羽生九段が初代王者に 11月下旬の注目対局を格言で振り返る

羽生九段が初代王者に 11月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年12月08日

 倉敷藤花戦は大逆転で里見香奈倉敷藤花の防衛となりました。注目の初代達人戦は羽生善治九段が優勝し、会長として自分自身を表彰する一幕を見せています。

大山名人杯第31期倉敷藤花戦三番勝負第2局

【第1図は△2三香まで】

 第1図は大山名人杯第31期倉敷藤花戦三番勝負第2局(▲里見香奈倉敷藤花△西山朋佳女流四冠)。先手がはっきりと苦しい将棋でしたが、図の少し前に逆転して先手の勝ち筋に入っています。▲5二銀が「要の金を狙え」の寄せ。△2五香に▲6一角△7三玉▲6三銀成△同玉▲3六歩と受けて先手玉は寄らず、後手玉は一手一手の格好です。里見倉敷藤花が2連勝で防衛を果たしました。

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写真:飛龍

第44回将棋日本シリーズJTプロ公式戦決勝

【第2図は△2七歩まで】

 第2図は第44回将棋日本シリーズJTプロ公式戦決勝(▲藤井聡太竜王・名人△糸谷哲郎八段)。角換わりから後手の糸谷八段が中段玉で受け続ける展開でしたが、先手の攻めが決まり、寄り筋に入っています。▲3八桂が「玉は包むように寄せよ」で、2六と4六の両方をふさげば後手玉は逃げられません。以下△3四桂に▲1七角が痛打で決まっています。藤井竜王・名人は2連覇となりました。

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写真:文

第1回達人戦立川立飛杯決勝

【第3図は▲3三竜まで】

 第3図は第1回達人戦立川立飛杯決勝(▲羽生善治九段△丸山忠久九段)。記念すべき初代優勝者を決める決勝戦です。先手の攻め、後手の受けという展開が続いている終盤戦。次の▲5四銀成が厳しく後手は何か受ける必要があります。△7三玉▲5四銀成△8三玉が「玉の早逃げ八手の得」で、▲5三竜に△7三金打とガッチリ埋めて後手玉はまだまだ寄らず、以下も熱戦が続きました。最後は際どい寄せ合いを制し、会長の羽生善治九段が初代王者に輝きました。

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写真:紋蛇

第73期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ

【第4図は△2五桂まで】

 第4図は第73期ALSOK杯王将戦挑戦者決定リーグ(▲菅井竜也八段△近藤誠也七段)。駒損ながら後手が玉の遠さを生かして猛攻を掛けています。▲2六馬が「馬は自陣に引け」の崩れない受けで、△3七桂成に▲同馬として先手玉はまだまだ堅いです。以下も熱戦が続きましたが、最後まで粘り強い指し回しを見せた菅井八段が制しました。競争相手の永瀬拓矢九段が敗れたため、リーグ初参加の菅井八段が5勝1敗で挑戦権を獲得しました。

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写真:紋蛇

岡田美術館杯第50期女流名人戦プレーオフ

【第5図は▲6八歩まで】

 第5図は岡田美術館杯第50期女流名人戦プレーオフ(▲内山あや女流初段△里見香奈女流四冠)。リーグで里見女流四冠を破る活躍を見せた俊英の内山女流初段がプレーオフまで進みました。しかしここは里見女流四冠が貫録を見せて、差が開いています。△9五歩が「端玉には端歩」の間違いがない寄せで、先手玉は受けが難しい形になっていきました。西山朋佳女流名人と里見女流四冠は女流名人戦五番勝負では初の激突です。

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写真:銀杏

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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