ライター直江雨続
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。
ライター: 直江雨続 更新: 2017年01月24日
『社会人将棋団体リーグ戦』(社団戦)という将棋の団体戦をご存知ですか?東京アマチュア将棋連盟(東将連)が主催している大規模な将棋の団体戦の大会であり、1チーム7名のメンバーを集めればどんなチームでも参加できるのが特徴です。社団戦のチームは同じ将棋教室に通う仲間だったり、高校の時の将棋部のOBの集まりだったり、同じ会社に勤める同僚だったりと、バラエティーに富んでいます。そんな中、今年の社団戦に初出場した『ゲーム業界将棋会』というチームがあります。代表の大野聡さんはスマホアプリ『将棋RPG つめつめロード』のプロデューサーであり、チームのメンバーはゲーム業界でも名のある方ばかり。そんな『ゲーム業界将棋会』の練習会に取材に行ってきました。なぜこの会が結成されたのか、その秘密に迫ります。
2016年8月某日、東京都新宿区、四ツ谷駅から徒歩7分にある「ねこまど将棋教室」に彼らはいました。普段は「将棋教室」や「こども将棋教室」が行われている場所を貸しきって『ゲーム業界将棋会』の練習会が行われていました。
平日の夜ということで、仕事を終えたメンバーが続々とやってきます。ゲーム関係の会社にお勤めの方や、ゲームに出演している声優さんなど、そこには業界では有名な方が何名も。
そして挨拶もそこそこに始まる練習対局。
みなさん真剣そのものです。
メンバーに指導対局をしているのは伊藤真吾五段。この『ゲーム業界将棋会』の師範を務めている棋士のひとりです。
練習対局が終わったところでゲーム業界将棋会の代表を務める大野聡さんにいくつか気になる質問をぶつけました。
――『ゲーム業界将棋会』を立ち上げたきっかけを教えてください。
大野「ニコニコ生放送の人狼番組出演をきっかけに門倉啓太五段と出会い、その縁で私自身が将棋を始めました。そして将棋を始めたことをFacebookに投稿したら、『一緒に将棋しましょう!』と同業の方から思いがけずたくさんコメントがついたんですね。そんなにみんな将棋が好きだったのか、じゃあみんなで集まってやってみようかと思ってこの会を立ち上げました」
――これまでの大会等の実績は?
大野「ねこまど主催の第一回級位者団体戦で優勝しました。今年から社会人団体リーグ戦(6部白)に出場しています」
――普段どのような活動をしていますか?
大野「月に一度集まって練習会をしています。独自のレーティングのシステムで勝敗の記録を管理しています。メンバー強化のために、いろんなゲーム業界の将棋好きをスカウトもしていますよ」
――師範の棋士はいますか?
大野「伊藤真吾五段、門倉啓太五段、香川愛生女流三段に毎月指導いただいております」
――『ゲーム業界将棋会』を作ってよかったと思うことは何ですか?
大野「会社の枠を超えてゲーム業界の横のつながりができたこと。『将棋RPG つめつめロード』の企画が生まれたことです」
――では一番苦労したことは何ですか?
大野「将棋会の場所の確保ですね」
――ライバルチームはいますか?
大野「社団戦で同リーグのねこまどチームです」
――今後の短期的な目標と、長期的な目標を教えてください。
大野「短期的な目標はメンバーを100人にすることですね。現在は48名です。長期的な目標は社団戦リーグ昇格です」
――それでは最後の質問です。大野さんにとって、将棋の魅力って何ですか?
大野「どんな相手でも一局指し終わるとちょっと仲良くなるところですね」『将棋RPGつめつめロード』や12月に公開されたイシイジロウ監督、香川愛生女流三段主演の映画『女流棋士の春』も、このゲーム業界将棋会がきっかけで生まれました。将棋という共通の趣味でつながった『ゲーム業界将棋会』には数々の著名なクリエーターが在籍しています。みなさんにお話を伺うと、ニコニコ動画で放送された『棋士人狼』や『アルティメット人狼』がきっかけで将棋に興味を持った方が多かったです。」
師範を務めている伊藤五段、門倉五段、香川女流三段がゲーム業界に将棋を流行させた立役者だったということが取材を通じてよく分かりました。今後も棋士の皆様にはゲーム業界でますます将棋を広めていただければと願っております。そして将棋の腕も磨きつつ、世の中に新しい作品を生みだそうと日々努力しているゲームクリエイターのみなさんにこれからもぜひご注目ください。
ライター直江雨続