取っても▲7三金から詰み。

 服部はチームの期待に応えて3連勝を達成。佐藤は「終盤で我慢が効かなかった」と悔やむ。チーム康光は、いよいよ苦しくなった。

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ニンジャ服部、3連勝でフィニッシュ。「ニンニン!」

【第5局▲郷田真隆九段-△出口若武六段】

 チーム稲葉は4連勝で第5局を迎えた。メンバー全員が少なくとも1局は指さなければいけないルールのため、必然的に出口の出番である。チーム康光は郷田が迎え撃つ。

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いよいよ出口が登場。郷田はカド番を託された

【第3図は△7四桂まで】

 出口優勢から郷田が逆転して迎えた第3図。▲3七桂に△6六桂▲4八玉△5五飛が好判断だ。これで再度逆転した。△5五飛以下、▲同銀は△3六桂▲3九玉△2八金▲同飛△同歩成で詰み。3七の桂が先手玉の逃げ道をふさいでいる。▲3七桂では▲6三桂成とすべきだった。時間のない状況で正確に対応した出口の勝利。チーム稲葉は5連勝で予選通過を決めた。

 全5局を振り返ると、チーム康光が中盤までリードしていた将棋も多く、内容面では5-0というスコアほどの差はなかった。ただ、激戦をことごとく制したチーム稲葉が強かった。本戦でも活躍が期待される。

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予選通過のチーム稲葉は全員で「ニンニン!」

 予選Dリーグはチーム天彦が全勝で1位、チーム稲葉が1勝1敗で2位となり、この2チームが本戦に進出した。以下は第三試合のまとめ。【総合成績】の並びは、左がチーム稲葉、右がチーム康光。

【総合成績】
第1局 稲葉〇-●先崎
第2局 服部〇-●佐藤康
第3局 服部〇-●郷田
第4局 服部〇-●佐藤康
第5局 出口〇-●郷田
総合  5勝 ― 0勝

【個人成績】
稲葉八段  1-0
服部四段  3-0
出口六段  1-0
佐藤康九段 0-2
郷田九段  0-2
先崎九段  0-1

ABEMAトーナメント

牛蒡

ライター牛蒡

2010年、サラリーマンから「名人戦棋譜速報」の中継記者に転身。 現在は日本将棋連盟モバイルの中継業務も担当。ペンネームを「牛」に改名しようかと検討中。

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