里見、頂上決戦制す 第43期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負を振り返る

里見、頂上決戦制す 第43期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負を振り返る

ライター: 渡部壮大  更新: 2021年11月10日

 西山朋佳女流王将に里見香奈女流四冠が挑戦した第43期霧島酒造杯女流王将戦三番勝負。開幕時点で7つの女流タイトルはすべて両者で保有しており、頂上決戦とも言えるカードだ。女流王将戦三番勝負での対戦は2期ぶりで、その時は挑戦者の西山が2勝1敗で奪取している。

 第1局は恒例となっている宮崎県都城市「霧島創業記念館 吉助」にて。先手の西山の中飛車から相振り飛車の戦いとなった。軽快な指し回しで仕掛けを得た里見がリードを奪う。

【第1図は▲4九同飛まで】

 第1図で後手は角取りが残っているが、自玉は安全なので攻めに専念できる。△3七歩▲同桂△2六金と押しつぶしにいくのが厳しい。まだ詰めろではないので▲8五香と駒が入った時に詰ますぞとプレッシャーをかけたものの、△2七歩▲3九玉△4七歩▲2九香△2四角と駒を渡さない詰めろを続けながら手順に角取りも消して勝負あり。里見が復位に向けて快勝。

 第2局は東京・将棋会館にて。この数日前に第1期ヒューリック杯白玲戦七番勝負が決着し、西山が四冠目を獲得。女流四冠対決になっている。第1局とは逆に里見の先手中飛車から相振り飛車となった。先手が上部に厚く構えて押さえ込みを見せる展開に。

【第2図は▲2二角まで】

 ▲1一角成から▲1二馬のような活用が間に合ってしまうと先手優勢となる。後手はこの瞬間にさばきに出た。実戦は△2四角▲1一角成に△3六飛と切る。▲同銀なら△4六角が金香両取りだ。▲5七銀と辛抱したものの、△3五飛▲3六香に△4五桂が派手なさばきで手になった。▲同歩は△同飛で歩切れの先手は受けにくいし、実戦の▲3五香も△3七桂成▲同玉△3五角で後手良しに。攻めの手掛かりがなさそうだが、歩切れを突く香打ちが狙いになる。豪快にさばいた西山が制し、決着は最終局へ。

jo-oushou02.jpg

 最終第3局も東京・将棋会館にて。西山が先手となり三度目の相振り飛車へ。西山がペースをつかんだものの、里見も辛抱強い指し回しでチャンスを待つ。

【第3図は▲4三馬まで】

 

 5七歩成▲同玉△7五角が厳しく、後手の勝ち筋に入った。以下は押し切って里見が2勝1敗でシリーズを制す。

jo-oushou03.jpg

 里見は5度目のタイトル戦にして西山に初勝利し、女流王将に返り咲いた。女流五冠となり、西山を追い抜き最多タイトルとなった。両者はリコー杯女流王座戦五番勝負でも対戦しており、今後も戦いはまだまだ続いていくことだろう。

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

このライターの記事一覧

  • Facebookでシェア
  • はてなブックマーク
  • Pocketに保存
  • Google+でシェア

こちらから将棋コラムの更新情報を受け取れます。

Twitterで受け取る
facebookで受け取る
RSSで受け取る
RSS

こんな記事も読まれています