藤井が防衛に迫る 7月下旬の注目対局を格言で振り返る

藤井が防衛に迫る 7月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2025年08月14日

 王位戦七番勝負は藤井聡太王位が一気の3連勝で防衛まであと1勝と迫っています。また、休場の明けた渡辺明九段は、復帰戦を見事に白星で飾りました。

伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦七番勝負第3局

【第1図は▲4八角まで】

 第1図は伊藤園お~いお茶杯第66期王位戦七番勝負第3局(▲永瀬拓矢九段△藤井聡太王位)。難解な中盤から、後手が抜け出すチャンスを迎えました。△5六歩が軽妙手で、▲同金なら△4七銀不成が厳しくなります。受けが難しいので▲7五歩と攻め合ったものの、△5七歩成で「5三のと金に負けなし」の形が実現しました。以下も落ち着いて差を広げ、藤井王位が3連勝としています。

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写真:牛蒡

大成建設杯第7期清麗戦五番勝負第2局

【第2図は△3四歩まで】

 第2図は大成建設杯第7期清麗戦五番勝負第2局(▲福間香奈清麗△渡部愛女流四段)。先手は駒損ですが、後手の歩切れも大きいところです。▲7七桂が「遊び駒は活用せよ」で、この桂がさばければ駒損もカバーできます。△6八角成と馬を作りましたが、▲2六飛が歩切れを突く王手。以下△2三金で陣形が弱体化したのを見て、▲6三銀成△同金▲5二銀とラッシュを掛けました。

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写真:飛龍

第38期竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局

【第3図は△8一飛まで】

 第3図は第38期竜王戦挑戦者決定三番勝負第1局(▲石田直裕六段△佐々木勇気八段)。前期挑戦者の佐々木八段と、4組から勝ち上がった石田六段の挑戦者決定戦となりました。方針の難しい中盤ですが、▲5六歩が「歩越し銀には歩で対抗」の好着想。△4一飛に▲5五歩で銀を目標にします。実戦は△5五同銀に▲6八角がうまい対応で、5五の銀が助からずに先手ペースとなりました。しかし勝負手を連発し、結果は後手の逆転勝ち。佐々木八段が連続挑戦まであと1勝としています。

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写真:紋蛇

第84期順位戦A級1回戦

【第4図は▲8一飛まで】

 第4図は第84期順位戦A級1回戦(▲佐々木勇気八段△渡辺明九段)。休場していた渡辺九段の復帰戦です。飛車で王手をされていますが、△5一歩が「金底の歩、岩よりも堅し」で後手玉には響きません。▲9一飛成と香を補充しましたが、△5七桂から自然に攻めて後手勝勢となりました。ブランクを感じさせず、渡辺九段が白星発進です。

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写真:琵琶

第19回白瀧あゆみ杯争奪戦決勝戦

【第5図は▲6九玉まで】

 第5図は第19回白瀧あゆみ杯争奪戦決勝戦(▲八木日和女流2級△岩崎夏子女流2級)。初優勝を懸けた決勝戦は角換わりから早い戦いになりました。ここで△6五馬が「馬は自陣に引け」のピッタリした受け。▲5二歩成△同金▲5三金としがみつきましたが、△5四馬▲同金△2九飛で玉の安定度に差があり、後手勝勢です。岩崎女流2級はこの日が誕生日で、嬉しい初優勝となりました。

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写真:文

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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