挑戦者強し 1月下旬の注目対局を格言で振り返る

挑戦者強し 1月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年02月14日

 王将戦七番勝負、女流名人戦五番勝負とも、挑戦者が開幕から一気の連勝。奪取まであと1勝としています。伊藤沙恵女流三段は悲願の初タイトルを手にすることができるでしょうか。

第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局

【第1図は△3八角まで】

 第1図は第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第3局(▲藤井聡太竜王△渡辺明王将)。相掛かりから激戦の終盤戦で、△3八角と打たれたところです。当然ながら「両取り逃げるべからず」「終盤は駒の損得より速度」で、飛車取りを受けている局面ではありません。▲6三成銀△9五角▲7二金△9二玉▲9三歩と攻め合っていきます。最後は長手数の即詰みに打ち取り、藤井竜王が3連勝で最年少五冠まであと1勝としました。

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写真:吟

第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第2局

【第2図は▲6七銀まで】

 第2図は第71期ALSOK杯王将戦七番勝負第2局(▲渡辺王将△藤井竜王)。流行の角換わり相早繰り銀です。攻める手を考えたいところですが、じっと△4二玉と上がりました。「居玉は避けよ」で、上部も厚くなっています。以下▲3七桂に△4四銀と積極的に進めていき、難解な中盤戦です。

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写真:武蔵

第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第2局

【第3図は▲3七玉まで】

 第3図は第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第2局(▲里見香奈女流名人△伊藤沙恵女流三段)。後手の押している将棋でしたが、先手も粘りに粘って大熱戦となっています。「馬の守りは金銀3枚」で先手玉を守る馬が強力。寄せは金を狙うのがセオリーですが、この場合の守備駒は馬。よって、△2五銀▲5四馬に△1八角と馬を消しにいくのが好手順でした。以下▲同馬△同成銀で馬が消え、先手玉の寄せが見えてきました。伊藤女流三段が競り勝ち、2連勝としています。

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写真:日本将棋連盟

第15回朝日杯将棋オープン戦本戦

【第4図は△2九飛成まで】

 第4図は第15回朝日杯将棋オープン戦本戦(▲佐藤天彦九段△糸谷哲郎八段)。先手がかなり手厚い将棋ですが、後手も勝負勝負と迫ってきます。ここで6九に合駒を打つのはもったいなく、狙われる駒になってしまいます。▲7八玉△3八竜▲8七玉が「中段玉寄せにくし」。この場合は上部の厚みが強力なため、上部脱出の価値がより高くなっています。自玉を安全にしてから寄せに出て、佐藤九段がベスト4進出を果たしました。

第15回朝日杯将棋オープン戦本戦

【第5図は▲7四とまで】

 第5図は第15回朝日杯将棋オープン戦本戦(▲西田拓也五段△稲葉陽八段)。6四の金取りですが、△5七とと引いて「5三のと金に負けなし」の形です。同じ金取りでも、玉への響きがまるで違います。以下▲同金△同桂成▲6四とに△7八飛と攻め合い、後手の一手勝ちコースです。

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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