渡辺が王位初挑戦 5月下旬の注目対局を格言で振り返る

渡辺が王位初挑戦 5月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2024年06月12日

名人戦は藤井聡太名人が4勝1敗で初防衛。叡王戦もカド番をしのぎ、2勝2敗で最終局となりました。王位戦の挑戦者は渡辺明九段で、王位戦七番勝負には初登場です。

第82期名人戦七番勝負第5局

【第1図は△6六金まで】

第1図は第82期名人戦七番勝負第5局(▲藤井聡太名人△豊島将之九段)。豊島九段が意表の四間飛車に対し、先手はガッチリと穴熊に組み上げます。▲6四香の攻めも見えるところですが、▲4四馬が堅陣をキープする順。△7七金に▲同馬で金をはがされても馬を引き付けることができました。「馬の守りは金銀3枚」で鉄壁の穴熊です。形勢は難解ですが先手の勝ちやすい展開で、終盤は堅さの生きる寄せ合いになり先手が制しました。藤井名人は4勝1敗で名人初防衛です。

20240611_playback0502-1.jpg
写真:常盤秀樹

第9期叡王戦五番勝負第4局

【第2図は▲4七金まで】

第2図は第9期叡王戦五番勝負第4局(▲伊藤匠七段△藤井聡太叡王)。角換わりから後手の藤井叡王が端攻めでリードを奪いました。△3九馬も見えるところですが、実戦の△7五馬が「馬は自陣に引け」の手厚い好手。6四に利かしながら、次の△8五桂が厳しい攻めになっています。以下は後手が優位を拡大していき、最後は盤石の態勢で押し切りました。後のなかった藤井叡王がしのぎ、決着は最終第5局へともつれ込みました。

20240611_playback0502-2.jpg
写真:玉響

第35期女流王位戦五番勝負第3局

【第3図は△7五歩まで】

第3図は第35期女流王位戦五番勝負第3局(▲福間香奈女流王位△加藤桃子女流四段)。端を突破して先手優勢ですが、後はどう決めるか。▲3三歩△同桂▲5四歩△同歩▲3四歩が「金は斜めに誘え」の手筋でした。△同金と取らせて金の守りを弱体化させることに成功。以下▲6五歩△5三銀▲5五歩△同歩▲5四歩△同銀▲5七角が薄くなった中央を狙う流れるような攻めで、先手がはっきりと抜け出しました。勝った福間女流王位は3連勝で防衛を果たし、通算10期目の女流王位を獲得です。

20240611_playback0502-3.jpg
写真:夏芽

伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦挑戦者決定戦

【第4図は△3二竜まで】

第4図は伊藤園お~いお茶杯第65期王位戦挑戦者決定戦(▲渡辺明九段△斎藤慎太郎八段)。先手がうまく攻めをつなぎ、勝勢になっています。▲5三金が「寄せは俗手で」の決め手で、上から押さえて後手は受けの難しい形になりました。渡辺九段は王位戦七番勝負に初登場です。

20240611_playback0502-4.jpg
写真:文

第37期竜王戦ランキング戦6組決勝

【第5図は△3一玉まで】

第5図は第37期竜王戦ランキング戦6組決勝(▲山下数毅三段△藤本渚五段)。18歳対15歳のフレッシュな組み合わせとなった6組決勝。図から▲4六歩△同歩▲同角が好着想。△6五歩に▲3七桂と跳ねて「攻めは飛角銀桂、守りは金銀3枚」の理想的な構えになりました。先手が作戦勝ちとなりましたが、攻めを呼び込みすぎて逆転。最後は藤本五段が制しました。勝てば次点がほぼ決まり、四段の権利を得られる山下三段にとっては惜しい内容になりました。

20240611_playback0502-6.jpg
写真:夏芽

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

このライターの記事一覧

高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています