指導対局を絶対に受けたほうがいい10の理由。あの憧れの棋士に教えてもらえる!?

指導対局を絶対に受けたほうがいい10の理由。あの憧れの棋士に教えてもらえる!?

ライター: 直江雨続  更新: 2016年12月06日

みなさんは、プロ棋士の指導対局を受けたことはありますか? タイトル戦の現地イベントや各種将棋イベント、将棋まつりなどではほぼ毎回指導対局のコーナーがあるので、受けたことはないけど、指導対局というものがあるということを知っている方も多いかと思います。今回のコラムではプロ棋士の指導対局を受けることのメリットを10個ご紹介します。

1.たくさん褒めてもらえる

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プロ棋士の指導対局を受ける一番のメリットは、なんと言っても「たくさん褒めてもらえる」ことではないでしょうか。なにしろこのご時世、普通に生活していたのでは、なかなか他人から手放しで褒めてもらえることは少ないです。そこでプロの指導対局です。

一生懸命考えて指した一手を「いい手ですね」と褒めてもらえた時の喜び、一局指し終えて「よく勉強していますね」「前より強くなってますね」などと言ってもらえた喜びは、何物にも代えられません。ましてや勝たせていただいた時には天にも昇るような気持ちになります。

指導対局での褒め上手なプロ棋士としてよく知られているのが、森下卓九段や井上慶太九段でしょうか。将棋ファンの中には森下九段の指導対局を「カウンセリング」と呼んでいて、「元気になるために」定期的に指導を受けに行く、という方もいらっしゃいます。指導対局を受けてたくさん考えて、たくさん褒めてもらうことで、日常生活でたまったストレスを吹き飛ばしちゃいましょう。そして将棋をもっと好きになる。これって素敵なことだと思いませんか。

2.強くなるための考え方や大局観が身に付く

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将棋が強くなるためには、自分より強い人と指して、強い人がどんなふうに考えているか、どんなことを考えてその手を指すかを教えてもらうことがとても有効です。「どんな手がいい手なのかわからない」状態でいくら指しても、時間ばかりかかって成果が得られません。「こういう局面ではこんなふうに方針を立てて考えるんですよ」「ここではこういう手がいい手になります」といったアドバイスをしてもらうことで、強くなるための考え方の軸ができます。プロに教わっていい手は褒めてもらい、悪い手は指摘してもらうことで、自然と指が本筋の手を覚えてくれます。

特に大人になってから将棋を覚えようと思っている方は、独学で勉強するのではなく、まずは指導対局で強くなるための考え方をしっかりと教えてもらうことで、上達のスピードが全然違ってくると思いますよ。

3.自分の棋力に応じた指導を受けられる

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指導対局はほとんどの場合プロ棋士側がハンデを付けるために駒を落とす、駒落ちというやり方で行われます。飛車と角がいないなら二枚落ち、そこからさらに香がいなければ四枚落ち、さらに桂馬も落とすと六枚落ち、銀も落として八枚落ち、金も落として王様と歩だけなら十枚落ちです。

将棋を始めたばかりなら十枚落ちからスタート。強くなるにしたがって、どんどん落とす駒の数を減らしていきます。腕自慢の方には飛車落ちや角落ちという駒落ちの手合いもあります。つまり、今の自分の棋力にぴったりのハンデを付けてもらえるんです。これにより、平手(ハンデなし)なら絶対勝てないプロ棋士ともいい勝負ができるし、勝つか負けるかのスリリングな対局を楽しむことができます。この駒落ちという仕組みこそが指導対局を楽しむための素晴らしい先人の知恵なのです。

4.定跡を知らなくても教えてもらえる

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指導対局を受けるのを躊躇している方に理由を聞くと、「駒落ちの定跡を知らないから...」と答える方が多いです。定跡どおりに指せないと指導対局を受ける資格がない、というルールなんてありません。そもそも、将棋にはこの通りに指さなければいけない、なんてわかりやすい正解は無いのです。正解がないから面白いのが将棋です。

『指した手が最善手』なんです。

特に指導対局では勝つか負けるかはそれほど重要ではありません。だから、堂々と自分で考えて自分の思いついた手を指せばいいのです。その上で、定跡を知らないけど、定跡の通りに指してみたいなら、その場で教えてもらえばよいのです。何も難しいことはありません。頻繁に指導対局を行っているプロ棋士は一通りの駒落ち定跡をマスターしていますので、遠慮なく質問して、手順やその手の意味を聞いてみてください。むしろ独学で定跡を勉強するよりも、その方がすんなり覚えられるかもしれませんよ。

5.感想戦でアドバイスをもらえる

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指導対局に限らず、将棋が強くなりたいなら、対局が終わった後にきちんと感想戦を行うのが1番です。特に指導対局の感想戦は、プロの目から見てどこがよかったか、どこが悪かったか、ポイントとなる急所の局面がどこにあったかも含めて、的確なアドバイスをもらうことができます。また、自分が悩んだり、迷っていたところでどう指せばよかったのかを質問することも大切なことです。どう指せばよかったか、そしてその理由は何か。自分が納得できるまで教えてもらいましょう。そうして、次は同じような局面でそのことを思い出して改善していけばよいのです。

6.好きな棋士と指せる

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実はこれが指導対局を受ける一番の動機になっているという将棋ファンも多いのではないでしょうか。棋士とファンの距離が近いことは将棋の大きな魅力のひとつです。例えば、野球ファンがプロ野球のスター選手とキャッチボールをする機会なんてそうそうありませんよね。

