女流名人戦第3局こぼれ話。里見香奈の「好道楽歩」、上田初美の「一向」。彼女たちの関防印に込められた意味は?

女流名人戦第3局こぼれ話。里見香奈の「好道楽歩」、上田初美の「一向」。彼女たちの関防印に込められた意味は?

ライター: 牛蒡  更新: 2017年02月22日

岡田美術館杯第43期女流名人戦五番勝負の第3局が2017年1月29日に行われました。対局場となった千葉県野田市「関根名人記念館」では、1月18日から3月20日まで「十四世名人木村義雄のお宝展」を開催しています。里見香奈女流名人と上田初美女流三段も、対局前日に展示を見て回りました。

貴重な品々が展示されていましたが、私が気になったのは棋士たちの「関防印(かんぼういん)」です。作品の右上に押す印のことで、「冠冒印」や「引首印(いんしゅいん)」とも呼ばれます。左下に押す「落款」は自分の名前や雅号を示しますが、「関防印」は作者が好む語句が選ばれることが多いようです。

関根金次郎十三世名人の関防印は駒の形をしていて、その中に旧字で「宝珠花(ほうしゅばな)」と書かれていました。中継ブログでもお伝えしたように、関根十三世名人は下総国葛飾郡東宝珠花村(現在の千葉県野田市東宝珠花)の生まれ。故郷を大事にしていた人だとわかります。

【2017年1月:第43期女流名人戦五番勝負第3局 】

館内には、現役の棋士・女流棋士の色紙も飾られていました。真田圭一八段の関防印は「六文銭」。NHKの大河ドラマ「真田丸」で何度も出てきた、あの家紋です。関防印が手元にないときは、筆で書くこともあるようです。

【2014年1月:第63期王将戦七番勝負第1局】

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撮影:牛蒡

里見女流名人の関防印はこちら。一般生活では使われない書体ですが、1文字か2文字でも分かれば、「あれだ!」と思いあたるのではないでしょうか。里見女流名人の著書のタイトルにもなった言葉です。

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撮影:牛蒡

正解は「好道楽歩」。「好きな道なら楽しく歩け」と読みます。なお、現在使用している関防印は「不動」とのこと。これも里見女流名人らしい言葉ですね。

最後に上田女流三段の関防印。こちらは書かれている漢字は分かっても、読み方が分からないという人もいるかもしれません。ちなみに、私は読めませんでした。

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撮影:牛蒡

正解は「一向」。これで「ひたすら」と読むそうです。わずか2文字ですが、上田女流三段の思いが伝わってくるようです。

棋士の色紙を入手する方法はさまざまですが、大盤解説会の「次の一手クイズ」の正解者にプレゼントされることが多いですから、解説会に参加するのがいちばんの近道でしょうか。手に入れられた方は、揮毫だけでなく関防印に目を向けてみるのも面白いと思います。

牛蒡

ライター牛蒡

2010年、サラリーマンから「名人戦棋譜速報」の中継記者に転身。 現在は日本将棋連盟モバイルの中継業務も担当。ペンネームを「牛」に改名しようかと検討中。

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