ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2024年06月21日
山崎隆之八段の15年ぶりのタイトル挑戦が始まりました。A級順位戦は開幕戦から大熱戦となりました。
【第1図は▲2九飛まで】
第1図はヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負第1局(▲山崎隆之八段△藤井聡太棋聖)。永世棋聖の懸かる藤井棋聖と、15年ぶりのタイトル挑戦の山崎八段によるシリーズです。相掛かりから後手が積極的に自玉頭から戦いを起こしました。△6三角が「遠見の角に好手あり」の継続手。▲3六歩にも△3五歩▲同歩△同銀とこじ開けにいって後手の攻めが止まりません。自陣角から攻めを的確につなぎ、防衛に向けて快勝スタートになりました。
写真:琵琶
【第2図は▲7七同金まで】
第2図は第83期A級順位戦1回戦(▲永瀬拓矢九段△佐藤天彦九段)。藤井名人への挑戦権を決めるA級順位戦の開幕戦です。後手がかなり苦しい将棋でしたが、諦めない粘りでついに逆転。△8五桂打が「要の金を狙え」の厳しい寄せになりました。以下▲3八飛に△7七桂成▲同玉△3八とで、後手玉は危険なように見えて、意外に寄りにくい形です。佐藤九段が逆転で好スタートを切りました。
写真:八雲
【第3図は△6三同玉まで】
第3図は第72期王座戦挑戦者決定トーナメント(▲羽生善治九段△糸谷哲郎八段)。互いに危険な玉形が続く終盤戦です。▲2五飛が「飛車は十字に使え」の好手。現状は飛車の横利きが止まっていますが、五段目に浮けば存分に働いてきます。以下△6九角▲6七玉△4七角成に▲7四歩から飛車の利きを生かして寄せ切りました。
写真:胡桃
【第4図は▲7五桂まで】
第4図は第37期竜王戦6組昇級者決定戦(▲青野照市九段△泉正樹八段)。相掛かりから先手が必死の食い付きを見せていますが、△3一玉が「玉の早逃げ八手の得」の実戦的な一手。▲6三桂成に△同金▲同成銀△2二玉として、後手玉はかなり寄りにくい格好になりました。終盤は逆転して先手の勝ち筋に入りましたが、最後にミスが出て再逆転。現役生活50年の青野九段、最後の一局となりました。
写真:琵琶
【第5図は▲5四飛まで】
第5図は第14期加古川青流戦(▲貫島永州三段△立石径アマ)。17歳で三段リーグを止めて医師になった立石アマが将棋界へ復帰です。激戦の終盤戦で、△7八銀成▲同玉△6九銀▲同玉△8九飛成が「終盤は駒の損得より速度」の踏み込み。▲7九銀に△7八歩と打ってギリギリの寄せ合いです。以下は先手に勝ち筋もあったようですが、最後は後手が競り勝ちました。立石アマは続く午後の対局では敗れましたが、存在感を見せる勝利になりました。
写真:翔
ライター渡部壮大
監修高崎一生七段