でも、将棋界ではそれができてしまうんです。憧れの棋士と将棋盤を挟んで実際に将棋が指せるんです。最近増えている『観る将棋ファン』の中には、憧れの先生ともっとお近づきになりたいという動機で指導対局をたくさん受けて、そして結果としてあっという間に将棋が強くなってしまった、という方もたくさんいます。

7.棋士の指導方法の違いを楽しめる

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将棋ファンの中には、指導対局を受けたことがある棋士の数が数十人、中には100人以上という方もいます。この場合、棋力や手合いはそれほど重要ではありません。六枚落ちでも四枚落ちでも、とにかくたくさんの棋士と指す経験がファンにとっての楽しみなのです。

そうなると序盤で同じような手順に進んでも、棋士によってはさまざまな工夫や新手があったり、あるいは感想戦での褒めてくれるポイントが違っていたりと、そのバリエーションを楽しむこともできます。指導対局を受けた際にはサインをもらったり、記念写真を撮ったりして、それをコレクションするというのも楽しみ方のひとつです。また、そもそも指導対局に対するスタンスや厳しさも棋士によっては違っていたりします。絶対に手を抜かずに全力で下手を負かしに来る棋士もいれば、そうでない棋士もいます。

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例えば、上野裕和五段は指導をする際に「天使モード」「普通モード」「鬼モード」という3つのカードを選ばせてくれます。厳しく指してもらうか、優しく指してもらうかをあらかじめ選んだうえで指導対局を受けることで、安心して指すことができますね。

8.棋譜を取っておけばいつでも振り返ることができる

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指導対局を受ける際に、せっかくですから、棋譜を残してみてはいかがでしょうか。スマートフォン用の将棋アプリの中には、棋譜を取ることができるものもあります。指導対局が終わった後、ちょっと時間をおいて自分の指した将棋を振り返ってみると、その時は思いつかなかった手や、また別の作戦が見えてくることもあります。その場での感想戦も大事ですが、自分の指した将棋を後日振り返ってみることも、将棋が強くなるための大切なトレーニングです。

また、最近の将棋ソフトは一手ごとの形勢判断や評価値グラフを出してくれるものもあります。棋譜を取っておけば、そういったソフトの解析を参考にすることもできますし、振り返りの際には有効ですね。また、なによりも自分が快勝した将棋の棋譜を振り返ることで、その時の感動やプロ棋士に褒めてもらった言葉、嬉しかった気持ちがよみがえってきます。落ち込んだ時は、そっとスマホを開いて、あの時の快勝譜を並べてみる。そんな気分転換にも使えますよ。

9.指導対局を受ける日が待ち遠しくなる

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先が見えない世の中、日々の生活を不安に過ごしている人も多いご時世です。でも、そんな中でもこの先の予定に楽しみなことがあれば、それに向けて毎日を頑張って過ごそう、と思えるものです。指導対局を受ける予定を立てましょう。そしてそれに向かって少しでもいいので、将棋の勉強をしたり、詰将棋を解いたりすると、生活に張り合いが出ますよ。

指導対局を受けて、元気をもらうことを日常生活のルーティンにしてしまえばいいのです。カラオケに行って大声で歌うことでストレス解消になるように、指導対局を受けて頭をフル回転させて、汗をかくくらいに一生懸命考えることも、日常のストレスを吹き飛ばしてくれます。そして、また次の指導対局を受ける日を楽しみに日々を過ごせば、気が付くと将棋も強くなっていて良いことづくめです。

10.成長を実感できる

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指導対局を定期的に受けることで、成長を実感できるというのも、大きなメリットです。人生はRPG(ロールプレイングゲーム)のようにわかりやすくレベルが上がったりはしませんが、将棋では級位が上がったり、同じ先生に教わるのでも八枚落ちだったものが六枚落ちになったりと目に見える形でレベルが上がっていきます。これは非常に励みになります。

また指導対局をする先生によっては一大イベント「○枚落ち卒業試験」を設定してくれる場合もあります。『本気の先生に勝てたら六枚落ち卒業』なんて、RPGのクエストのようでワクワクしますね。もちろん、その試練をクリアした喜びは、大人になればなるほど大きなものかもしれません。いくつになっても成長を実感できる喜びは生きていくうえで欠かせないものです。

最後に、指導対局を観戦するときのマナーの話

最後にちょっとだけマナーについての補足を。と言っても指導対局を受ける側の話ではありませんのでご安心を。指導対局を受けている人への周囲からの「助言」はマナー違反です。観戦していてついつい口を出したくなる気持ちもわかりますが、やらないように気を付けましょう。

そもそも助言は指導対局に限らず将棋において最大のご法度です。また、対局が終わった途端、先生との感想戦が始まる前に外からあれこれ指摘してくる方もいますが、これもやめておきましょう。他にも感想戦で先生から「ここではどうすればよかったと思う?」と聞かれて、一生懸命考えているのに外野が答えを言ってしまうのもマナー違反です。みんなが気分よく指導対局を受けられるように観戦する側も心配りすることが、将棋ファン・指導対局ファンを増やすためにも大切なことと思っています。

プロ棋士の指導対局を受けるメリットをご紹介しました。もちろん指導対局には今回ご紹介した以外にもたくさんのメリットや楽しみ方があります。自分なりの楽しみ方やこの人にずっと教わりたいと思える棋士を見つけることもまた、素敵なことですね。

指導対局は各地の将棋イベントで不定期に受けられるものと、全国にある将棋道場や将棋教室などで定期的に受けることができるものがあります。将棋連盟HPのイベントページでチェックしたり、お近くの将棋教室を探してみてはいかがでしょうか。一度、指導対局の楽しさを知ってしまうと、人生観、変わるかもしれませんよ?

直江雨続

ライター直江雨続

フォトグラファー/ライター。
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。

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