ライター玉響
5連覇か、初の王位か―伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負展望
ライター: 玉響 更新: 2024年07月05日
藤井聡太王位に渡辺明九段が挑戦する伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦七番勝負の開幕が迫ってきた。両者によるタイトル戦は、昨年5月に閉幕した名人戦以来、6回目。その注目の番勝負を展望する。
【永世王位が懸かるシリーズ】
藤井王位は6月20日に叡王を失冠し、八冠の一角を崩された。しかし、続く7月1日にはヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負で防衛を果たし、棋聖戦5連覇を達成。自身初の永世称号となる「永世棋聖」の資格を獲得した。これで悪い流れを断ち切ってから王位戦七番勝負の開幕局に臨める。
藤井王位はこれまで木村一基九段、豊島将之九段(計2回)、佐々木大地七段の挑戦を退けて4連覇中。今期の王位戦七番勝負も永世称号が懸かったシリーズになる。渡辺九段との対戦成績は、藤井王位が20勝4敗と圧倒している。星取りを見ると、まだ2連敗を喫したことがないのだから恐ろしい。
6月に行われた開幕前のインタビューでは、渡辺九段の印象について「一局の流れをコントロールする力、戦っていくなかで、うまく勝ちやすい形に持ち込む技術にたけている。今回の王位リーグと挑戦者決定戦でも、そういった展開が多かったのかなと思う」と語った。
そして作戦巧者の渡辺九段に対し「こちらが序盤で対応できるかがポイントになる。そのためにもしっかり準備して、面白い将棋を1つでも多くお見せできれば」と抱負を述べている。
写真:武蔵
【初の王位戦七番勝負】
挑戦者の渡辺九段は、意外にも今期が王位戦七番勝負初登場。挑戦者決定リーグ白組を4勝1敗で単独優勝し、挑戦者決定戦で斎藤慎太郎八段を破って挑戦権を獲得した。
渡辺九段は戦前のインタビューで「藤井さんとの最初のタイトル戦は、まだ藤井さんがタイトルを持っていない段階だった。いまでは絶対的な存在なので、そこにどう挑むかというシリーズになる。タイトル戦は1年ぶりだが、始まってしまえば今までやってきた延長線というところもある。(藤井王位との番勝負では)いままで結果が出せていないので、その違いをどれだけ出せるか」と語った。
写真:文
【図は56手目△7四銀まで】
図は挑戦者決定戦の対斎藤八段戦。ここで▲5四飛が豪快な一着だった。以下△同歩に▲4四角で攻めが続く。以降は渡辺九段が着実に得を積み重ねて、最後は冷静に着地を決めた。
【挑戦者の戦型選択に注目】
藤井王位は先後問わず角換わりを志向する傾向にある。角換わりは想定局面に誘導しやすい性質上、事前研究が重要なファクターを占める戦型だ。
一方で、渡辺九段は先手番で相掛かりと矢倉も指し、変化球として雁木を採用することがある。研究勝負にするのか、あるいは構想力が問われる将棋に持ち込むのか、挑戦者の戦型選択に注目したい。
第1局は7月6日(土)から7日(日)にかけて、愛知県名古屋市「徳川園」で行われる。