ライター諏訪景子

新棋戦「トーヨーカネツ杯第1回関西女流新鋭戦」の見どころはここだ!
ライター: 諏訪景子 更新: 2025年06月09日
−−新しい女流棋戦「トーヨーカネツ杯第1回関西女流新鋭戦」(非公式戦)について、専務理事の脇謙二九段、常務理事の井上慶太九段にお話をうかがいます。どのような経緯で開催されることになったのでしょうか。
井上「ある棋士の紹介で、トーヨーカネツさんから将棋界を応援したいとお申し出をいただきました。テレビで横浜ベイスターズの試合を見ていてスタジアムに広告を出しているのは知っていましたけど、大きな会社ですよね。天然ガスや原油の備蓄用タンクの製造に実績があり、また物流部門では、空港の手荷物搬送システムで国内で8割以上のシェアを誇るそうです。初めにお話をうかがったのは昨年の秋くらいでしたかね」
脇「そうですね。トーヨーカネツの専務が観る将とおっしゃっていました。でも指すほうもしっかりと指されていましたよね」
−−では初めから女流棋戦を、ということではなかったのですね。
井上「トーヨーカネツさんの工場がある和歌山県有田市で何か開催できないかと考えていたので将棋まつりのようなイベントも考えていたのですが、話し合っているうちにかつて開催されていた『きしろ杯女流メイショウ戦』(2005年〜2008年。非公式戦)のような棋戦を開催して、準決勝と決勝を有田市で行うということになりました」
脇「主なアイデアは井上さんが出してくれたんですよ。どういう方に出てもらうのがいいかなど。きしろ杯は関西の全女流棋士でしたけど、当時と比べると女流棋士が増えましたので、今回は女流初段以下の若手限定で。でもゆくゆくは休止しているYAMADA女流チャレンジ杯のような、東京所属の方も含めた若手女流棋戦にしていきたいですね。
日程については、橘家さんで準決勝と決勝を開催するのが大前提で、そこ(8月31日)から逆算したので発表から間もないですが、6月に1回戦と2回戦を行うことになりました」
井上「橘家さんにも私たちで下見に行ったんですよ。あれはいつでしたっけ」
脇「春ですよね。対局室と大盤解説会場は別の階なので音は気にしなくていいし、昔のタイトル戦を思い出すような雰囲気の場所でした」
−−橘家は、駅から近いところですよね。
脇「紀伊宮原駅から歩いて2〜3分じゃないでしょうか。特急は停まらないですが」
井上「特急が停まる箕島駅が隣(※)なので、タクシーで移動してもいいですね」
(※)箕島駅からは5kmほどの距離
−−1回戦と2回戦は6月15日(日)と29日(日)に関西将棋会館で行われます。大盤解説会も行われて、出場する女流棋士には大きな励みとなるのではないでしょうか。
脇「そうですね。どなたが勝ち残るのか、全く想像がつかないですね」
井上「女流初段以下に絞っているので、女流初段の方が有力なのかなとは思います」
脇「実績だと、女流名人戦や女流王位戦でリーグ入りしている今井絢さんが一番でしょうか。でも持ち時間が短いので(各20分、使いきると1手30秒未満の秒読み)、何が起こるかわからないですよね。あとは佐々木海法さん。こないだの倉敷藤花戦では中七海さんにもう一息で勝てるところまで行きました。若手女流の皆さんは研究会もよくやっていて、みんなで切磋琢磨していますよね」
井上「あとは新人の八木日和さん。非常にきびきびした将棋で、これから注目の女流棋士です」
脇「誰かひとりは必ず優勝するわけだから、飛躍のきっかけにしてほしいですね」
井上「あとは研修会B2の吉川惠さんと壽希乃香さんに参加していただくことになりました。今回の持ち時間はアマチュアの方のほうが慣れていると思いますので、おふたりがどれくらい戦えるかも楽しみです」
−−その早指しも棋戦の魅力のひとつですね。
脇「スピーディーな戦いで、女流棋士の新しいスターを見つけに、大盤解説会に来ていただければと思います」
−−1回戦・2回戦は関西将棋会館の4階で対局を行って、2階で大盤解説会を開くとうかがっています。それぞれの対局の見どころを教えていただけますか。
井上「15日の佐々木海法初段-榊菜吟女流2級は振り飛車党同士ですが、佐々木さんが居飛車にする可能性もありますか」
脇「佐々木さんは対抗形も好むイメージがありますね。山口稀良莉女流初段-壽希乃香アマは、壽さんが居飛車党だそうです。こちらも対抗形でしょうか」
井上「棋譜を見る限りでは本格的な居飛車党というイメージがあります」
脇「今井絢女流初段-久保翔子女流1級ですか。これは対抗形ですよね。久保さんに思いきってぶつかってほしいですね」
井上「久保さんは結構一発がありますからね。何があるかわかりませんよ。そして、山口仁子梨女流1級-岩佐美帆子女流1級はふたりとも居飛車党ですか。同じ東海地区なので何度も指しているのでしょうね」
−−おふたりは同じ高校(岐阜県・鶯谷高校)の先輩、後輩です。
脇「じゃあ手の内はわかっているということですね。29日の木村朱里女流初段-吉川惠アマですが、木村さんは連盟でよく研究会を指していますよね」
井上「木村さんは振り飛車党ですよね」
脇「吉川さんも振り飛車ですか。相振り飛車になるのでしょうか。木村さんは内容を見るともっと勝ってもおかしくない将棋ですが、なかなか結果が伴わないですね。ここで力を発揮するでしょうか」
井上「川又咲紀女流初段-崎原知宙女流1級は相振り飛車必至ですね」
脇「必至、ですか」
井上「必至でしょう。女流の皆さんは相振り飛車を得意にしている方が多いですよね。私も相振り飛車を指しますが、よく女流棋戦の棋譜で勉強させてもらっています」
脇「藤井奈々女流初段-八木日和女流2級も楽しみですね。八木さんは木村さんと同門(小林健二九段門下)・同学年だそうです。居飛車党ですね」
井上「穴熊も指しますが、藤井さんが何を指すか。中飛車かな」
−−研修会から女流棋士になるのが現行のB1クラス昇級になってからは、まだ八木女流2級しか上がっていませんね。
脇「制度が変わってすぐには、なかなか上がれませんからね。でも少し時間がたてば規定をクリアする人は増えていくと思います。あとは松下舞琳女流初段-森本理子女流1級ですか。松下さんも女流順位戦でC級に昇級を決めるなど、本当に期待される若手です」
井上「森本さんは、棋風が脇さん好みというか、似ていますよね」
脇「棋譜を見ると強いと感じました」
−−どの対局も見どころがあり、対局が終わったあとすぐに大盤解説会での感想を聞けるのも楽しみですね。
井上「多くの方に会場にお越しいただきたいですね」
「トーヨーカネツ杯第1回関西女流新鋭戦」に特別協賛(トーヨーカネツ株式会社 お知らせ)2025.6.2.
https://www.toyokanetsu.co.jp/info/2025/0602/000896.html
「トーヨーカネツ杯第1回関西女流新鋭戦開催」のお知らせ(公益社団法人日本将棋連盟)2025.5.21.
https://www.shogi.or.jp/event/2025/05/1_64.html
「トーヨーカネツ杯第1回関西女流新鋭戦予選大盤解説会」(関西将棋会館インフォメーションページ)
https://www.kansai-shogi.info/
