ライター松谷一慶
香川女流三段VS室谷女流二段、白熱のライバル対決!「3月のライオン」とのコラボも。「女流棋士の知と美」イベントの全貌とは?
ライター: 松谷一慶 更新: 2017年05月01日
紀伊國屋書店主催「女流棋士の知と美」が3月28日東京・新宿の紀伊國屋ホールで開催されました。今回で6回目をむかえる本イベント。特選対局、トークショー、サイン会、ポラロイド撮影会、3月のライオン複製原画展と盛りだくさんの内容でした。このコラムでは大盛況だった当日の様子をレポートします。
「3月のライオン」とのコラボレーション
今回のイベント会場では、「3月のライオン」とのコラボレーション企画として、香川愛生女流三段、室谷由紀女流二段、山口恵梨子女流二段が選ぶ、漫画「3月のライオン」の好きなシーンの原画が展示されていました。
また、それぞれのシーンを選んだ理由を、3人に漫画監修をしている先崎学九段を加えたスペシャルトークショーで聞くことができるという3月のライオンファンには嬉しいコラボレーション。
香川女流三段が選んだのは、主人公の桐山零と宗谷名人との記念対局での感想戦のシーン。「盤をはさむことで、言葉を交わさなくても思いが伝わる嬉しさってあるなと思うんです」と女流棋士ならではの視点で語られていました。
「川本三姉妹が好きなんですよ」と話す室谷女流二段が選んだのは、零くんが風邪で寝込んでいるところに川本三姉妹がお見舞いに行くシーン。
前作「ハチミツとクローバー」から羽海野チカさんのファンだという山口女流二段は、土橋九段が宗谷名人に負けた後のシーンを挙げており、「勝負に負けた時にどう心を保つかが棋士にとってすごく大切で、それを漫画で表現しているのがすごい。将棋界の本当の姿を書こうとしているんだなと思った」と感嘆されていました。
先崎九段からは、監修だからこそのエピソードも飛び出し、漫画「3月のライオン」をもう一度読みなおしたくなるような、大変面白いトークショーでした。
白熱のライバル対決
今回のイベントの見どころは、香川女流三段と室谷女流二段による特選対局です。
舞台上の大型スクリーンに、天井カメラからの盤面の映像、両対局者の表情を映すカメラからの映像、解説用局面の映像が、切り替えられながら映し出されており、白熱の対局を臨場感たっぷりに楽しむことができました。
香川女流三段と室谷女流二段は同じ1993年生まれで誕生日も約一か月違い、そして攻め将棋の振り飛車党という共通点もあり、自他ともに認めるライバル。
事前の振り駒の結果先手となった香川女流三段は、3手目に▲7五歩として早くも三間飛車宣言。対する室谷女流二段は4手目で△4四歩と角道を止めてから向かい飛車を選択し、戦型は相振り飛車となりました。
お互いに負けられないライバルが相手ということもあり、局面が進むにつれて両対局者の力のこもった手つきや盤上没我の表情などもスクリーン越しに伝わってきました。
また、解説の先崎九段と聞き手の山口女流二段の掛け合いも面白く、見どころが盛りだくさんでした。
開演前後は撮影会やサイン会も
販売ブースには大人気の「将棋 デ ショコラ」、室谷女流二段のサイン入りのボクシンググローブ、香川女流三段の主演映画「女流棋士の春」のDVDなど、さまざまなグッズが揃えられており、なかには開場から数分で売り切れる商品もありました。また、出演棋士による撮影会、サイン会もイベント前後で行われ、こちらも大盛況でした。
北尾まどか女流二段にインタビュー
最後に本イベントのプロデューサーの北尾まどか女流二段にお話をうかがいました。
ーー女流棋士のイベントを始めようと思ったきっかけは何でしょうか?
紀伊國屋書店のホールで将棋のイベントを行う、というのが最初のスタートです。紀伊國屋書店の高井昌史社長には以前から将棋界を応援していただき、この紀伊國屋ホールは瀬川先生のプロ編入試験の対局が行われた場所でもあります。せっかくの機会をいただいたので、劇場で対局を「観る」イベントを作ろうと思い、遠山五段と一緒に企画させていただきました。 対局室というのは元々閉ざされた空間で、女流棋士の真剣な対局姿を直接見られる機会はめったにありません。こうして公開対局の形式でファンの方に観戦していただくことは、勝負の世界である将棋の対局について伝えられるとても重要な機会だと考えています。
ーー今回のイベントを終えての感想を教えてください。
第6回となる今回はいろいろ工夫をしてみました。最近の将棋ブームの中でも、いま一番話題の『3月のライオン』とのコラボ企画を前面に出しました。その効果もあって初めて来場された方が多かったようです。女性向けの企画としてエトヴォス様からのご提供で、来場された女性にコスメをプレゼント。女流棋士のメイクにも使っていただきました。 なんといっても印象に残ったのは、対局席の後ろの大きなスクリーンでしょう。将棋プレミアム様のご協力で、大画面に対局者の顔と指し手が同時に映し出され、美しさだけでなく勝負師としての表情をお伝えすることができました。
ーー今回の特別対局に対してはいかがでしたか?
ライバル対決ということで、両者とも対局前から気合十分の気配が漂っていました。それでもトークショーは明るくて機転の利いた会話で楽しく盛り上げてくれるところは、さすが人気女流棋士です。その直後に盤を挟んで対峙したときには全く違う表情となり、観客席の皆さんも勝負の張りつめた空気を感じられたことと思います。
戦型は相振り飛車になりました。先手になった香川さんが果敢に攻め、飛車角が大きく飛び回る派手な応酬に。途中から室谷さんが反撃を開始し、華麗な△1七角成!という決め手を放ち、決着しました。皆さんにもぜひこの棋譜を鑑賞していただき、将棋プレミアムでの放映をご覧いただきたいです!
ーー次のイベントの構想などはもうありますか?
この公演は年1回以上のペースで開催したいと考えています。できればトーナメント形式にするなど規模を拡大したり、ゆくゆくは東京以外での開催も視野に入れています。
ーーこのコラムの読者に一言いただけますか?
将棋に興味を持ってくださり、ありがとうございます!最近は将棋を指すだけではなく、観る、読む、交流するなど、幅広い楽しみ方が増えてきました。ファンの方の応援あっての将棋界ですから、もっともっと将棋を楽しんでいただけるように、これからもいろんな企画を行ってまいります。応援のほどどうぞよろしくお願いします!
特別対局や、トークショーなどの充実したイベントだけでなく、ロビーでの展示や販売ブース、イベント前後の撮影会やサイン会など、楽しむポイントがたくさんあった「女流棋士の知と美」。
女流棋士の魅力、将棋の魅力にたくさん触れることができました。今回来られなかった方も、次回はぜひご参加ください。