ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2024年01月25日
王将戦七番勝負は相穴熊の熱戦で開幕しました。二日制では久しぶりの振り飛車シリーズ、どうなるでしょうか。藤井聡太竜王・名人と藤本渚四段の勝率1位争いも注目です。
【第1図は△6三金まで】
第1図はALSOK杯第73期王将戦七番勝負第1局(▲菅井竜也八段△藤井聡太王将)。相穴熊から二日目に入っても戦いが始まらない、近年では珍しいスローペースのねじり合いとなりました。と金を作って居飛車がペースをつかみましたが、残り時間が少なく激戦です。▲5四歩に△6三金と飛車に当ててきたところですが、▲4四歩△5八歩成▲4三歩成が「金は斜めに誘え」の勝負手。△同金に▲5二角と駒損ながら玉を薄くして迫っていきます。しかし、時間切迫の中でも藤井王将は的確な指し回しを続け、このまま勝ち切りました。
写真:八雲
【第2図は▲5六同歩まで】
第2図は岡田美術館杯第50期女流名人戦五番勝負第1局(▲西山朋佳女流名人△福間香奈女流四冠)。後手が快調に攻めてリードしましたが、先手も必死の防戦です。大駒だけで攻め切るのは難しいですが、△8六歩が「と金の遅早」の確実な攻め。▲8一歩成△8七歩成▲7一と△4二金▲2五桂に△7八とで防壁を削ることに成功。以下は後手が押し切っています。
写真:銀杏
【第3図は▲6六桂まで】
第3図は第8回YAMADA女流チャレンジ杯決勝戦(▲野原未蘭女流初段△磯谷祐維女流1級)。先手が快調に攻めて勝ちに近付いていますが、△4四金が「遊び駒は活用せよ」の勝負手。▲4五銀に△8八歩▲4四銀△8九歩成と迫っていきます。それでも先手の勝ち筋でしたが、最後の最後で逆転。磯谷女流1級が棋戦初優勝で昇段も果たしました。
写真:睡蓮
【第4図は▲6四成銀まで】
第4図は第9期叡王戦本戦トーナメント(▲藤本渚四段△本田奎六段)。激戦の終盤ですが、後手玉はまだ詰まない形のため勝ち筋に入っています。△5七角▲6八歩△7七桂打が「玉は包むように寄せよ」で、▲8八玉に△4五歩と飛車を取って後手勝勢がはっきりしました。最高勝率更新の期待が懸かる俊英の藤本四段ですが、ここで連勝がストップしました。
写真:胡桃
【第5図は△3三玉まで】
第5図は第17回朝日杯将棋オープン戦本戦(▲藤井聡太竜王・名人△増田康宏七段)。中段に逃げ出した後手玉を押し返したところです。▲4四桂が「要の金を狙え」の寄せで、△4二金に▲4三歩とクサビが入りました。△4一金と辛抱しますが、▲4六金で駒を補充しにいって、後手は受け切れない格好です。勝った藤井竜王・名人はベスト4に進出し、最多タイの5回目の優勝まであと2つです。
写真:琵琶
ライター渡部壮大