藤井聡太棋聖、史上最年少17歳でのタイトル獲得

藤井聡太棋聖、史上最年少17歳でのタイトル獲得

ライター: 渡部壮大  更新: 2020年08月13日

今期の棋聖戦では一次予選から勝ち上がった藤井聡太七段が史上最年少タイトル挑戦を決め、第二次藤井フィーバーが始まった。相手は三冠を有する渡辺明棋聖。

第91期ヒューリック杯棋聖戦挑戦者決定戦

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撮影:常盤秀樹

緊急事態宣言により、今期の棋聖戦はベスト4までで対局がストップ。5月下旬に宣言が解除され、いよいよ再開。準決勝を制した永瀬拓矢二冠と藤井聡太七段による挑戦者決定戦となった。永瀬が先手となり相掛かりに。先攻し、駒得をした先手がまずまずの将棋となった。

【第1図は▲2九銀まで】

先手の攻めをしのぎ、後手にも反撃のチャンスが回っている。ここで△3六銀が勝負手。次の△2七飛を狙っており、▲4八金打と使わせて長い戦いに持ち込む狙いだ。実戦は▲6九玉だったが、△2七飛▲3九金打△4七飛成▲7六歩△4六竜と進み、竜が手厚い格好だ。以下も激戦が続いたが、最後は藤井が制し、史上最年少タイトル挑戦のラストチャンスをつかんだ。

第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第1局

わずか4日後、第1局が開幕。先手の藤井が矢倉を選び、脇システムの持久戦となった。難解な形勢が続いたが、徐々に先手の攻めが厳しくなっていく。

【第2図は▲2二銀まで】

▲2二銀と打ち、次の▲1三歩が厳しく一手一手の寄りとなった。だが、後手の持駒も豊富で△7九角と踏み込む。▲9八玉なら安全だが、△6八角成が1三に利いてまずい。実戦は▲7九同玉△6八香成▲8八玉△7八成香▲同玉△1八竜から際どい王手が延々と続いた。しかし藤井は読み切っていたようで、最後は玉を3四まで逃げて不詰め。大熱戦を制し、タイトル戦初勝利を飾った。

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撮影:常盤秀樹

第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第2局

第2局も矢倉の出だしから、先手の渡辺が急戦を目指す。よくある形と思われたが、藤井が新構想を見せた。

【第3図は▲4六銀まで】

普通に指すなら△5四歩だろう。しかし、藤井は違った。△2二角と上がり、▲2四歩△同歩▲同飛△2三歩▲2九飛に△5四金が実に力強い。▲4九飛に△4二飛と数を足し、4五の桂が助からなくなった。しかし後手は玉飛接近の悪形。とてもまとめきれるようには見えなかったが、藤井は中終盤にも妙手を連発し圧勝。会心の指し回しで2連勝とタイトルに近付いた。

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撮影:常盤秀樹

第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第3局

藤井の初タイトル、そして渡辺が初のストレート負けを喫するかでがぜん注目された第3局。角換わり腰掛け銀からお互いに深い研究のある形で猛スピードの進行。

【第4図は▲9五歩まで】

ここから△8五桂▲同銀△9三桂が鋭い攻め。▲8二歩と止めたものの、△8五桂▲同桂△7九銀▲8七金△7八馬▲9四歩△8六歩と攻めて、たちまち先手玉は受けが難しくなった。以降も藤井の猛追を残しておいた時間を使って冷静にかわしきり制勝。渡辺が底力を見せて1勝を返した。

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撮影:中野伴水

第91期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負第4局

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撮影:金子光徳

第4局は矢倉から第2局同様の進行に。先手が変化し、少し違った将棋となった。

【第5図は▲7三角成まで】

8二の飛車取りなので反射的に逃げてしまいたくなるが、△3八銀が鋭い踏み込みだった。飛車の取り合いは先手玉が受けなしになるので▲5九飛と逃げたが、△8六桂と縛ったのが冷静。単に△4七桂は▲同金△同金▲7八玉で大変になるので、玉を逃がさない。▲8二馬は今度こそ△4七桂で寄せられるので▲4八歩と受けたもののこれではつらく、△4二飛と逃げて後手勝勢となった。以下も局面を的確にまとめあげ、藤井が押し切った。

シリーズは3勝1敗となり、藤井が18歳の誕生日を目前に史上最年少でのタイトル獲得となった。渡辺がタイトル戦で年下に敗れたのは初で、いよいよ新時代の幕が明けた。

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撮影:金子光徳

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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