ライター渡部壮大
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。
ライター: 渡部壮大 更新: 2018年03月14日
毎年恒例となっている加古川青流戦のアマチュア選抜大会が、3月3日に兵庫県加古川市「加古川まちづくりセンター」で開催された。申し込めばアマチュアなら誰でも出られる大会で、優勝者2名が第8期加古川青流戦に出場できる。
今年は北は岩手から南は熊本まで、過去最多の118名が参加。アマチュア全国優勝経験者や元奨励会三段も多数出場し、全国大会とも遜色ないレベルの高さだ。一発トーナメントで25分切れ負けはなかなかにハードな戦いだ。
ちなみに筆者も5年連続で埼玉から遠征している。今年は地元の若手強豪相手に千日手指し直しで時間が足りずに負け。早々と取材に回ることができた。
会場となった加古川まちづくりセンターには、全国から猛者たちが集まった。
激戦のAブロックは鈴木肇さん(神奈川)と折田翔吾さん(大阪)の元奨励会三段同士の決勝戦に。鈴木さんは準決勝で加古川青流戦で優勝経験もある稲葉聡さんを大逆転で下してきた。折田さんは年末のアマ王将戦でも準優勝しており、銀河戦に続くプロ公式戦出場権を狙う。
折田翔吾さん(左)と鈴木肇さんのAブロック決勝戦
居飛車対振り飛車の対抗形から相銀冠の長期戦に。居飛車の折田さんの模様が良かったが、なかなか具体的な良さにはつながらない。時間切迫もあり、徐々に鈴木さんに流れが傾き始めた。
【第1図は▲5九飛まで】
ここから素朴に△5六桂が厳しい。以下▲7九角に△4八桂成▲5七飛△4二飛と回って後手優勢がはっきりした。以下先手も暴れに出たが、的確にとがめて後手が勝ち切った。
昨年決勝で敗れた鈴木さんは2年ぶりの代表。奨励会三段として出場した第3期と合わせて3度目の出場となる。「朝の時点で厳しい山に入ったなと。前回出場した時は増田先生に終盤チャンスを逃して負けたので、良い将棋を指したい」と抱負を語った。
Bブロックは樋田栄正さん(東京)と村山大地さん(兵庫)の決勝戦に。樋田さんはアマ王将戦で優勝経験があり、今も東京代表常連のベテラン強豪。村山さんは高校新人戦で代表になった経験がある程度で、ここ数年はあまりメジャーな大会に出ていなかったそうだ。
樋田栄正さん(左)と村山大地さんのBブロック決勝戦
村山さんの雁木に樋田さんは急戦に出る。村山さんは少し前まで関西将棋会館で臨時職員として働いていたそうで、審判長の井上慶太九段もよく知っていたそうだ。「いやー、彼のことは知ってましたが将棋を指すところは初めて見ました。こんなに強いとは!」と驚いた様子。
【第2図は▲5五角まで】
実戦はここから△8六歩▲同歩△同銀と攻めたが、▲8五歩が切り返し。以下△7四飛に▲9一角成△8八歩▲8一馬△8九歩成▲6三馬と攻めて先手優勢に。以下は押し切って村山さんの快勝となった。第2図では△4四角と合わせてどうか。▲同角△同歩▲5五角なら△6四歩▲同歩△5四歩の受けが利く(▲4六角に△4五歩がある)。
村山さんは初のプロ公式戦出場。「プレッシャーだが、しっかり研究して臨みたい。準決勝で強豪の井上輝彦さんに勝てたのが自信になった」と喜びを語った。
加古川青流戦は例年5月ごろに開幕する。アマ選手の対局は携帯中継されることも多いので、ぜひご覧いただきたい。この2人と合わせて地元の兵庫県のアマ名人戦代表者の3人がアマチュア代表として第8期青流戦に出場する。
ライター渡部壮大