藤井がタイトル戦の連勝記録更新 2月上旬の注目対局を格言で振り返る

藤井がタイトル戦の連勝記録更新 2月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2024年02月22日

  王将戦七番勝負は藤井聡太王将が圧倒し4連勝。タイトル戦初出場から番勝負を20連勝として、大山康晴十五世名人の持つ記録を塗り替えました。棋王戦は開幕から波乱の持将棋になっています。

ALSOK杯第73期王将戦七番勝負第4局

【第1図は△3二金まで】

 第1図はALSOK杯第73期王将戦七番勝負第4局(▲藤井聡太王将△菅井竜也八段)。角交換振り飛車から互いに馬を作り合う本局。機敏な駒運びで先手がわずかに指しやすくなりました。▲3八馬が手堅い手で、△3六歩に▲4七銀△3七歩成▲同桂と応じて先手陣にはスキがありません。「馬は自陣に引け」「馬の守りは金銀3枚」というほどの守備力です。以下もじわじわとリードを拡大し、先手の完勝となりました。これで藤井王将は4連勝で防衛です。

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写真:玉響

第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局

【第2図は▲8五銀まで】

 第2図は第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局(▲藤井聡太棋王△伊藤匠七段)。同学年のライバル対決が再びです。角換わり腰掛け銀から猛スピードで終盤戦に突入しました。第2図で先手玉は捕まらない格好ですが、これは後手も織り込み済。△3三玉▲8八金△3四玉で「中段玉寄せにくし」。どちらの玉も捕まらなくなり、以下は持将棋となりました。後手としては引き分けなら満足で、伊藤七段の研究だったようです。

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写真:文

岡田美術館杯第50期女流名人戦五番勝負第3局

【第3図は△7九竜まで】

 第3図は岡田美術館杯第50期女流名人戦五番勝負第3局(▲西山朋佳女流名人△福間香奈女流四冠)。後手が居玉のまま戦いが始まりましたが、うまく反撃を決めて先手が優位に立ちました。図は終盤で次に△3八金の攻めがありますが、▲1八玉が「玉の早逃げ八手の得」で、先手玉は寄らない格好となり、以下は先手が押し切っています。連敗で後のなかった西山女流名人が1勝を返して勝負は第4局へ。

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写真:銀杏

第17回朝日杯将棋オープン戦決勝

【第4図は△5四馬まで】

 第4図は第17回朝日杯将棋オープン戦決勝(▲永瀬拓矢九段△藤井聡太竜王・名人)。矢倉の出だしから永瀬九段の研究が功を奏し大きく持ち時間に差がつきましたが、藤井竜王・名人も形勢は離されずについていきます。難解な形勢から直前の▲7三角が踏み込んだ強手。△5四馬と受けた第4図から▲6五歩△同金に▲6六歩が「敵の打ちたいところへ打て」の好手でした。△7六金と呼び込みますが、それよりは△6六桂を打たせないのが大事です。この後の難解な終盤を乗り切って、永瀬九段が全棋士参加棋戦で初優勝を飾りました。

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写真:睡蓮

第82期順位戦B級1組

【第5図は△7五桂まで】

 第5図は第82期順位戦B級1組(▲千田翔太七段△屋敷伸之九段)。先手が苦しい時間の長かった将棋ですが、ようやく反撃のチャンスが訪れました。銀を取らずに▲3三歩△同桂▲4一銀が「要の銀を狙え」の寄せ。3二の金を狙っておけば、横からの飛車打ちも効果的になります。以下は先手が押し切りました。競争相手が敗れたため、千田七段のA級昇級と八段昇段が決まっています。

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写真:生姜

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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