伊藤が初タイトル獲得 2月下旬の注目対局を格言で振り返る

伊藤が初タイトル獲得 2月下旬の注目対局を格言で振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2022年03月01日

 女流名人戦で挑戦者の伊藤沙恵女流三段が3勝1敗で奪取。悲願の初タイトルとなりました。朝日杯の決勝は稲葉陽八段、菅井竜也八段による同門対決が実現、菅井八段が初優勝を飾っています。

第47期棋王戦五番勝負第2局

【第1図は▲2九飛まで】

 第1図は第47期棋王戦五番勝負第2局(▲渡辺明棋王△永瀬拓矢王座)。相掛かりから互いにバランス型に構え、じっくりとした戦いになっています。ここから△4一玉▲4八玉は攻めから遠ざかる「玉の早逃げ八手の得」ですが、このやり取りは先手の得になったようです。以下△7六飛▲7七歩△8六飛に▲6四歩△5二銀▲5四銀と圧力を掛けて徐々に先手が指しやすくなっていきました。

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写真:八雲

第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第4局

【第2図は▲8五歩まで】

 第2図は第48期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第4局(▲里見香奈女流名人△伊藤沙恵女流三段)。先手が何とか勝負に持ち込もうとしていますが、△8四歩が「敵の打ちたいところへ打て」の冷静な一着。▲8四香さえ防げば玉頭の厚みで自然に後手が勝てる局面です。以下▲同歩△同銀▲6六角△7五歩▲7四銀とプレッシャーを掛けてきましたが、△8五金から寄せ切って後手制勝。伊藤女流三段が9度目の挑戦で悲願の初タイトル獲得となりました。

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写真:武蔵

第15回朝日杯将棋オープン戦決勝

【第3図は△4六銀まで】

 第3図は第15回朝日杯将棋オープン戦決勝(▲菅井竜也八段△稲葉陽八段)。決勝は井上慶太九段門下の兄弟弟子対決となりました。離れていた左金を巧みに中央に寄せた先手優勢の局面です。▲4八香が「下段の香に力あり」です。△5五銀と逃げましたが、4筋の制空権を握ったのが大きく、▲4二歩から厳しく攻め続けた先手の快勝となりました。菅井八段は銀河戦に続き、今期2つ目の早指し棋戦制覇です。

お~いお茶杯第63期王位戦挑戦者決定リーグ

【第4図は▲3七歩まで】

 第4図はお~いお茶杯第63期王位戦挑戦者決定リーグ(▲佐々木大地六段△伊藤匠四段)。初参加の伊藤四段と、若手ながらリーグ常連の佐々木六段の一戦です。後手が押している将棋でしたが、先手の驚異的な粘りで形勢は混沌としています。△5四桂が「桂は控えて打て」で先手玉にプレッシャーを掛けています。結局終局まで△6六桂と跳ねることはありませんでしたが、攻めの土台として働きました。先手の粘りを振り切り、伊藤四段が初陣を飾りました。

第7期叡王戦本戦

【第5図は△8二玉まで】

 第5図は第7期叡王戦本戦(▲豊島将之九段△中田功八段)。穴熊からうまく端攻めをいなして先手に分のある終盤戦です。▲6九玉が「玉の早逃げ八手の得」で、これで攻めに専念できるようになりました。7八に玉がいたままだと△8七角が厳しいため、角を渡す攻めができません。リターンマッチに向けて、豊島九段が初戦突破です。

注目対局プレイバック

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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高崎一生

監修高崎一生七段

棋士・七段
1987年生まれ、宮崎県日南市出身。2005年10月に四段。(故)米長邦雄永世棋聖門下。 攻める棋風を持ち味としている振り飛車党。
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