チーム菅井VSチーム斎藤 第5回ABEMAトーナメント~予選Bリーグ第三試合振り返り~

チーム菅井VSチーム斎藤 第5回ABEMAトーナメント~予選Bリーグ第三試合振り返り~

ライター: 牛蒡  更新: 2022年05月26日

 5月21日(土)に放映された第5回ABEMAトーナメント予選Bリーグ第三試合、チーム菅井「真・振り飛車」(菅井竜也八段、久保利明九段、佐藤和俊七段)とチーム斎藤「シン エンジェル」(斎藤慎太郎八段、木村一基九段、佐々木勇気七段)の戦いを振り返る。

 どちらも初戦は不完全燃焼で終わった。チーム菅井は対抗形の居飛車を持っての負けが響いて3勝5敗、チーム斎藤は3連勝から5連敗を喫した。第三試合を迎えるに当たり、菅井は「チーム振り飛車ですから、振り飛車で頑張ります」、斎藤は「とにかく3人で鼓舞しあう、3人で協力して戦う」と宣言。初戦の反省を踏まえて戦った。

【第2局▲木村一基九段-△久保利明九段】

 第1局は▲佐藤-△佐々木戦。佐藤は83手目あたりから最終手の163手目まで、残り10秒未満で戦い続けて勝った。時間で追い込まれても乱れないのは強い。

【第1図は△7九同銀成まで】

 第2局はチームの年長者である木村と久保が戦った。▲8八銀△7八銀▲7九銀△同銀成と進んで1図。この手順を繰り返すと千日手になる。

 ノータイムで▲6一竜が好判断だ。以下△同銀▲7一銀△同玉▲8三桂で攻守交替。この10手後の▲6八角も好手だった。成銀取りと▲2四角(王手)をみた好手で木村優勢が確実になった。木村が勝ち、第一試合から続いていたチームの連敗を6で止めた。

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木村の▲6八角に「いい手ですよね」「これでしょう」と盛り上がる

【チーム斎藤が白星先行】

 第3局の▲佐藤-△斎藤は斎藤が勝ち、チームは2連勝。斎藤は「木村先生の勝ちに勇気をもらった」「(連敗の)呪いが解けた」と話す。

 第4局の▲菅井-△佐々木戦は千日手になった。先後を入れ替えた指し直し局も、一時は千日手になるかと思われたが、佐々木が打開して勝った。千日手局は108手、指し直し局は164手。佐々木は「調子を取り戻す一局」、菅井は「集中が切れてしまった」と語った。

 第5局は▲久保-△木村戦。この将棋は最終盤でドラマがあった。木村が15手詰を逃し、その直後に久保が敵玉を詰ましたのだ。久保が今期の初勝利を挙げ、チーム菅井2勝、チーム斎藤3勝となった。

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チーム斎藤は、大きな拍手と称賛でチームを盛り上げた

【第6局▲斎藤慎太郎八段-△菅井竜也八段】

 第6局でリーダー対決が実現した。斎藤が勝てば予選突破に王手をかけ、菅井が勝てばスコアをタイに戻す。急所の一局である。

【第2図は△6三銀引まで】

 この戦いは、角の働きで差がついた。2図から▲1六角に△4三角と打ち合う。この時点では後手の角のほうが働きそうに見えた。しかし、数手後には先手が4九飛・6七角の形に組み、十分な態勢になっていた。先手は大駒が4筋攻めを後押ししていることに加えて、飛車が角のヒモ付きになっている。このあと▲4五歩と仕掛けた時点で先手優勢。斎藤の完勝だった。

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「完敗でした」と菅井。この日は調子が上がらなかった

【第7局▲佐藤和俊七段-△佐々木勇気七段】

 迎えた第7局、佐々木は「私がやりたいです」と立候補。追い込まれたチーム菅井は佐藤に命運を託した。第1局の再戦、先後も同じだ。

【第3図は▲7五角まで】

 83手目▲7五角で3図。3九金にヒモも付けた攻防手だが、△3七桂成▲同金△6六銀で後手ペースになった。△3七桂成を▲同桂も△4九銀で後手がよかっただろう。佐藤は最終盤で2度目の▲7五角を打ったが、今度は△3四飛が攻防になり、146手で敗れた。

 佐藤は79手目以降、残り10秒未満で戦い続けた。佐々木は106手目にマスクの左ヒモを外したが、耳にかけ直す余裕はなく、ヒモをかけた手を耳に当てたまま、最後まで指し続けた。死力を尽くした大熱戦だった。

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佐藤は負け越したものの、将棋の内容は素晴らしかった

 予選Bリーグはチーム糸谷が1位、チーム斎藤が2位で本戦進出を決めた。以下は第三試合のまとめ。【総合成績】の並びは、左がチーム菅井、右がチーム斎藤。さまざまな振り飛車が指され、見応えのある内容だった。

【総合成績】
第1局 佐藤〇-●佐々木
第2局 久保●-〇木村
第3局 佐藤●-〇斎藤
第4局 菅井●-〇佐々木
第5局 久保〇-●木村
第6局 菅井●-〇斎藤
第7局 佐藤●-〇佐々木
総合  2勝 ― 5勝

【個人成績】
菅井八段  0-2
久保九段  1-1
佐藤七段  1-2
斎藤八段  2-0
木村九段  1-1
佐々木七段 2-1

ABEMAトーナメント

牛蒡

ライター牛蒡

2010年、サラリーマンから「名人戦棋譜速報」の中継記者に転身。 現在は日本将棋連盟モバイルの中継業務も担当。ペンネームを「牛」に改名しようかと検討中。

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