渡辺が1勝を返す 5月上旬の注目対局を格言で振り返る

渡辺が1勝を返す 5月上旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2023年05月20日

 名人戦は渡辺明名人が1勝を返し、簡単には終わりません。王位戦の挑戦者決定戦は羽生善治九段と佐々木大地七段の顔合わせとなりましたが、藤井聡太王位への挑戦権を得るのはどちらになるでしょうか。

第81期名人戦七番勝負第3局

【第1図は△5八飛成まで】

 第1図は第81期名人戦七番勝負第3局(▲渡辺明名人△藤井聡太竜王)。矢倉対雁木の戦いから、後手が飛車を成り込んだところ。先手は駒得でも右辺の飛車角銀桂の働きが悪いのが気になりますが、▲5九歩が妙手でした。△4八竜と取るくらいですが、そこで▲4五桂が絶好で、△3八竜▲5三角成△同金▲2三飛成とスパークして先手の勝ち筋に入りました。「遊び駒は活用せよ」とは言いますが、取らせることにより働かせることもあります。

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写真:金子光徳

第8期叡王戦五番勝負第3局

【第2図は△2九飛成まで】

 第2図は第8期叡王戦五番勝負第3局(▲藤井聡太叡王△菅井竜也八段)。相穴熊から激戦となりましたが、後手の遠さが生きる展開になりました。一分将棋の中、先手はどう粘るかという局面ですが、▲2二角がしぶとい一手でした。△7七桂なら▲同銀△同歩成▲同角成で先手玉が見えなくなります。「馬の守りは金銀3枚」「馬は自陣に引け」で、穴熊の耐久度が上がるのを嫌った後手は△9五歩と目先を変えて攻めましたが、▲7一歩成から激戦となり、最後は先手が逆転勝ちを収めました。

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写真:潤

伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦挑戦者決定リーグ紅組

【第3図は△3六金まで】

 第3図は伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦挑戦者決定リーグ紅組(▲豊島将之九段△羽生善治九段)。3勝1敗同士で勝った方がリーグを制する大一番です。角換わり腰掛け銀から形勢の揺れ動く戦いとなりました。図の△3六金は飛車と馬の両取りですが、▲3四桂が「両取り逃げるべからず」の勝負手で際どい終盤戦です。以下は双方チャンスもあったようですが、最後は後手が的確な寄せを決めました。羽生九段は激戦のリーグを制し、挑戦者決定戦進出です。

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写真:睡蓮

伊藤園お~いお茶杯第64期王位戦挑戦者決定リーグ白組

【第4図は▲8八同角まで】

 第4図は王位戦挑戦者決定リーグ白組(▲池永天志五段△佐々木大地七段)。長い中盤戦の本局でしたが、いよいよ終盤戦に突入です。▲6五歩が回ると後手も大変ですが、桂が生きている瞬間に△6七角が「金は斜めに誘え」の強手。駒損ですが、▲同金に△8七飛成ですぐに取り返すことができます。勢いのままに制した佐々木七段はリーグを5戦全勝で羽生九段との挑戦者決定戦に臨みます。

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写真:康太

第71期王座戦挑戦者決定トーナメント

【第5図は△7六金まで】

 第5図は第71期王座戦挑戦者決定トーナメント(▲藤井聡太竜王△中川大輔八段)。一年で3度目の対局となった両者です。後手の猛攻をしのぎ、先手にターンが回ってきたところです。▲5二銀が「玉の腹から銀を打て」の決め手。△7一飛に▲6三銀成から寄せ切りました。

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写真:紋蛇

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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