棋士ならではの苦労も...関西棋士会の活動裏話―畠山鎮八段×糸谷哲郎八段対談【後編】

棋士ならではの苦労も...関西棋士会の活動裏話―畠山鎮八段×糸谷哲郎八段対談【後編】

ライター: マツオカミキ  更新: 2019年11月12日

関西棋士会の畠山八段×糸谷八段対談

「棋士会のことを、もっと知ってほしい!」という棋士会の持ち込み企画、関西所属の副会長畠山鎮八段と糸谷哲郎八段の対談後編です。棋士会のイベント時に苦労する「棋士ならでは」の悩みや、お二人が今後棋士会として目指すことなど、引き続き裏話満載でお届けします。

棋士が参加するイベントならではの苦労とは?

――過去のイベントで、印象に残っているものはありますか?

畠山 大きな将棋盤で、1チーム15人のファンの方たちと一手ずつ指していく「大リレー将棋」は、棋士もファンも一体感があって印象に残っています。ファンの方は強い人もそうでない人もチームになって指しますが、棋士側もちゃんと「良いヒント出してサポートします」とか「何指してもリカバリーします」とか言って。そういうのは、これまでのイベントにはあまりなかったので新鮮な感覚です。

糸谷 リレー対局みたいに、棋士が交替で指すような対局も、いろんな棋士を見られるから喜んでもらえますよね。昔は一対一の指導対局だけが喜ばれたけれども、最近では将棋ファンの層も広がっているので、イベントの内容にも幅があった方が良いと実感しています。

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畠山 楽しむために来てもらうようなイベントもどんどん実施していきたいですね。将棋縛りなので企画はなかなか難しいですけど、先日もドン・キホーテでクイズの早押しの機械が売っているのを見つけて、立ち止まってじーっと商品を見ちゃいました。「これがあれば、クイズ大会ができるなあ」とか。

糸谷 常に、イベントのネタを探していますよね。

畠山 そうそう。今後クイズができるイベントがあったら、それを買ったら盛り上がるんじゃないかなあ、なんて。そういうのを日々考えていますね。

――棋士会の活動で、苦労する部分はありますか?

畠山 いやあ、やっぱり2人しかいないんでね。将棋連盟の職員さんにも手伝っていただいていますが、基本的には実務での担当職員さんはいないので、事務作業もすべて自分達でやらなければならない部分は大変ですよね。トップ棋士である糸谷八段が、色紙の抽選用紙と抽選表をコツコツと作ったりするんですから。

糸谷 簡単なものですけどね。抽選用紙を作って、印刷して、箱を用意して、配布して‥‥という一連の作業を全部やるのは、なかなか大変だったりします。

畠山 私もエクセルで司会原稿やスケジュール表を作ったりします。ただね、スケジュール表を事前に参加棋士に渡しても、みんな見てくれなくて‥‥。

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糸谷 棋士は個人プレーの積み重ねで、今がありますからね‥‥(笑)。でも畠山八段は奨励会の幹事も務められていたので、やはりまとめる力があります。

畠山 まとめきれてないですけどね‥‥。もはや、進行を無視してバラバラになるのがいつものパターンになっています(笑)。

「今のメンバーは積極的に動ける布陣」今後の棋士会の目標

――今後の棋士会活動における目標はありますか?

糸谷 将棋に興味のあるすべての方に楽しんでいただけるプログラムを、用意していけたらと思っています。将棋が強くなりたい高段者向けのものはもちろん、好きな棋士の対局姿を見たい方向けや、一緒に楽しめるようなものなど。

畠山 強くなりたい人ばかりではありませんからね。私も趣味でテニススクールに通っているんですが、「畠山さん、こうすればもっと速いボールが打てるよ」と指導される時なんかは、「こっちは仕事終わりにただ運動を楽しみにきてるのに~」って思うこともあります(笑)。娯楽として楽しんでくれる人にも、そういった機会を提供できると良いですよね。

糸谷 これまでのイベントは、修行した人だけが参加できるものみたいになってしまっていた部分もありますからね。そういう場も残しつつ、そうではない場も広げて、より将棋を楽しむ人が増えたらいいなと思います。

畠山 特に今年度から棋士会に入ってくれた遠山六段は行動力がある人だし、長年将棋連盟モバイルの編集長を務めてきた人だから、「観る将」の将棋ファンのこともきっとたくさん考えてきていると思います。西遊棋で活動してきた糸谷八段もいるし、棋士会もより活性化するはずですから、これからの棋士会からは目が離せないですよ。

糸谷 それと、棋士会でのイベントは大人数でできる普及ですが、棋士個人が1人でできる普及、つまり道場を作るとか、そういうこともサポートできるような講習会も実施していきたいです。今の棋士会のメンバーも積極的に動ける布陣だと思うので、引き続き新しいことも取り組んでいけたらと思います。

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関西棋士会の畠山八段×糸谷八段対談

マツオカミキ

ライターマツオカミキ

2014年からライターとして活動する平成元年生まれ。28歳にして初めて将棋に触れました。将棋を学びながら、初心者目線で楽しさをお伝えします!普段は観光地や企業、お店を取材して記事を執筆中。

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