西山、初代白玲に 第1期ヒューリック杯白玲戦七番勝負を振り返る

西山、初代白玲に 第1期ヒューリック杯白玲戦七番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年12月17日

 女流棋界に待望の順位戦、そしてタイトル戦は初の七番勝負となった第1期ヒューリック杯白玲戦。決勝七番勝負に勝ち上がってきたのは大本命の西山朋佳女流三冠。そして里見香奈女流四冠を準決勝で破った渡部愛女流三段。

第1期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第1局

 第1局は東京都港区「グランドニッコー東京 台場」にて。西山の中飛車から相穴熊となったが、自陣の桂を跳ねる積極的な動きで西山がペースをつかむ。

【第1図は△5七角まで】

 先手の穴熊は薄いがまだすぐに寄るわけではない。▲7二飛△3一金打▲3四桂と平凡に迫るのが厳しく、△3三銀引▲2二桂成△同銀▲4一銀で支えきれない。以下は押し切って西山が開幕戦を制した。

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写真:日本将棋連盟

第1期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第2局

 第2局は石川県金沢市「ホテル日航金沢」にて。西山の四間飛車対ミレニアム模様から戦いが始まり、西山がペースを握ったかに見えたが渡部も踏み止まって押し返す。

【第2図は△2五同歩まで】

 実戦は▲2五同飛△7六桂▲7七銀と相手をしたが、△6八桂成▲同金△3四角▲2二飛成△5六角で5六の香を取られてしまったのは痛かった。図では▲1六飛と逃げておけば先手の戦える将棋だったようだ。

第1期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第3局

 第3局は鹿児島県指宿市「指宿 白水館」にて。西山の中飛車に渡部は居飛車穴熊。穴熊を生かして強気に動いていったが、西山が的確に対応してリードを奪った。

【第3図は△8九飛成まで】

 堅陣の残っている先手に対し、金2枚をはがされてしまった後手の穴熊は寂しげだ。ベタっと▲4三金と張り付く手が俗手ながら厳しい。▲2二竜△同玉▲3二金打からの詰めろなので△4四同馬と非常手段に出て、▲同歩△2五桂とプレッシャーを掛けたものの▲4一角と数を足して先手勝勢だ。西山が一気の3連勝。

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写真:日本将棋連盟

第1期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第4局

 第4局は奈良県奈良市「ふふ奈良」にて。西山の三間飛車からの動きに渡部が玉頭から反撃しリードを奪うものの、西山の勝負術で逆転。

【第4図は▲8五同歩まで】

 図から△5三角が玉の懐を広げる味の良い一手。▲7五歩△同歩▲8四歩と反撃含みに指したが、△7四桂が厚い指し方。次の△8六歩が実現し、後手がかなり勝ちやすい格好となった。以下は玉頭での戦いを制し、後手が勝ち切っている。

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写真:日本将棋連盟

 西山は4連勝で初代白玲となった。これで8つの女流タイトルのうち4つを保持したこととなる。女流棋界を二分する里見女流四冠との今後の戦いに注目だ。
 来期は西山白玲への挑戦権を掛けて10人の女流A級棋士が戦うことになる。1期目となった今期は順位を振り分けるための戦いだったが、来期からは順位戦として各クラスで昇級を巡る戦いが見どころだ。

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渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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