ライター飛龍
叡王戦第1局こぼれ話。佐藤天九段と千田五段の席が、対局当日に変わった!?その叡王戦ならではの理由とは
ライター: 飛龍 更新: 2016年12月21日
叡王戦は株式会社ドワンゴが主催する棋戦で、優勝した棋士は将棋電王トーナメントを制したコンピューターソフトと二番将棋を行う電王戦に出場します。今期の決勝三番勝負は名人でもある佐藤天彦九段と、関西本部所属の若手棋士、千田翔太五段の顔合わせになりました。
叡王戦にはタイトル保持者を段位で呼ぶなど独自の決まりがいくつかあり、ニコニコ生放送で中継する対局では、先手になった棋士が画面に向かって右側に座ります。決勝三番勝負は各地を転戦し、12月4日(日)に行われた第1局は、沖縄県名護市の「万国津梁館」で行われました。万国津梁館は東シナ海の名護湾に突き出た部瀬名(ブセナ)岬一帯の「ブセナリゾート」内にある施設で、2000年に九州・沖縄サミット首脳会合が開催され、国際会議や学会の会場、結婚式場などとして利用されています。
対局場は「オーシャンホール」という広い空間を仕切りで分け、対局用の舞台が設けられました。対局者からは、明るい時間帯には窓の外に海が望める、絶好のロケーションです。前日に移動して、夕暮れ後に現地に着くと検分が行われました。実際に舞台が組まれており、本番さながらに両対局者が盤の前に座ります。盤側の机にさりげなく置かれているシーサーが、沖縄らしさを醸し出すアクセントになっていました。机の前には中央に立会人の畠山鎮七段、向かって左に観戦記担当の深浦康市九段、右に記録係の三田敏弘三段が座り、両対局者は駒の感触を確かめたり、照明の具合や室内の温度などを確認したりします。検分の際、佐藤天九段は向かって右側に座っていました。
番勝負の第1局なので、対局当日に振り駒をして先手、後手を決めます。通常、タイトル戦や決勝の番勝負などの第1局では、両対局者が盤の前に着座して駒を並べてから、記録係が上座の棋士の歩を5枚取って手の中でよく振ります。それを広げた白布の上に散らして、表になった歩の数を見て先後を決めますが、叡王戦では先後の結果によって席を入れ替えるのも味が悪いのでしょう。この対局では、舞台の隅に記録係が座り、その近くで両対局者が並んで待機するという珍しい光景が見られました。振り駒の結果が出て、おのおのが先手、後手の席に初めて着くことになります。本局では両対局者が検分とは逆の席に着きました。これも通常では見られない、叡王戦ならではの事柄といえそうです。