将棋コラム

糸谷八段、千田六段、室谷女流二段の共通点とは?将棋界の師弟関係の魅力に迫る

糸谷八段、千田六段、室谷女流二段の共通点とは?将棋界の師弟関係の魅力に迫る

更新: 2017年01月05日

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将棋のプロ棋士になるには必ず師匠が必要となるということをご存知でしょうか。正確にはプロ棋士の養成機関である奨励会への入会の際に、必ず四段以上の棋士が師匠となることが必須となっているため、すべての棋士には必ず師匠がいるのです。現代社会において希少な師弟関係が将棋界には残っています。最近急増中の観る将棋ファンの中には特に将棋界における師弟関係に注目したり、そこに魅力を感じている方も多数いらっしゃいます。今回は将棋界における師弟関係についてご紹介していきます。

師匠は身元保証人? 奨励会・研修会の入会時の師匠の役目とは

棋士を目指して奨励会に入会する場合、また女流棋士を目指して研修会に入会する場合には、規定で必ず四段以上のプロ棋士(日本将棋連盟正会員)からの推薦を得ることが必要となっています。奨励会・研修会入会時に誰に師匠を頼むかは、さまざまな例がありますが、同じ地元出身の棋士であったり、通っている道場の席主さんの紹介であったり、そもそも師匠となる棋士が幼少期から将棋教室で教えていた、といったケースもあります。

また、弟子のほうから師匠になってほしいと志願の手紙を書いた斎藤慎太郎六段と畠山鎮七段のような師弟の例もあります。そういったいろいろなきっかけがあり、師匠となる棋士が決まります。そして師匠となった棋士は弟子が奨励会・研修会に通う間は身元保証人・後見人という立場を引き受けることになります。

昭和の時代は、弟子は師匠の家に内弟子として入門して修業する例も多かったそうですが、近年ではそういった例はなくなったようです。師匠が弟子に直接将棋の指導をすかどうかも、その師弟関係によります。例えば森下卓九段は師匠の花村元司九段に1000局もの指導対局を受けたそうです。

【参照コラム】1000局もの指導対局で培った直感力。森下卓九段に聞いた、師匠花村元司九段との思い出(1)

羽生善治三冠は師匠の二上達也九段にはほとんど指導を受けたことがなかったそうです。弟子を信頼して自由にその才能を伸ばしてあげる、という方針だったようです。そういった師弟ごとの関係性の違いなどもまた、棋士のファンにとっては注目すべきポイントとなっています。

同じ師匠を持つ「一門」という関係性の魅力

同じ師匠を持つ弟子同士とその師匠を合わせて一門と呼びます。棋士になった弟子の数が多い一門として高名なのが、西の森信雄七段門下(森一門)と、東の所司和晴七段門下(所司一門)でしょうか。

森一門には(故)村山聖九段を筆頭に、山崎隆之八段、糸谷哲郎八段、増田裕司六段、安用寺孝功六段、片上大輔六段、澤田真吾六段、大石直嗣六段、千田翔太六段、竹内雄悟四段という棋士と、室谷由紀女流二段、山口絵美菜女流1級、石本さくら女流2級という女流棋士がいます。まさに西の大所帯。

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そして所司門下には渡辺明竜王、松尾歩八段、宮田敦史六段、石田直裕四段、石井健太郎四段、近藤誠也四段、大橋貴洸四段と、伊奈川愛菓女流初段、渡辺弥生女流初段がいます。

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一門の棋士の数が多いため、森一門は毎年5月に「森一門祝賀会」を開催しています。将棋イベントを一門だけで開催できるというのも大所帯の森門下ならではです。また所司一門も門下から新しくプロ棋士が誕生すると祝賀パーティーや記念の将棋大会を開催するのが通例となっています。先日も12月10日に「大橋貴洸新四段祝賀パーティー」が盛大に行われていました。

そして同門の棋士同士は兄弟弟子という関係性となります。同じ師匠の下でプロ棋士を目指した者同士という兄弟弟子の関係もまた、棋士のファンにとっては大きな魅力を秘めています。同門の兄弟弟子であり、ライバルでもあるという山崎八段と糸谷八段の仲の良さは特に将棋ファンには有名ですね。イベントや大盤解説会でコンビを組むと、息の合った掛け合いでファンを楽しませてくれます。

門の仲の良さでは石田和雄九段門下も有名です。勝又清和六段を筆頭に、佐々木勇気五段、門倉啓太五段、高見泰地五段、渡辺大夢五段という俊英が同門でありライバルという関係でしのぎを削っています。彼らはみな石田九段が師範を務める柏将棋センターで子供のころから腕を磨いてきたのです。

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西に目を向けると井上慶太九段も名伯楽として知られており、その弟子である稲葉陽八段、菅井竜也七段、船江恒平六段は人気実力ともにトップクラスの棋士として活躍中です。

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こうした将棋界の師弟関係は観る将棋ファンにはたまらない魅力を秘めているのです。

今回は将棋界の師弟関係についてご紹介しました。映画『聖の青春』でも注目されましたが、森信雄七段は村山聖九段を生活面からも親身になって世話をし、その棋士人生を支えてきました。そんな師弟関係が今なお残っている将棋界にファンは惹かれています。棋士ひとりひとりに師匠がいて、そこにはさまざまな師弟関係のドラマがあります。ぜひ今後は棋士の師弟関係にも注目してみてください。そこには数多くの物語があり、それを知った時、きっとあなたはますます棋士のことを好きになるはずです。

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

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