豊島が名人挑戦を決める 2月下旬の注目対局を格言で振り返る

豊島が名人挑戦を決める 2月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2024年03月15日

 混戦となっていたA級順位戦ですが、最終戦の直接対決を制した豊島将之九段が名人挑戦権を獲得しました。また、女流名人戦は福間香奈女流四冠が奪取し、女流五冠となっています。

第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局

【第1図は▲4一飛まで】

 第1図は第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第2局(▲伊藤匠七段△藤井聡太棋王)。角換わり腰掛け銀から激しい展開になりましたが、後手陣はバラバラで方針に悩むところです。△8六歩が玄妙な一着。効果が見えにくい手ですが、実戦は▲9一飛成△8七歩成▲同金△5五角と進んでいきました。形勢は難解ながら、「金は斜めに誘え」で先手陣が弱体化したのが見た目以上に大きかったようです。実戦も終盤で7八の地点を狙った鋭い寄せが決まっています。

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写真:紋蛇

岡田美術館杯第50期女流名人戦五番勝負第4局

【第2図は△3三同銀まで】

 第2図は岡田美術館杯第50期女流名人戦五番勝負第4局(▲福間香奈女流四冠△西山朋佳女流名人)。先手は駒得ですが、と金に迫られて怖いところです。▲7六歩が「遊び駒は活用せよ」の大きな一手。角を使えば手順に先手玉も広くなります。以下△5七桂に▲6六角が味良く、先手が少しずつリードを拡大していきました。本局を勝った福間女流四冠は3勝1敗で女流名人に復位を果たしました。

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写真:常盤秀樹

第82期順位戦A級9回戦

【第3図は▲1一香成まで】

 第3図は第82期順位戦A級9回戦(▲菅井竜也八段△豊島将之九段)。2敗の豊島九段と3敗の菅井竜也八段による挑戦争いの直接対決です。1筋から手を作られたところですが、ここで△4二玉が「玉の早逃げ八手の得」の手堅い一着。1一成香から遠ざかる価値のある早逃げです。実戦はさらに5一へと逃げ込む展開となり、後手玉は寄らない形になりました。勝った豊島九段は7勝2敗とし、単独首位が決まって名人挑戦権を獲得しています。

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写真:夏芽

第82期順位戦A級9回戦

【第4図は▲2三角成まで】

  第4図は第82期順位戦A級9回戦(▲斎藤慎太郎八段△佐々木勇気八段)。こちらは残留を懸けた大一番です。角換わりから激しい展開になっていますが、△2六歩が「大駒は近付けて受けよ」の手筋。▲同飛と取らせてから△2四歩▲3二馬△同玉と応じて、飛車の当たりを強くして受けやすい形にしています。以下も難しい戦いが続きましたが先手の猛攻を受け止めた後手が制勝。佐々木八段が残留を決めました。

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写真:紋蛇

第82期順位戦A級9回戦

【第5図は△4三同歩まで】

 第5図は第82期順位戦A級9回戦(▲渡辺明九段△広瀬章人九段)。うまく後手の猛攻をかわした先手が勝ちに近付いています。▲4四歩△同歩▲4三銀が「要の金を狙え」の寄せ。3二の金をはがせば後手玉が見えるようになります。実戦は△5六歩▲3二銀成△同玉▲4三金△2二玉▲5三竜が攻防手になり、先手の勝ち筋です。敗れた広瀬九段は他局の結果により降級となりました。

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写真:睡蓮

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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