100期を懸けた羽生VS初竜王を目指した広瀬。一進一退の白熱した第31期竜王戦七番勝負を振り返る【前編】

100期を懸けた羽生VS初竜王を目指した広瀬。一進一退の白熱した第31期竜王戦七番勝負を振り返る【前編】

ライター: 渡部壮大  更新: 2018年12月30日

羽生善治竜王にとって大台となる100期か、27年ぶりの無冠か、世間が注目した第31期竜王戦七番勝負は一進一退の白熱した勝負になった。挑戦者は今期絶好調の広瀬章人八段。竜王戦とはこれまで縁がなく決勝トーナメント進出さえなかったものの、今期はランキング戦1組で優勝。そのまま決勝トーナメントも勝ち上がって初の竜王戦七番勝負出場を決めた。
※肩書・段位は対局当時のもの

開幕局は渋谷の「セルリアンタワー能楽堂」で開催。振り駒で先手となった羽生が角換わりを目指す。角換わり腰掛け銀らしく激しい攻め合いとなって第1図へ。

【第1図は△3一飛まで】

ここで▲3一同龍△同金の進行は後手陣が安全になって面白くない。▲2四桂が羽生の用意していた妙手だ。△同歩▲同龍は3一の飛車が壁にしかならない。実戦は△2一飛▲3二桂成△3六角に▲4七銀△2七角成▲3八金打とガッチリ受けに回り優位に立った。最後は入玉を巡る大熱戦となったが羽生が制勝。防衛に向けて幸先の良いスタートを切った。

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セルリアンタワー能楽堂で行われた第1局 竜王戦中継ブログより

第2局は福岡県福津市「宮地嶽神社」。先後を入れ替えたが、またも角換わり腰掛け銀へ。後手の羽生が細い攻めをつなぐことに成功し、ペースを握った。

【第2図は▲7八同玉まで】

ここから△7七歩▲8七玉△8四香▲8六桂△7八歩成▲同玉△8六香▲同金△6六馬が流れるような寄せ。うまく上部を埋めて後手の入玉を阻止。羽生が2連勝となる。

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羽生が開幕2連勝と防衛に向けて好スタートをきった 竜王戦中継ブログより

第3局は茨城県鹿嶋市の「鹿島神宮」。戦型は3局続けての角換わり腰掛け銀。羽生が猛攻を仕掛け、際どいながらも攻めを成功し優勢となる。

【第3図は△7五歩まで】

図の△7五歩は広瀬渾身の勝負手。ここは▲4五龍と取っておくべきだったようだ。実戦は▲7五同歩と応じたため、△5八角▲4五龍が詰めろにならず、△6九銀と絡まれて速度が逆転。以下▲5三銀△6三玉▲6五龍△6四金で後手玉が耐えている。広瀬は苦しい将棋を逆転し1勝を返した。

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1勝目をあげた広瀬からは笑みもこぼれた 竜王戦中継ブログより

第4局は京都府福知山市「福知山城」。福知山市は開催にあたりクラウドファンディングに取り組んだことでも話題を集めた。戦型は4局続けての角換わり腰掛け銀。現在の将棋界の流行を象徴するシリーズだ。羽生がうまい攻めでリードすると、さらに差を広げる。そのまま押し切るかとも思われたが、上部に逃がす寄せで形勢は急接近。

【第4図は△8四同飛まで】

ここで▲7二飛が攻防手。対する△5二歩は手筋だが、▲5五歩△8五歩▲7六玉となって先手玉は安全になった。以下△8六歩に▲7三飛成が地味ながら好手。広瀬が2局続けて逆転勝ちで2勝2敗に。シリーズはあらためての三番勝負となった。

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広瀬が2連勝でタイに戻した 竜王戦中継ブログより

後半戦の模様は次の記事をお送りする。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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