藤井聡太六段が羽生善治竜王を破って史上最年少優勝。朝日杯準決勝・決勝での絶妙手とは?

藤井聡太六段が羽生善治竜王を破って史上最年少優勝。朝日杯準決勝・決勝での絶妙手とは?

ライター: 相崎修司  更新: 2018年03月06日

2月17日、第11回朝日杯将棋オープン戦の準決勝と決勝が、千代田区の有楽町朝日ホールにて行われた。本棋戦の準決勝・決勝は例年、同所にて公開対局で行われているが、特に今回は準決勝で羽生善治竜王藤井聡太五段の公式戦初対局が実現したこともあり、非常に大きな注目を集めた。観戦用の席も例年以上に多く用意されたが、あっという間に完売した。対局当日の様子を紹介しよう。

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公開対局で行なわれ、会場は満席の状態だった。撮影:常盤秀樹

準決勝の羽生―藤井戦久保利明王将―広瀬章人八段戦はそれぞれ午前10時30分から開始されたが、9時過ぎにはすでに多くの将棋ファン、報道陣が会場に集まっていた。特に、羽生―藤井戦へ多数のカメラが集まり、カメラマンは位置取りだけでも大変だっただろう。

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注目の準決勝戦、羽生竜王 対 藤井五段戦の対局開始時の模様。撮影:常盤秀樹

準決勝 羽生―藤井戦

その羽生―藤井戦は振り駒の結果、藤井が先手に。角換わり模様の出だしから、羽生が角交換を拒否して最近流行の△4四歩・△4三銀型を作戦に採った。

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撮影:常盤秀樹

藤井の先攻から、羽生が反撃に出て迎えたのが第1図。

【第1図は△5五同銀まで】

後手が先手の銀を取った局面だが、▲5五同銀の前に▲4三歩と、一本叩いたのが軽妙だった。対する応手として形は△同金右だが、▲6三角と打たれてしまう。以下△8二飛▲5五銀の局面は次の▲4四歩が厳しく、先手良しとされた。さりとて△4三同玉は▲5五銀でやはり▲4四歩が残り、以下△4四同銀▲同銀△同玉の進行は玉が危険地帯に引っ張り出されてしまう。

羽生は▲6三角を打たせないために△4三同金左と取ったが、やはり▲5五銀で、今度は▲4四歩の他に▲2三飛成も生じている。実戦は▲5五銀に△9九銀と打ったのが敗着とされ、代えて△9九角ならまだしもとされたが、感想戦でも後手に思わしい順は出てこなかった。本譜は9九に打った銀が重たくなり、後手の攻めが続かない。のちに▲2三飛成を実現した藤井が的確に攻めて快勝。棋界の絶対王者を破って決勝進出を果たした。

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局後に簡単な感想戦が佐藤天彦名人をまじえて行なわれた。撮影:常盤秀樹

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控室では、その後も両者で感想戦が行なわれた。撮影:相崎修司

準決勝 久保―広瀬戦

もう一局の久保―広瀬戦は、先手の久保が中飛車に。中盤は広瀬の攻めを的確にとがめた久保がリードして、迎えたのが第2図である。

【第2図は▲4六香まで】

ここで△2七角成!と捨てたのが広瀬の勝負手である。△7八と▲4五香の進行は先手玉が堅く、後手勝てない。「終盤は駒の損得よりも速度」の格言通り、先手玉を少しでも薄くするというのが広瀬の狙いだ。△2七角成以下、▲同銀△7九飛▲3八金△7八飛成▲5四角△5二金右▲7六角△4九銀と進み混戦に。手順中の▲3八金では▲3八銀、▲5四角では▲5五馬も有力とされた。最後は広瀬が抜け出して、決勝進出。

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別の会場で、もう一方の準決勝戦、久保王将 対 広瀬八段戦が行なわれた。撮影:相崎修司

決勝 広瀬―藤井戦

対局者それぞれが協賛のローソンから提供された昼食をとり、午後2時30分から始まる決勝に臨む。決勝は藤井の先手で角換わりに。

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決勝戦開始にあたって事前に控室で振り駒が行なわれた。撮影:相崎修司

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決勝戦(広瀬八段 対 藤井五段)対局開始の模様。撮影:常盤秀樹

先に仕掛けた藤井がペースを握ったまま、攻め続ける。局後の大盤解説で広瀬は「王様が一人ぼっちですからね。藤井さんを応援している皆さんと、一人ぼっちの...」と、自玉を指し示し、会場の笑いを誘った。

そうして迎えた第3図。確かに広瀬玉は裸だが、ここで先手にうまい手がないと△4八角成があるため、大変だ。角成を防ぐだけなら▲4五歩や▲4七歩だが、先手の飛車が使えなくなる。広瀬は多少なりとも非勢を感じていたが、まだ難しいとみていた。

【第3図は△7三同玉まで】

だが、ここで藤井が打った▲4四桂が絶妙手。△同飛は▲4五歩が飛車当たりになる仕組みで以下△4八角成▲同飛に飛車を逃げても、角を渡したので後手玉が寄る。「桂打ちは見落としていました」と広瀬。

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撮影:常盤秀樹

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撮影:常盤秀樹

やむなく△2六角成としたが、▲3二桂成に対する応手もつらい。△4八飛成▲同飛△同馬は▲4三飛が王手馬取りだ。桂成に△4八馬も▲4一成桂と飛車を取れば、やはり後手玉が寄り筋に入る。本譜は▲3二桂成に△4三飛と辛抱したが、▲7四歩△同玉▲6五銀から後手玉を追い詰めた藤井が快勝し、優勝。同時に六段昇段も決めた。15歳6ヶ月での棋戦優勝と六段昇段はともに史上最年少である。

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決勝戦終局後の両者による感想戦。撮影:常盤秀樹

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優勝カップを手にして撮影に応じる藤井新六段。撮影:常盤秀樹

現地には藤井の師匠である杉本昌隆七段も訪れていた。「こんなに早く六段になるのは見事。朝日杯で新人は、一次予選から10連勝しないと優勝できないので大変だと思っていましたが、本戦1、2回戦の名古屋対局の出来がよく、また他棋戦でも充実していたので、今朝の時点では3割くらいは優勝の可能性があるかなと思っていました」と語る。

杉本は本棋戦の前身棋戦である朝日オープン将棋選手権で準優勝の経験がある(2001年度の第20回)。「私にはうれしさと悔しさが入り混じった棋戦でした。自分がたどり着けなかった所にいけたのはうれしい。同じ朝日杯ということに縁を感じますね」と続けた。

藤井は優勝について「まだ実感はわいてこないが、全棋士参加棋戦優勝という大きな結果を残せたのは自信になった。自分にはまだまだ足りない部分はあるが、この優勝を励みにしたい」と語った。デビュー当時との自身を比較して「対局に平常心で臨めているのは、成長したかなと思います」と述べた。

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2016年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、叡王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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