棋聖戦五番勝負開幕 6月上旬の注目対局を格言で振り返る

棋聖戦五番勝負開幕 6月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2024年06月21日

 山崎隆之八段の15年ぶりのタイトル挑戦が始まりました。A級順位戦は開幕戦から大熱戦となりました。

ヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負第1局

【第1図は▲2九飛まで】

 第1図はヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負第1局(▲山崎隆之八段△藤井聡太棋聖)。永世棋聖の懸かる藤井棋聖と、15年ぶりのタイトル挑戦の山崎八段によるシリーズです。相掛かりから後手が積極的に自玉頭から戦いを起こしました。△6三角が「遠見の角に好手あり」の継続手。▲3六歩にも△3五歩▲同歩△同銀とこじ開けにいって後手の攻めが止まりません。自陣角から攻めを的確につなぎ、防衛に向けて快勝スタートになりました。

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写真:琵琶

第83期A級順位戦1回戦

【第2図は▲7七同金まで】

 第2図は第83期A級順位戦1回戦(▲永瀬拓矢九段△佐藤天彦九段)。藤井名人への挑戦権を決めるA級順位戦の開幕戦です。後手がかなり苦しい将棋でしたが、諦めない粘りでついに逆転。△8五桂打が「要の金を狙え」の厳しい寄せになりました。以下▲3八飛に△7七桂成▲同玉△3八とで、後手玉は危険なように見えて、意外に寄りにくい形です。佐藤九段が逆転で好スタートを切りました。

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写真:八雲

第72期王座戦挑戦者決定トーナメント

【第3図は△6三同玉まで】

 第3図は第72期王座戦挑戦者決定トーナメント(▲羽生善治九段△糸谷哲郎八段)。互いに危険な玉形が続く終盤戦です。▲2五飛が「飛車は十字に使え」の好手。現状は飛車の横利きが止まっていますが、五段目に浮けば存分に働いてきます。以下△6九角▲6七玉△4七角成に▲7四歩から飛車の利きを生かして寄せ切りました。

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写真:胡桃

第37期竜王戦6組昇級者決定戦

【第4図は▲7五桂まで】

 第4図は第37期竜王戦6組昇級者決定戦(▲青野照市九段△泉正樹八段)。相掛かりから先手が必死の食い付きを見せていますが、△3一玉が「玉の早逃げ八手の得」の実戦的な一手。▲6三桂成に△同金▲同成銀△2二玉として、後手玉はかなり寄りにくい格好になりました。終盤は逆転して先手の勝ち筋に入りましたが、最後にミスが出て再逆転。現役生活50年の青野九段、最後の一局となりました。

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写真:琵琶

第14期加古川青流戦

【第5図は▲5四飛まで】

 第5図は第14期加古川青流戦(▲貫島永州三段△立石径アマ)。17歳で三段リーグを止めて医師になった立石アマが将棋界へ復帰です。激戦の終盤戦で、△7八銀成▲同玉△6九銀▲同玉△8九飛成が「終盤は駒の損得より速度」の踏み込み。▲7九銀に△7八歩と打ってギリギリの寄せ合いです。以下は先手に勝ち筋もあったようですが、最後は後手が競り勝ちました。立石アマは続く午後の対局では敗れましたが、存在感を見せる勝利になりました。

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写真:翔

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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