将来のスター棋士への登竜門ともいえる決勝三番勝負を制するのは?  第51期新人王戦決勝三番勝負展望

将来のスター棋士への登竜門ともいえる決勝三番勝負を制するのは?  第51期新人王戦決勝三番勝負展望

ライター: 相崎修司  更新: 2020年10月11日

 第51期新人王戦決勝三番勝負が、10月12日(月)に関西将棋会館で開幕を迎える。今期の決勝三番勝負に進出したのは池永天志四段と齊藤優希三段。両者ともに初の新人王戦決勝三番勝負への登場となる。まずは今期の道のりを振り返ってみよう。

池永天志四段

【第1図は△7四銀まで】

 27歳の池永は出口若武四段、古賀悠聖三段(当時)、山本博志四段、渡辺和史四段を破っての三番勝負進出だ。第1図は初戦の出口戦から。▲8四歩に△7四銀とかわした局面である。

 ここで池永は▲9六角と打った。△6五銀と銀を逃げられつつ桂も取られてまずそうだが、以下▲6八銀△7六竜▲2六銀△8七歩成に▲8五角打が強烈で、先手がリードを奪った。手順中の△8七歩成に代えて7四や8五に駒を打つのは、▲8三歩成~▲7二歩成が厳しい。

 角の二連打で初戦を突破した池永。実は池永が棋士デビュー後、新人王戦を勝つのはこの出口戦が初だった(三段時代の第47期にベスト8入りしている)。昨年の加古川青流戦に続いて、新人棋戦での優勝を目指す。

齊藤優希三段

 対する齊藤三段は深浦康市九段門下の24歳で、新人王戦は前期に続く2期目の参加となる。初戦で谷合廣紀三段(当時)を破ると、2回戦では前期新人王の高野智史五段より金星を上げる。勢いに乗って石川優太四段、西山朋佳女流三冠、梶浦宏孝六段を破り三番勝負進出を果たした。奨励会三段の決勝三番勝負登場は第23期の石飛英二三段、第39期の星野良生三段、第44期の都成竜馬三段、第46期の大橋貴洸三段、第49期の出口若武三段に続く6例目である。

【第2図は△7三金まで】

 第2図は準決勝の梶浦戦。先手玉もかなり危ない形だが、ここでの▲3三銀が決断の踏み込み。以下△同桂▲同歩成△同金▲同桂成△同玉▲3四歩△4二玉▲3五桂△5一桂▲2五角で先手の勝ち筋に入った。手順中の▲3五桂が肝要で、▲5五桂と打つのは先手玉の逃げ道をふさぐため、△7八銀成▲同金△6五桂からトン死してしまう。

決勝三番勝負の展望は

 改めて、決勝三番勝負の展開を考えてみたい。まず、池永は居飛車党である。今期のトーナメントでも矢倉、横歩取り、角換わりと満遍なく指している。齊藤三段も、これまでの新人王戦の棋譜を見る限り居飛車党のようだ。よって、相居飛車となることが予想される。

 三番勝負は、手番における作戦の比重が通常の1発勝負より大きくなるが、齊藤三段は上記の梶浦戦を除くと、トーナメントでは全て後手番だったので、後手番の作戦に悩むということはないだろう。対して池永には既に加古川青流戦で番勝負を経験しているアドバンテージがある。ホームグラウンドの関西将棋会館で行われる第1局を勝てば、勢いに乗って2連勝の可能性も高そうだ。

 これまで羽生善治、森内俊之、渡辺明の永世称号有資格者が、新人王戦で優勝している。直近の10年を切り取っても佐藤天彦、永瀬拓矢、菅井竜也、藤井聡太の4名が新人王ののちにタイトルを獲得した。将来のスター棋士への登竜門ともいえる決勝三番勝負を制するのは果たして!?

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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