ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2020年06月17日
西山朋佳女王に加藤桃子女流三段が挑戦した第13期マイナビ女子オープン。両者がタイトル戦で顔を合わせるのは2期前以来3度目。本来ならこの時期は名人戦、叡王戦、女流王位戦も行われるはずだったが、緊急事態宣言のため対局者が東西に分かれる番勝負は進められず、マイナビ女子オープンのみが開催された。
恒例の神奈川県秦野市「元湯 陣屋」でシリーズが開幕。西山の三間飛車に加藤は居飛車穴熊に囲う
【第1図は△4二角まで】
先手は2枚の金が動いておらず穴熊は堅くないが、加藤は金が動いていないのを生かす構想を見せる。図から▲6五歩△同歩▲4五歩で△3三銀と下がらせ、▲6八飛が局面を広く見た転回。▲5八金右などが入っていたら指すことのできない手だ。後手は3二の飛車や3三の銀が凝り形で、玉頭方面で戦いになると分が悪い。以下は的確に駒を活用して先手の快勝となった。西山に連敗が続いていた加藤だが、好スタートを切る。
第2局は山梨県甲府市「常盤ホテル」での対局が予定されていたが、緊急事態宣言が出されたため対局場を変更。東京「将棋会館」で行われることになった。西山が先手中飛車からうまくさばき優勢に。しかし終盤は際どい形勢となる。
【第2図は△4八とまで】
△4八とで先手玉はかなり迫られている。しかし▲3五金が強手。△同歩に▲5四竜と王手で取るのが狙いだ。△3四銀や△3四金は▲同竜以下詰むので△1三玉と引いたものの、▲2五銀が上部を厚くする攻防手。手順に自玉を安全にして西山が勝ちを決めた。
撮影:常盤秀樹
第3局は埼玉県さいたま市「桜茶屋」の対局が予定されていたが、こちらも緊急事態宣言のため対局場を変更。引き続き東京「将棋会館」で対局が行われた。西山の三間飛車に加藤が珍しい急戦を見せて、ペースをつかむ。
【第3図は△5三桂まで】
図は先手優勢でどう決めるかという局面。▲7八金△6二銀▲8八銀が馬の活用を防ぐ手堅い勝ち方となった。以下は数手で後手の投了となっている。
撮影:常盤秀樹
第4局は予定通り東京「将棋会館」で対局が行われた。先手中飛車から軽快に動いた西山がペースをつかむ。
【第4図は△5三銀まで】
△5三銀は角を逃げれば△3五金で勝負できるが、当然ここは踏み込む。▲3一と△同金▲5三角成△同飛に▲8二竜が素朴ながら厳しい。角を合駒すると楽しみがなくなってしまうので△3三玉だが、▲2二銀△同金▲4二銀から寄せきった。
迎えた第5局。マイナビ女子オープンでフルセットになったのは初だ。西山の先手中飛車に加藤は居飛車穴熊。加藤が堅さを生かし暴れることができるか、西山がうまく中央から押さえこめるかの勝負になった。
【第5図は△4二角まで】
長い中盤戦だったが、ここで▲6四歩と垂らして押さえこみ成功がはっきりした。△2四歩と玉頭にアヤを求めたが、▲5三歩成△同角▲6三歩成△4二角▲5二と△3三角▲4一とで銀得の戦果をあげた。以下は駒得を生かし、先手が押し切っている。
西山はフルセットの戦いを制して3連覇。開幕が遅れていたが、いよいよ始まる三段リーグに弾みをつける防衛戦となった。
ライター渡部壮大