無冠から一気に二冠へ ついに花開いた豊島将棋 その変遷を語る――【将棋世界2018年12月号のご紹介】

無冠から一気に二冠へ ついに花開いた豊島将棋 その変遷を語る――【将棋世界2018年12月号のご紹介】

ライター: 将棋情報局(マイナビ出版)  更新: 2018年11月02日

無冠から一気に二冠へ

ついに花開いた豊島将棋

その変遷を語る――

※この記事は将棋世界 2018年12月号(11月2日発売)に掲載の「スペシャルインタビュー 豊島将之二冠(王位・棋聖)『声援に感謝』」の一部を編集したものです。全文は将棋世界 2018年12月号でお読みください。

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尊敬すべき相手

――二冠獲得おめでとうございます。

「ありがとうございます。少しずつ実感が湧いてきている感じです」

――今回の王位戦七番勝負を振り返るといかがでしたか?

「第1局に負けてから、追いついては先行される苦しい展開でしたが、負けた将棋も含めて自分の力を出せたシリーズだったかなと思います」

――結果的に先手番が全勝しましたが、際どい中終盤、ねじり合いもありました。

「第3局と第6局は、最後まで分からない終盤戦でした。特に第6局は、前月号にも載りましたが終盤戦で自分に負け筋がありました。第7局で先手番を引けたことなども含め、最後は運がよかったと思います」

――前王位の菅井竜也七段とは昔、研究会をされていたと聞いています。

「菅井さんと初めて会ったのは、彼が小学6年生の頃で、やる気があって威勢のよい、面白い子だなと思っていました。棋士になってからは対戦することもあったのですけど、負け越しているので厳しい相手だなと思っていました。将棋に対する取り組み方、内容も独創的で、なおかつ結果を出しているので、そういうところは年下ではありますが、尊敬している棋士の一人です」

――ほかに印象に残ることは?

「菅井さんと一緒に参加した2014年の電王戦です。出場が決まったときは、まだ対戦ソフトを貸し出すルール(注:本番対局の前にソフトの提供を受けて練習対局や事前研究をする)が決まっていませんでした。初めはたぶん自分も菅井さんも、コンピュータと対戦することで将棋が強くなりたいという気持ちが大きなウエイトを占めていたと思います。ふだんの対局でしたら、勝つことを突き詰めていけば、勝敗自分の成長見た人に楽しんでもらう、その3つを得られると思うんです。ソフト貸し出しルールの設定は、最初の目的である自分の成長につなげるか、あるいはアプローチが全く異なる(注:ソフトの弱点を探す等)勝つための研究かの、どちらかの選択を迫られることでもありました。自分は最終的に、どうすればソフトに勝てるかというところを追究して指したのですが、菅井さんはあくまで自分自身の成長という点を曲げませんでした。それまでも、やる気があって優秀な方だなという印象はあったのですけど、意志の強さや将棋に対する純粋さを感じ、特に見方が変わるようになりました。彼が自分より先にタイトルを獲ったときも、そういうことを積み重ねた結果なのかなとも思いました。私は自分が選択したことにいまも後悔はありませんが、成長したいという意志を貫いた菅井さんはすごいなと思います」

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若すぎた初挑戦

――豊島さんが二冠を取るまでには、苦難の道のりがありました。王位戦の話はひとまず置いておいて、過去のタイトル戦を振り返っていただきます。まず初挑戦は、2011年の第60期王将戦(対久保利明王将)でした。当時20歳。このときは2勝4敗で敗れました。

「初めてのタイトル戦で、すごく緊張していたんですけど、いま振り返ると実力的にも全然足りていない感じだったので、よく2勝もできたなというのがいまの感想です。当時といまとでは将棋の考え方自体が変わっています。あの頃はまだ将棋の奥深さが分かっておらず、ちょっと有利になったらすぐ勝てるんじゃないかと思っていたところもありましたし、悪くなったら挽回が利かないと思っていたので、早くから持ち時間をつぎ込むスタイルでした。何事も一つの経験みたいに考えられていたので、敗れはしましたが割と精神的にはしなやかさみたいなものがあったと思います。20歳と若かったですし、まだこれからみたいな。負けたりうまくいかなかったりしても、受け入れられたところはありました」

――印象に残る場面として、第6局の▲9八銀(第1図)を挙げています。

【第1図は▲9八銀まで】

「いまの自分なら、多少調子よく指せているか、よい勝負だと見るでしょうね。当時は割と自分はうまく指せると思っていたところがあって、形勢の動きに敏感というか、いまならまだまだ大変と思うところを有利になったと感じていました。そういう感覚が、現在はかなり変わりました。調子よくやれていると思っても実は大変だということを、このあと何度も経験したので(笑)。第1図で△7四歩ならよかったと思うんですけど、実戦は△9四歩▲4五歩△6六歩▲同飛と進み、もう互角の形勢に戻っています。飛車交換になると9八銀が桂香を守って堅いんです」

20歳でのタイトル戦初登場も戴冠には結びつかなかった豊島六段(当時)。インタビューはここから、2度目、3度目、4度目のタイトル戦、そしてついに初戴冠となった第89期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負、そして二冠となった第59期王位戦七番勝負を振り返り、さらに、これからの目標について語ります。

また、インタビュアーを務めた池田将之記者による本誌人気コーナー「関西本部棋士室24時」には、インタビュー記事に収まらなかった質問と回答を約1ページ半にわたり掲載!

全文は将棋世界 2018年12月号(11月2日発売)でお読みいただけます。

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