藤井、王座奪取で八冠制覇

藤井、王座奪取で八冠制覇

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年10月19日

 永瀬拓矢王座に藤井聡太竜王・名人が挑戦した第71期王座戦五番勝負。永瀬には5連覇と名誉王座が、藤井には史上初の八冠制覇が懸かった大勝負となった。

第71期王座戦五番勝負第1局

 第1局は神奈川県秦野市「元湯 陣屋」にて。角換わりから後手の永瀬は早繰り銀で動いていく。難解な戦いから微妙に形勢が揺れ動いたが、丁寧な受けを見せた永瀬が終盤で抜け出した。

【第1図は▲2三歩まで】

 ▲2三歩は▲1一飛成以下の詰めろでどう受けるかだが、△3一歩が冷静。▲同飛成なら△4五飛~△2九角の筋で詰む。実戦は▲4二飛成としたが、△3二金▲同と△同歩で先手の攻めは届かない。以下は安定した指し回しを見せて後手が制した。圧倒的な勝率を誇る先手番の藤井を破り、永瀬が白星スタート。

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写真:八雲

第71期王座戦五番勝負第2局

 第2局は兵庫県神戸市「ホテルオークラ神戸」にて。角換わりから後手の藤井は珍しく右玉に構える。永瀬が自陣角から打開し、局面は激しくなっていった。

【第2図は△3一飛まで】

 ここは▲4四馬と引いておけば難解ながら先手に分のある戦いだった。実戦は▲4一金と飛車を取りにいったが、△6二銀▲3一金△4三玉▲4一歩成△4四玉と進み、後手玉は寄らなくなった。以下も戦いが続き、最終的には200手を超えたが、相入玉目前で永瀬玉を捕らえて藤井が制勝。1勝1敗とする。

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写真:金子光徳

第71期王座戦五番勝負第3局

 第3局は愛知県名古屋市「名古屋マリオットアソシアホテル」にて。後手の永瀬が策を凝らして、袖飛車からの端攻めでペースをつかむ。巧みに攻めをつないで永瀬の快勝譜になるかと思われたが......。

【第3図は△3三同桂まで】

 図から▲2一飛△4一飛▲6五角△5四歩▲4一飛成△同玉▲5六角で要の金をボロッと取って形勢逆転。▲2一飛には自然な△3一歩なら勝ち筋だったようだが、▲4三銀△同金▲3二銀に対して正確に受け切る必要があり、時間切迫の中では難しかった。勝負手を通しての逆転勝ちで、藤井が2勝1敗と八冠に迫る。

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写真:将棋世界

第71期王座戦五番勝負第4局

 第4局は京都府京都市「ウェスティン都ホテル京都」にて。角換わりの速攻から深い研究を見せて永瀬がリードを奪う。藤井も粘り強い指し回しで一時は形勢逆転するが、時間切迫の中で永瀬の巧みな受けの前に再逆転を許した。

【第4図は△5五銀まで】

 図の△5五銀は先手玉を縛った手だが形作り......のはずだった。実戦は▲5三馬としたが、△2二玉ではっきり詰まない形になって事件発生。最後の最後で大逆転となってしまった。図では▲4二金と打てば△同金▲同成銀△同玉▲5二飛△3三玉▲5五馬と手順に銀を外して先手勝ちだった。難しい手順ではないが、極限状態の中で永瀬に何か錯覚があったようだ。

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写真:飛龍

 苦しい将棋を逆転で制し、藤井が3勝1敗で王座を奪取。同時に史上初の八冠を成し遂げた。永瀬は持ち前の研究量で好局を続けたが、藤井の粘り強い指し回しの前に屈することになった。内容的にはスコアが逆になっていてもおかしくなく、永瀬にとっては残念な結果だろう。

 藤井は21歳にして八冠+一般棋戦4つの完全制覇を成し遂げた。年齢的にはまだまだ力を付けるはずだが、この先どれほど強くなるか。そして藤井を番勝負で倒す棋士が現れるのはいつになるだろうか。

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写真:常盤秀樹

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渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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