4連覇を目指す藤井棋聖VSタイトル初挑戦の佐々木七段―第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負の展望―

4連覇を目指す藤井棋聖VSタイトル初挑戦の佐々木七段―第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負の展望―

ライター: 牛蒡  更新: 2023年06月04日

藤井聡太棋聖に佐々木大地七段が挑戦する第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負は6月5日、 ベトナム・ダナン市「ダナン三日月」で開幕する。

七冠を持つ藤井

藤井は先月、第81期名人戦七番勝負を制し、史上最年少の20歳で名人位を獲得した。王座を除く七冠を保持し、いよいよ八冠制覇を目指す。八冠のロードマップは、棋聖防衛、王座戦で挑戦権獲得、王位防衛、王座奪取の順となる。棋聖戦が第一関門だ。

第91期ヒューリック杯棋聖戦の初戴冠以来、タイトル戦は15回戦って負けなし。これほど他を圧倒した王者はいない。棋聖戦は3連覇中で、五番勝負のスコアも、3-1、3-0,3-1と危なげなかった。名人戦の2日後にベトナム入りというハードな日程は気になるが、藤井が体力面の不安を口にしたことはあまりない。しっかりと調整してくるだろう。

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写真:玉響

佐々木は初のタイトル戦

佐々木は5月で28歳になった。以前から実力者と認められていたが、昨年まで大きな実績はなく、前期の棋聖戦もベスト4で敗れた。しかし、今年に入り、ついに大ブレイクを果たす。棋聖戦、王位戦と連続で挑戦者になり、この夏、藤井と十二番勝負を戦うことになった。

藤井とは過去に4戦して2勝2敗と健闘している。佐々木は「昔のデータ(2017年に2局、19年と21年に各1局)で参考にならない」と話すが、藤井と指し分けている数少ない棋士でファンの期待は大きい。タイトル戦に早めに慣れて力を発揮したい。

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写真:睡蓮

注目は先手番

「先手番ですべて勝ち、最終局の振り駒で先手番を引く」。広瀬章人八段は昨年の竜王戦で藤井に挑戦した際に、このように戦略を立てた。第3局の先手番で敗れて破綻したが、藤井相手に先手番は落とせないと考えるのは自然なことで、佐々木も例外ではないだろう。

藤井の先手勝率は8割9分0厘。2020年11月以降は76勝5敗、勝率は9割3分8厘。現在5連勝中。得意戦法の先手角換わりでは、過去1年で1敗しかしていない。佐々木は後手番で角換わりを受けることが多いが、4月の高野智史六段戦(王将戦一次予選)では角交換を避けて力戦に持ち込んだ。佐々木の作戦にも注目したい。

佐々木も先手番でよく勝っている。先手勝率は7割6分2厘。特筆すべきは現在15連勝中であること。先手相掛かりが挑戦権獲得の原動力となった。藤井も相掛かりの後手番は強いが、直近のタイトル戦では2連敗している。しばらく相掛かりを指していないのも不安材料か。

海外対局も話題に

冒頭で書いたように、第1局は海外対局となる。棋聖戦の海外対局は38年ぶり2回目。他棋戦を含めると4年ぶり25回目。東南アジアでは、タイやシンガポールでの対局はあったが、ベトナムでは初めて。

ダナン市は熱帯モンスーン気候で、2月から8月は乾季に当たる。ただ、年間を通して雨は多く、この時期は蒸し暑い。対局場のホテル三日月は、ホテル三日月グループの系列で、日本文化をコンセプトにしたリゾートホテルだ。ダナン湾に面し、充実したプール施設もある。同ホテルのウェブサイトによれば、ベトナム料理のほか、和食や洋食も食べられる。

現地時間で5日の午前9時(日本時間11時)に対局開始となる。日本将棋連盟では、棋譜中継とブログで本局をお伝えする。対局以外の様子も紹介する予定だ。

牛蒡

ライター牛蒡

2010年、サラリーマンから「名人戦棋譜速報」の中継記者に転身。 現在は日本将棋連盟モバイルの中継業務も担当。ペンネームを「牛」に改名しようかと検討中。

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