女流王位戦初参加で挑戦権を獲得した加藤女流三段を、里見女流王位が迎え撃つ。第31期女流王位戦五番勝負の展望は?

女流王位戦初参加で挑戦権を獲得した加藤女流三段を、里見女流王位が迎え撃つ。第31期女流王位戦五番勝負の展望は?

ライター: 渡辺弥生女流初段  更新: 2020年06月04日

昨年度末の3月2日、第31期女流王位戦挑戦者決定戦が東京・将棋会館の「特別対局室」で行われた。挑戦者決定リーグを勝ち抜いてきたのは、<紅組>優勝の伊藤沙恵女流三段と、<白組>優勝の加藤桃子女流三段の二人。伊藤得意のウソ矢倉に、機を逃さずに仕掛けた加藤が豪快に攻め続け、持ち時間を半分以上残して快勝。里見香奈女流王位への挑戦権を獲得した。

タイトル獲得数8期、絶好調の挑戦者 加藤桃子女流三段

挑戦者となった加藤桃子女流三段は現在25歳。奨励会員時代から女流棋戦に参加し、これまでに獲得したタイトルは女王4期、女流王座4期の合計8期。タイトル戦登場回数は14回にのぼる。とくに2014年度から2015年度にかけては女流二冠を保持。当時奨励会員として出場できる2つの女流棋戦を制した(第37期から霧島酒造杯女流王将戦には女流タイトルホルダーとして出場)。昨年3月に初段で奨励会を退会、女流三段となった。女流棋士となってからは、自身の将棋教室を開くなど、普及活動にも尽力している。

加藤桃子
絶好調の挑戦者、加藤桃子女流三段

今期初参加となる第31期女流王位戦では3連勝で予選を突破し、挑戦者決定リーグ入り。挑戦者決定リーグ<白組>で4勝1敗の成績で優勝し、挑戦者決定戦へと進んだ。加藤の昨年度1年間の成績は24勝6敗、勝率8割。全女流棋士中のランキングは勝数が3位、勝率が1位。1月から3月にかけて9連勝し、こちらもランキング2位。今年度に入ってからは第13期マイナビ女子オープン五番勝負に登場、女王復位まであと一歩というところまで迫った。

棋風は踏み込みのよい、鋭い攻め将棋の居飛車党。勉強熱心で、序中盤の研究には定評がある。終盤も強く、勝ちになったらスパッと決める、痛快な指し回しが加藤の将棋の魅力だ。

図1は伊藤との第31期女流王位戦挑戦者決定戦の中盤戦。後手の伊藤が△4五歩と突いたところだ。玉の囲いもそこそこに、加藤が踏み込んだ。

【第1図は△4五歩まで】

<第1図以下の指し手>
▲9一角成△同飛▲2三香△2一歩▲2二香成△同歩▲5二銀

加藤はノータイムで角を切り飛ばし、取った香車を2三へ打ち込んだ。最後の▲5二銀が厳しい一手。△7三角は▲4三銀成△同金に▲2三歩成、△4二銀は▲5一銀不成△同銀▲8二角△9二飛▲7一角成や、▲4三銀成△同金に▲8二金があって後手は収拾がつかない。以降も快調に攻め続けた加藤が最後は着実に伊藤の玉を寄せ切り、挑戦権をものにした。

女流タイトル戦新記録を樹立 里見香奈女流王位

加藤を迎え撃つのは、「出雲のイナズマ」里見香奈女流王位。清麗・女流名人・女流王位・倉敷藤花を保持する、女流棋界の第一人者だ。タイトル獲得数は、清麗1期、女王1期、女流王座4期、女流名人11期、女流王位5期、女流王将7期、倉敷藤花10期の合計39期。タイトル戦登場回数は47回。28歳にしてクイーン名人、クイーン王位、クイーン王将、クイーン倉敷藤花の資格保持者だ。

昨年9月に初代清麗の座に就き、史上初の女流六冠に。その後、西山朋佳女王(現女流三冠)に敗れ、女流王将と女流王座のタイトルを失うが、第46期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負では谷口(室谷)由紀女流三段の挑戦を退け、女流名人11連覇を達成。林葉直子さんの女流王将戦10連覇の記録を抜き、女流タイトル戦新記録を樹立した。3月には実績を評価され、女流六段へ昇段

里見香奈
女流棋界の第一人者、里見香奈女流王位

里見の昨年度1年間の成績は18勝12敗、勝率6割。里見にしては振るわない印象だが、女流タイトルホルダーとして参加している男性の公式戦の成績は12勝12敗と相変わらずの強さを見せており、調子はまずまずと見ていいだろう。棋風は攻守バランスのとれた振り飛車党で、攻めても受けてもとにかく強い。終盤に入ってからの鋭い切り込みは、皆さまご存じの通り。

図2は谷口との第46期岡田美術館杯女流名人戦五番勝第3局の終盤戦。先手の谷口が5二の銀を▲5一銀不成と入ったところだ。里見は金取りに構わず、寄せに出た。

【第2図は▲5一銀不成まで】

<第2図以下の指し手>
△2六歩▲5二歩成△2七歩成▲同銀△2六歩▲同銀△3六桂

△2六歩が急所の一手。銀を2六まで釣り上げてから、△3六桂の王手が厳しい。▲3六同歩は△2七銀▲3九玉に△4七龍。▲2七玉は△2八金▲1六玉に△1四歩で、いずれも先手玉は受けなしとなる。
この一局に勝った里見は女流名人11連覇の新記録を達成した。

1年半ぶり、6度目の番勝負

里見と加藤はこれまでに21回の対戦があり、里見の15勝、加藤の6勝。これまでの21局のうち、18局が5度の番勝負での対戦だ。このうち4度を里見が制している。加藤が勝ったのは、2014年の第7期マイナビ女子オープン五番勝負。最後に対局した番勝負が2018年の第40期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負になる。

対戦成績では里見が押しているものの、過去に加藤が番勝負で里見に勝っていることや、2棋戦で挑戦者まで勝ち上がっている勢いを考えれば、実際の勝負は互角と見ていいだろう。二人とも奨励会員ではなく、女流棋士として女流のタイトル戦を戦う立場になった。どのような戦いを見せてくれるか楽しみだ。

戦型は里見の振り飛車に、加藤が居飛車の急戦や持急戦で対抗する、居飛車対振り飛車の対抗型が有力。里見は相手が振り飛車党のときは居飛車を指すこともあるが、これまで加藤に対して居飛車を採用したのは2回だけで、あとは得意の力戦振り飛車で戦っている。

第31期女流王位戦五番勝負第1局は6月5日(金)、東京・将棋会館にて開幕する。

渡辺弥生女流初段

ライター渡辺弥生女流初段

大学で将棋を覚えて以来、すっかりその魅力の虜になった。王様より飛車が大事な、振り飛車でしか勝てない居飛車党。

このライターの記事一覧

この記事の関連ワード

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています