チーム豊島VSチーム山崎 第5回ABEMAトーナメント~予選Cリーグ第三試合振り返り~

チーム豊島VSチーム山崎 第5回ABEMAトーナメント~予選Cリーグ第三試合振り返り~

ライター: 牛蒡  更新: 2022年06月15日

 6月11日(土)に放映された第5回ABEMAトーナメント予選Cリーグ第三試合、チーム豊島(豊島将之九段・丸山忠久九段・深浦康市九段)とチーム山崎(山崎隆之八段・松尾歩八段・阿久津主税八段)の戦いを振り返る。

【第2局▲山崎隆之八段-△丸山忠久九段】

 チーム豊島の先勝で迎えた第2局。山崎は▲7六歩を保留し、丸山の一手損角換わりを封じる作戦を採用した。対する丸山は、棒銀で攻めることで▲7六歩を強要し、角換わりの力戦に持ち込む。

【第1図は▲8七同金まで】

 △9五銀に▲9六歩△8六歩▲8五角△8七歩成▲同金で1図。▲9六歩から▲8五角は見たことのない受け方で山崎のセンスが光る。1図から△6四角▲4六銀と進み、残り時間は▲山崎2分34秒、△丸山2分2秒。力のこもった序盤戦だ。

 最終的に先手は▲6三角成で馬を作り、後手は△8九飛成を実現させた。いい勝負である。ただ、このあとの丸山の指し方がうまかった。△4二金で自玉の安全度を高めると、△9九竜から△6二香の攻防手でリードを奪う。108手で丸山が勝った。

 丸山は初戦からすべて後手番を受け持ち、豊島や深浦に先手番を多く与えた。こういったチーム戦略も見どころの一つだ。

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今期の初勝利を挙げて笑顔の丸山

【第3局▲豊島将之九段-△阿久津主税八段】

 チーム山崎は阿久津に第3局を託した。豊島を相手にチームの連敗を止めるのが任務である。戦型は後手の角交換振り飛車になった。

【第2図は▲4四馬まで】

 ▲4四馬で2図。ここから手に汗を握る攻防が展開された。△4三金打▲6五銀△同歩▲4三馬△6三銀▲5四馬△同銀▲6四金△8五玉▲5四金△7六歩▲8六銀△8四玉。約1分20秒のできごとだ。

 阿久津の△4三金打は▲5四馬、△6三銀は▲6四金をそれぞれ防いでいる。豊島は歩頭銀からの馬切りで▲6四金を実現させたが、△8四玉まで進むと後手がしのいでいる。善悪を超越した感動的な攻防だった。このあと40手以上も続いたが、阿久津が競り勝つ。

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阿久津の勝利に沸くチーム山崎

【一進一退の攻防】

 第4局は松尾が勝利。初戦で勝ち星のなかった、丸山、阿久津、松尾が次々と勝ち、いよいよ総力戦の様相を呈してきた。

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第4局に勝った松尾。第6局でも再び丸山に勝ち、チームに貢献した

 2勝2敗で迎えた第5局は勝負どころ。▲豊島-△山崎のリーダー対決だ。対局前の「ここで出なければリーダーじゃない気がする。でも41年生きてきて、ここで負けるのが私なんですけど」は山崎流のコメント。豊島の前に敗れはしたが、粘りに粘ってファンを沸かせた。

 第6局は松尾が再び勝ってチームを救う。松尾は2連勝でフィニッシュ。第7局は深浦が勝ち、第8局は山崎が2度目のリーダー対決で雪辱を果たした。これで4勝4敗となり、チームの予選通過は最終戦に託された。

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第7局を制して「やりました」と深浦。「完璧な内容」と豊島

【第9局▲阿久津主税八段-△深浦康市九段(指し直し局)】

 第9局は深浦の先手で始まったが千日手になった。指し直し局は先後を入れ替えて角換わりへ。

【第3図は△6三金まで】

 指し直し局も大熱戦になり、迎えた3図は1手争いの最終盤だ。▲6五桂に深浦は1秒もかけずに△4二玉。対して阿久津は▲6三竜で詰めろをかけたが、△6九角▲7八桂△同角成▲同玉△5九馬で深浦が先手玉を詰ました。

 ▲6五桂に代えて▲6二銀△4二玉▲6三竜であれば6九に竜が利いていたわけで、どうなっていたかわからない。放送時の終局は午前1時10分ごろ。収録当時は午前5時半を越えていたという。気力と体力を使い果たしたギリギリの勝負だった。深浦は「豊島さんが予選で苦しむ姿は見たくなかったので、ここはひと踏ん張りだなと思った」と局後に語った。

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終局直後の様子。死闘だった

 予選Cリーグは、第一試合と第二試合が各8局、第三試合は千日手局を含めて10局が指された。計26局は過去最多の対局数。特に第三試合はABEMAトーナメントの歴史に残る名勝負だった。

 最終結果はチーム広瀬が1位、チーム豊島が2位で本戦進出。
以下は第三試合のまとめ。【総合成績】の並びは、左がチーム豊島、右がチーム山崎。

【総合成績】
第1局 深浦〇-●松尾
第2局 丸山〇-●山崎
第3局 豊島●-〇阿久津
第4局 丸山●-〇松尾
第5局 豊島〇-●山崎
第6局 丸山●-〇松尾
第7局 深浦〇-●阿久津
第8局 豊島●-〇山崎
第9局 深浦〇-●阿久津(千日手・指し直し)
総合  5勝 ― 4勝

【個人成績】
豊島九段  1-2
丸山九段  1-2
深浦九段  3-0
山崎八段  1-2
松尾八段  2-1
阿久津八段 1-2

ABEMAトーナメント

牛蒡

ライター牛蒡

2010年、サラリーマンから「名人戦棋譜速報」の中継記者に転身。 現在は日本将棋連盟モバイルの中継業務も担当。ペンネームを「牛」に改名しようかと検討中。

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