10連覇かリベンジか 第47期棋王戦五番勝負展望

10連覇かリベンジか 第47期棋王戦五番勝負展望

ライター: 玉響  更新: 2022年02月04日

 第47期棋王戦五番勝負が2月6日(日)に静岡県焼津市「焼津グランドホテル」で開幕する。渡辺明棋王への挑戦権を獲得したのは永瀬拓矢王座だ。
両者が初めてタイトル戦で相まみえたのは第43期棋王戦五番勝負で、フルセットの激闘の末に渡辺が永瀬の挑戦を退けている。
9連覇中の渡辺が10の大台に乗せるのか、永瀬が4年越しのリベンジを果たすか。それぞれの視点を踏まえて、今期五番勝負を展望する。

勝負のシーズン

 まずは渡辺から。現在3つのタイトル(名人、棋王、王将)を保持しており、1月9日に開幕した第71期ALSOK杯王将戦七番勝負と並行して棋王戦五番勝負の防衛戦に臨むことになる。それが終わると、次は4月開幕の名人戦が目前に控えている。まさに勝負のシーズンだ。

 渡辺は昨年5月の第46期棋王就位式で「40代が近づき一年一年が勝負という思いが強い。来年、10連覇を是が非でも達成したい」と述べており、このシリーズに懸ける思いがひしひしと伝わってきた。
一方、藤井聡太竜王を挑戦者に迎えた王将戦では、開幕から3連敗を喫してカド番に立たされている。渡辺は追い込まれてから力を発揮する勝負強さも兼ね備えているが、まずは1勝を返して悪い流れを断ち切り、棋王戦への追い風としたい。

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写真:睡蓮

充実の挑戦者

 一方の永瀬は、今回が2度目の棋王戦挑戦。挑戦者決定トーナメント初戦から稲葉陽八段、木村一基九段、豊島将之九段、佐藤康光九段を破り、続く挑戦者決定二番勝負で郷田真隆九段をくだして挑戦権を獲得した。並み居る強敵をなぎ倒し、充実していることがうかがえる。

 永瀬は五番勝負で渡辺に挑むにあたり、「前回(第43期)のスコアは2-3ではあったのですが、かなり実力差がある内容と思いましたので、今回は少しでもその差を縮められるようにしたいなと思います」と謙虚に抱負を語っていた。

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写真:玉響

 ここで、挑戦者決定二番勝負第1局の対郷田九段戦で印象深かった一手を紹介したい。

【図は58手目△3四歩まで】

 図は持ち駒の歩を3四に打った局面。意味としては▲2四歩△同歩▲同飛△9六歩▲同歩△9七歩▲同香△8五桂から香を入手されたあと、△2一香に▲4四飛と切られる手を消したことが挙げられる。何の変哲もない普通の一手のようだが、数手前に△3五歩▲同歩△同角と自ら交換した歩を元の位置に打ったのだから驚きだ。これは8筋の飛車先交換を実現させるための工夫だったのだが、詳しく知りたい方は棋譜中継のコメントを参照いただきたい。

対戦成績と戦型予想

 両者の対戦成績は渡辺16勝、永瀬5勝とトリプルスコア。だが、タイトル戦だけに絞ると渡辺7勝、永瀬4勝で、さほど差は開いていない。
戦型は相掛かり、矢倉、角換わりの三本柱を中心に展開されていくと見る。令和の時代では、横歩取りは流行から外れてしまった。
また、雁木や、永瀬の振り飛車といった変化球は出ないと予想する。変化球は相手の研究を外すために用いる側面があるが、先に記した両者の本シリーズに懸ける意気込みから、それは想像しづらい。王道を行く戦型のなかで、研究合戦が繰り広げられるのではないか。

対局場にも注目

 今期五番勝負では、現地大盤解説会が予定されている。コロナ禍ということで先行きが不透明なところもあるが、永瀬王座も挑戦を決めた日のインタビューで「自分がタイトル戦に出て、大盤解説があるというのは久しぶり。皆様にお越しいただいて、よい将棋が指せれば」と意気込んでいた。
なかでも第4局は、棋王戦五番勝負で初の対局場となる栃木県日光市「日光東照宮」で行われる。過去には、第3期(1990年度)竜王戦七番勝負第2局も同地で行われた。

現地に足を運ぶことが難しくても、棋譜中継、ブログ、ライブ配信などで対局者の息づかいや、対局場の雰囲気を感じ取ることができる。今シリーズは互いに一歩も引かず、最終局までもつれ込むような熱戦になることを期待したい。

玉響

ライター玉響

平成元年生まれ。2004年から2016年1月まで奨励会に在籍。同年5月からフリーライターとして活動開始。以来、日本将棋連盟のネット中継業務を担当している。ほかに将棋番組制作、将棋教室の仕事にも携わる。将棋漬けの日々を送っているが、実戦不足なのが悩み。

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