ライター直江雨続
2007年ごろよりカメラを片手に将棋イベントに参加してきた『撮る将棋ファン』。
この10年間で撮った棋士の写真は20万枚以上。
将棋を楽しみ、棋士を応援し、将棋ファンの輪を広げることが何よりの喜び。
『将棋対局 ~女流棋士の知と美~』や女子アマ団体戦『ショウギナデシコ』で公式カメラマンを務める。
ライター: 直江雨続 更新: 2016年10月05日
『大盤解説会』という言葉をご存知ですか? 将棋の対局を多くのお客さんにも見えるように大きなサイズの盤と駒を使って動かして見せ、手の意味やどちらが勝ちそうかという形勢などを棋士が解説するイベントです。タイトル戦や将棋まつりなどの時に頻繁に行われています。
今回はそんな大盤解説会をおすすめする10個の理由を紹介します。
なんと言ってもこれが一番のメリットでしょう。
多くの場合、大盤解説会は解説者(その将棋の内容をお客さんに解説してくれる役)と聞き手(解説者が話しやすいように質問をしたり、合いの手を入れる役)の二人で進行します。解説者はプロ棋士、聞き手は女流棋士が務めることがほとんどです。プロ棋士のファン、女流棋士のファンにとって、大盤解説会は、その人に会いに行けるまたとないチャンスなのです。
普段は紙面越し、モニター越しに見ていた憧れのあの棋士の姿を生で見て、その声を間近で聞けるのです。ファンならばそれだけでも、大盤解説会に足を運ぶメリットになりますよね。同じ会場であの棋士と同じ空気を吸った、というだけで、香車1枚分くらい将棋が強くなった気がします。
「初心者だけど、大盤解説会に行っても大丈夫かしら?」そんな心配をしている方も多いです。近年はどんどん将棋ファンが増えてきて、大盤解説会にも初心者の方が多数来場するようになりました。解説の棋士も、そのあたりの事情はちゃんとわかっていますので、将棋をあまり知らない方、ほとんど指さない方でも理解できるように、わかりやすい解説をしてくれます。聞き手の女流棋士も、難しい解説の時はちゃんとフォローをいれてくれます。
解説者が実戦で指された一手の意味や、ほかの候補手をなぜ指さなかったのかなど、対局者の心理や棋風にまで踏み込んで解説してくれることもありますので、聞いているだけでも自分がプロ棋士になったような気持ちで、一局の将棋を観て楽しめるのです。そうして大盤解説会をじっくり楽しむことで、角1枚分くらい将棋が強くなったような満足度を得ることができますよ。
解説者の棋士が対局中の棋士と仲良しだったり、過去にたくさんの公式戦を戦っていた場合など、その人だからこその裏話が聞けることがあります。ファンサービス旺盛な解説者だとお客さんを喜ばせるために秘蔵のエピソードを話してくれることも多いですよ。対局者の好きなおやつや食事の話など、将棋の指し手とは関係ないところで、ついついトークが盛り上がったりすることもあります。
棋士のプライベートでのエピソードなど、ここだけでしか聞けないいろいろな情報が手に入りますよ。「この話はTwitterなどに書かないでくださいね」などと前振りして解説者が話した時には、みなさんぐれぐれも内密に。。。
大盤解説会では、ほぼ毎回「次の一手クイズ」というのをやります。対局者が長考した時など、この次に指す手をお客さんが当てるというクイズです。多くの場合、解説者が候補手をあげて3択クイズにしますので、たとえ棋力0でも大丈夫。そうして次の一手クイズに正解すると、正解者の中から抽選で豪華景品が当たるというのが定跡手順です。
景品は「扇子」「サイン色紙」「棋書」などなど。中にはタイトル戦で実際に使用された『封じ手用紙』が景品に出されたこともあります!
一人で棋譜中継を見ていて「うわーすごい手が出た!」と思わず声にだしてしまい、冷静に周りを見まわしたことはありますか? せっかくのすごい将棋をひとりで見ていても、感動を共有する相手がいないとちょっとだけ寂しいものです。
でも、大盤解説会はその点大丈夫! 周りにいるのは全員将棋ファンです。なにより解説者と聞き手がすごい手が出たら真っ先にリアクションしてくれるのです。「これは! すごい手が出ました!」と解説者がびっくりしたら、会場中も騒然となります。そうやって思う存分ざわざわしましょう。
妙手に驚き、負けそうなほうが必死に粘るのを応援し、勝った棋士には大きな拍手を送る。お客さんみんなでライブ感、一体感を味わいながら、観戦するのも大盤解説会の醍醐味の一つです。
解説会では休憩時間などもあり、タイミングが合えばそこで棋士の先生に声をかけてちょっとお話をする、ということもできる場合があります。あるいは解説会が終わった後に、棋士が会場に残ってお客さんをお見送りしてくれる時もあるんです。
そんな時、好きな棋士に「ファンです」の一言や日頃応援しているということを伝えることができれば、それだけでもファン冥利に尽きますよね。
大盤解説会はイベント主催者側の判断で、写真撮影がOKという場合もあります。お手持ちの携帯電話やスマートフォンで、あるいは一眼レフなどの良いカメラをお持ちならぜひそれを持参して棋士の写真を撮りましょう。
当日イベントに参加した記念になりますし、もしSNSなどをしているなら、写真をアップしてイベントの様子をレポートすれば、当日来られなかったファンにも喜んでもらえますよ。ただ、多くの場合写真撮影はOKでも動画の撮影はNGですので、その点は気を付けましょう。
大盤解説会によっては、終了後に解説者、聞き手のサイン会を開催する場合もあります。好きな棋士のサイン色紙や直筆扇子をゲットできるまたとないチャンス!サインを書いてもらっている間は棋士とお話もできますし、色紙を持って記念撮影をお願いできる場合があります。解説会に行って、さらにサイン会にも参加できたらなんだか得した気分になれますね。
大盤解説会に集まるのはみんな将棋好き。たまたま隣同士になった人と、好きな棋士のことで意気投合してすっかり友達に...。
なんてことが、結構あります。近年TwitterなどのSNSが盛んですが、将棋ファンの多くもTwitterなどで日々将棋や棋士について呟いたり、情報交換をしたりしています。そこから貴重な友人ができたり、将棋の輪が広がったりします。大盤解説会は将棋友達を作れるまたとない機会になっているんです。
千駄ヶ谷の将棋会館での解説会に行くと、大体の場合終わった後には将棋友達と打ち上げに行きます。棋士御用達の「将棋めし」の店に行き、食事休憩の時の出前のメニューと同じものを食べるのも一興ですよ。みろく庵で「肉豆腐定食」を食べたり、ほそ島やで「カレーライス」を食べたり、ふじもとで「うな重」を食べたり。他にもタイトル戦の現地解説会に行ったときなどは地元の名産品を食べて帰るのも良いですね。デパートなどで開催されている将棋まつりに行ったときは、そのデパート内の飲食店で打ち上げをして、お金を落とすのもファンの心得です。
以上、大盤解説をおすすめする10個の理由をご紹介しました。
将棋には自分で指す楽しみのほかに、観る楽しみもあります。特に大盤解説会は観る将棋ファンなら絶対に行って損のないイベントです。棋力が低いからとか、ファンになってまだ日が浅いからとか、そんなことを言い訳にして行くのを躊躇するのはあまりにももったいない!
後悔先に立たず。
「過去のイベントには絶対に行けない」
「将棋のイベントに行かなくて後悔したことはあっても、行って後悔したことはない」
という将棋ファンの名言もあります。
それではみなさん、大盤解説会でお会いしましょう!
ライター直江雨続