ライター牛蒡
2021年の総決算、第34期竜王戦七番勝負展望
ライター: 牛蒡 更新: 2021年10月06日
第34期竜王戦は藤井聡太三冠(王位・叡王・棋聖)が豊島将之竜王への挑戦権を獲得した。藤井はランキング戦こそ過去全勝と圧倒してきたが、決勝トーナメントは勝ち抜けずにいた。今期はその壁を乗り越えての挑戦である。
ふたりの戦いは豊島の6連勝で始まったが、藤井は今年1月の朝日杯将棋オープン戦本戦トーナメント準々決勝で対豊島戦の初勝利を挙げると、王位戦七番勝負を4勝1敗、叡王戦五番勝負を3勝2敗で制した。2021年は藤井が計8勝3敗と巻き返し、通算では豊島9勝、藤井8勝と拮抗している。勢いに乗る藤井、押し返したい豊島という構図だ。
譲れない豊島将之竜王
豊島は竜王3連覇が懸かる。過去に達成した棋士は、渡辺明名人と藤井猛九段しかない。9月に叡王を失い、一冠に追い込まれた豊島にとって、竜王位は絶対に譲れないタイトルである。最終防衛ラインといっていい。
状況としては2000年の第13期竜王戦七番勝負、藤井猛竜王-羽生善治五冠戦(肩書は当時)と重なる。同年8~9月の第48期王座戦五番勝負でも当たり、羽生五冠がフルセットで防衛した。そのわずか6日後に竜王戦第1局が始まる。藤井猛竜王は最強の挑戦者を迎えたのである。勢いは羽生五冠にあり、前評判も高かったが、藤井猛竜王はフルセットで防衛に成功して3連覇を果たした。豊島もそれに続きたい。
豊島の本年度の勝率は、対藤井戦を除けば、例年とそう大きくは変わらない。豊島の調子が悪いということはなく、対藤井戦の負け越しが勝率を押し下げている。叡王戦五番勝負のように、先手番で勝っていくことが防衛に向けての大前提になるだろう。そのために入念な準備を進めているはずだ。
四冠を目指す藤井三冠
藤井の年度勝率は常に8割を超えている。過去最高勝率は2018年度の8割4分9厘、本年度はタイトル戦をこなした上で8割3分8厘(10月5日時点)である。対戦相手のレベルが上がっているのだから、藤井自身が成長していることは疑いようがない。
藤井の強さを証明するデータはいくつもある。なかでも「公式戦で3連敗が一度もない」という事実は、番勝負において特に強みとなるだろう。タイトル戦では2連敗すらない。実力の高さはもちろん、メンタルの強さを示している。体勢を崩すことがあったとしても、電車道で一気に押し切られる展開は考えにくい。相手としては、一歩一歩じりじりと押していくしかない。
藤井は9月に叡王を獲得し、史上10人目の三冠になった。竜王戦は四冠を目指す戦いになる。過去に四冠を達成した棋士は5人だけで、最年少四冠は羽生九段の22歳9ヵ月だ。19歳の藤井が竜王戦を制すれば、四冠の最年少記録を更新する。竜王位を含む四冠となれば、時代の覇者といっても過言ではない。
2021年を代表するカード
豊島と藤井の対戦は今年だけでも11局あり、この七番勝負のほかに第71期ALSOK杯王将戦の挑戦者決定リーグ戦3回戦でも対戦する。第42回将棋日本シリーズJTプロ公式戦もベスト4に残り、決勝で当たる可能性がある。2021年は豊島藤井戦が最多になることは間違いなく、2021年を代表するカードといえる。
今期の第1局は10月8・9日(金・土)に東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」で行われる。過去の竜王戦では、第1局を制した棋士のおよそ3分の2が竜王を獲得している。近年は特にその傾向が強い。まずは振り駒から注目だ。読売新聞オンラインは2日、開幕直前特集として、両者のインタビュー記事を公開している。こちらもあわせてご覧いただきたい。
[第34期竜王戦]豊島竜王の3連覇か、藤井三冠の最年少四冠か...七番勝負8日開幕
https://www.yomiuri.co.jp/igoshougi/ryuoh/20211002-OYT8T50000/