ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2024年10月03日
昨年は終盤のドラマがあり、八冠達成の快挙がなされた王座戦。今期はリターンマッチとなりました。また、秋の女流タイトル戦の挑戦者が続々と決まっています。
【第1図は▲7九玉まで】
第1図は第72期王座戦五番勝負第1局(▲永瀬拓矢九段△藤井聡太王座)。昨年とは立場を入れ替えてのシリーズとなりました。後手は銀を繰り出して一歩得に成功しています。目的を果たしたので、△5五銀▲8八玉△6四銀と「銀は千鳥に使え」で自陣に引き戻しました。この銀はよく動いていますが、すべて斜めに動き、この後に△7四歩から△7五銀とぶつけてさばいていきました。開幕戦は藤井王座が制し、初防衛に向けて好スタートです。
写真:文
【第2図は▲5五歩まで】
第2図はヒューリック杯第4期白玲戦七番勝負第2局(▲西山朋佳白玲△福間香奈女流五冠)。力勝負から駒得に成功した後手が優勢です。△8九角が好手で、▲9七飛△5六角成▲7二銀△5三金▲8一銀成△6五馬▲8二成銀△6四馬で自陣の嫌みをすべて解消。後手は居玉ですが、「馬の守りは金銀3枚」とも言われるように強力な守備陣で、負けのない形を作り上げました。七番勝負は1勝1敗で、今年も激戦の予感です。
写真:武蔵
【第3図は▲6六銀打まで】
第3図は第14期リコー杯女流王座戦挑戦者決定戦(▲香川愛生女流四段△西山朋佳女流三冠)。大駒の働きに差があり、形勢は後手良しですが、攻め駒が少ないのは気掛かりです。△3三桂が「遊び駒は活用せよ」の好手。この桂を使えれば攻めが一気に手厚くなります。3三の桂は最後に△5七桂成と飛び込む活躍を見せて、後手が押し切っています。
写真:紋蛇
【第4図は△1八飛成まで】
第4図は霧島酒造杯第46期女流王将戦挑戦者決定戦(▲福間香奈女流五冠△伊藤沙恵女流四段)。竜は作られたものの、駒得が大きく先手良しです。「三歩持ったら端に手あり」で、▲9五歩が厳しい端攻め。△同歩に▲9三歩と垂らし、△同香には▲9四歩△同香▲8六桂があります。実戦は▲9三歩に△8四歩と端を緩和しましたが、▲9五香△8三銀▲9九香と端を攻め立てて、先手好調の流れです。
【第5図は△3一飛まで】
第5図は大山名人杯第32期倉敷藤花戦(▲伊藤沙恵女流四段△西山朋佳女流三冠)。▲2二馬と飛車に当てる手も見えるところですが、▲6六馬が「馬は自陣に引け」の手厚い指し回し。この後は馬の力を駆使して盤面を制圧。手数は掛かりましたが、先手が押し切っています。室谷由紀女流三段との挑戦者決定戦は室谷女流三段が産休により、伊藤女流四段の不戦勝。第27期以来の挑戦を決めました。
写真:康太
【第6図は▲3二とまで】
第6図はABEMAトーナメント2024決勝第7局(▲増田康宏八段△稲葉陽八段)。2年連続でチーム永瀬とチーム稲葉の決勝戦となりました。△7一玉が「玉の早逃げ八手の得」の実戦的な指し回し。このままだと8二に駒を打たれて、自玉が危険になる可能性がありました。以下も▲4二と△9三桂から激戦が続きましたが最後は先手に見落としがあり、稲葉八段が勝利。5勝2敗で前年の借りを返しています。
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段