強豪揃いの熱戦を制したのは？第36期全国アマチュア王将位大会レポート

ライター：渡部壮大　　更新： 2019年12月09日

第36期アマチュア王将戦の全国大会が11月30日に東京都港区「チサンホテル浜松町」で、２日目は翌12月１日に「将棋会館」にて行われた。地区予選代表選手17人にアマチュア銀河戦から４人、そして今年の全国大会上位者から６人が招待された。アマ王将戦の地区予選は在住を問わないことが特長で、遠征する強豪も多く予選から非常にレベルの高い戦いが繰り広げられる。今年は最年長が35歳の奥村龍馬さん（アマ銀河）と、非常に平均年齢が若い大会となった。

今大会の鬼ブロックは５組。知花賢さん（支部名人）に、現在のアマで最強の一角に入る小山怜央さん（東関東）、前回準優勝の山口直哉さん（北関東）、元アマ竜王の渡辺誠さん（北東北）と、指し盛りの強豪が揃った。結果は知花さんが２連勝、小山さんが２勝１敗で通過している。

２連覇中の森村賢平さん（前回優勝）は、本戦１回戦で知花さんに敗れて３連覇はならなかった。

前回優勝の森村さんVS知花さん（支部名人）

棋士編入試験を受けている折田翔吾さん（準支部名人）は１回戦で小山さんと対戦。折田さんの会心譜になるところだったが、着地に失敗して大逆転。チャンスを見逃さない小山さんの終盤力が光った。秋のアマ名人戦でも小山さんが勝っており、プロに勝ちまくる折田さんでもアマ最強クラスを倒すのは簡単なことではない。

棋士編入試験を受けている折田さんVS小山さん（東関東地区代表）

ベスト4は強豪揃い

初日はベスト４まで決定。水谷創さん（北陸）─横山大樹さん（朝日アマ名人）、小山怜央さん─中川慧梧さん（アマ名人）となった。横山さん、小山さん、中川さんは現在のアマ棋界３強と言える強豪で、令和元年を締めくくるに相応しい名前が並んだ。

水谷さんも支部名人を獲得したことがあり、第30回大会で準優勝の経験がある。小山さんはアマ王将戦で４年連続のベスト４進出と、抜群の安定感と強さだ。横山さんは現在朝日アマ名人、赤旗名人を持っており三冠を、中川さんはアマ名人と合わせての二冠を狙う。

水谷さんと横山さんは意外にも初手合とのこと。中飛車で低い陣形から軽快な動きを見せた水谷さんが快勝。実績十分の横山さんだが、アマ王将戦では決勝進出もないのが意外に思える。

横山さん（朝日アマ名人）VS水谷さん（北陸地区代表）

小山さんと中川さんはともにリコー将棋部で、職団戦や日本選手権では最強の二枚看板として活躍している。個人戦では全国優勝を争うライバルで、先のアマ名人戦でも準決勝で対戦している。二転三転の熱戦だったが、最後は中川さんが制して先輩の貫録を見せた。

小山さん（東関東地区代表）VS中川さん（アマ名人）

決勝戦　水谷さんVS中川さん

決勝戦はスタジオ収録。水谷さんが振り飛車から動き、中川さんが押さえ込みを図る展開に。端からうまく手にして水谷さんがペースを握ったが、その後の方針を誤って混戦となった。

先手：水谷さん（北陸地区代表）　後手：中川さん（アマ名人）

【図は△６七金まで】

図から△３五歩が好手。▲４六歩のように催促すると△３四角から△３七桂成で６七の金を抜くことができる。実戦は▲２四金と寄ったが、△３六歩▲同歩△６四角▲５五歩△３七歩から攻めて後手に形勢が傾き始めた。▲３六同歩では▲３五香のように攻め合いで開き直れば難しかったようだ。最後は玉の脱出に成功して後手が制勝。

３回目の優勝を決めた中川さん