佐藤天VS千田。勝者がポナンザと対戦!叡王戦決勝三番勝負の展望(後編)

佐藤天VS千田。勝者がポナンザと対戦!叡王戦決勝三番勝負の展望(後編)

ライター: 渡部壮大  更新: 2016年12月03日

実力者ぞろいの準決勝

前編に続き、後編では準決勝の模様を振り返っていく。

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準決勝1局目は千田翔太五段と豊島将之七段との対戦。関西若手同士の一戦は、角換わり腰掛け銀から後手の千田が激しく攻めていった。

【図は69手目▲8八玉まで】

図は終盤戦で、△4九飛の王手に▲8八玉と入城した局面。後手としては▲3三桂成を許さず寄せきりたいところだ。

実戦は△8六歩▲同歩△8七歩▲同金に△7八銀が腹銀の手筋で決め手に。▲同玉と取るよりないが、△5八馬と寄った形が受けにくい詰めろだ。以下数手で先手の投了となった。

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佐藤天彦九段(名人)と羽生善治九段(三冠)との準決勝は相矢倉に。後手の佐藤が羽生の攻めに乗じて入玉を狙う長期戦になる。空中要塞を築いた佐藤だが、羽生も執拗に攻めて楽をさせない。「中段玉での激しい攻防が印象に残る」と佐藤。

【図は153手目▲1五香まで】

後手玉は入玉しているが、図は1二の飛車が捕まりそうだ。無条件で最後の大駒を取られるようでは、入玉しても点数負けの恐れが出てくる。ここで△4二銀が強手。▲同銀不成なら△1五飛で飛車が助かる。実戦は▲4二同馬△同飛▲同銀不成に△3八玉▲4四桂△3七銀成で後手玉が安全になり、佐藤の勝ち筋に。以下先手も入玉を目指したが上部脱出は許さず、寄せきって羽生の投了となった。

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角換わり中心の三番勝負

佐藤と千田とは初手合になる。千田が先手の場合、相掛かり模様の力戦、あるいは角換わりが予想される。後手番で横歩取りを主戦場としていた佐藤だが、このところ2手目△8四歩の採用も多い。千田は横歩取りにするよりは、力戦調の相掛かりを好むようだ。

千田が後手なら角換わり腰掛け銀が本命だろう。本戦1回戦の広瀬章人八段戦、準決勝の豊島将之七段戦と後手の△6二金型で快勝している。千田は後手番で2手目△8四歩を採用することが多く、佐藤は先手で角換わりを好んでおり、お互いに避ける理由はなさそうだ。

三番勝負に向けて佐藤は「千田五段とは初手合で、どのような将棋になるのか楽しみです。いつも通り全力を尽くして、ファンの皆さまに楽しんでいただけるような将棋にできればと思っています」と抱負を語った。

決勝三番勝負の勝者は10月に行われた第4回将棋電王トーナメントで優勝したポナンザと、春に行われる第2期電王戦で二番勝負を戦う。昨年は山崎隆之叡王がポナンザに2連敗で敗れている。今度こそ人間側の意地を見せてほしいと期待するファンも多いだろう。

三番勝負の日程、会場は以下の通り。
第1局 12月4日(日) 沖縄県名護市「万国津梁館」
第2局 12月11日(日) 東京都港区「迎賓館和風別館 遊心亭」
第3局 12月18日(日) 山梨県甲府市「常磐ホテル」

沖縄県での対局は第49期王座戦五番勝負第3局以来、約15年ぶりとなる。三番勝負はニコニコ生放送で中継される。3局とも対局日が日曜日で、観戦に適している。人類代表を決める熱い戦いをぜひご覧いただきたい。

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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