将棋コラム

羽生棋聖VS斎藤七段。西のイケメン王子は王者の10連覇を止めることができるか?!棋聖戦五番勝負の展望は?

羽生棋聖VS斎藤七段。西のイケメン王子は王者の10連覇を止めることができるか?!棋聖戦五番勝負の展望は?

更新: 2017年06月17日

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羽生善治棋聖に斎藤慎太郎七段が挑戦する、第88期棋聖戦五番勝負がただいま進行中。開幕の第1局は羽生棋聖が貫録を示したが、まだシリーズとしては序盤。今後の展開はどうなるだろうか。

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第88期棋聖戦五番勝負第1局では、勝利とならなかった斎藤七段だが、第2局以降の巻き返しに期待がかかる。撮影:潤(棋聖戦中継plusより)

挑戦者の斎藤七段は、現在最も勢いのある若手棋士の1人と言えるだろう。2015年度は40勝12敗の勝率0.769、16年度は27勝9敗の0.750で、2年続けて勝率一位賞に輝いている。プロデビューは2012年だが、順位戦をC級2組が1期、C級1組が3期、B級2組は1期と短期間に駆け上がり、今期は初参加のB級1組で戦う。B級1組までは羽生棋聖の昇級スピード(C2、C1、B2はそれぞれ各2期)より速い。タイトル挑戦が早くから期待されており、今期は満を持しての登場となった。

棋風は居飛車党で、じっくりした将棋を好む。相矢倉となった第1局も、結果こそ負けとなったが、持ち味は存分に出た。また、詰将棋を「好きを通り越して愛している」というほどで、プロ棋士でも解けない難問が勢ぞろいする、詰将棋解答選手権チャンピオン戦では2連覇を達成。当然、それを生かした終盤力も売りだ。少し前の流行言葉を借りると「序盤・中盤・終盤とスキが無い」棋士である。

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第87期棋聖戦五番勝負で羽生棋聖は気鋭の若手棋士・永瀬拓矢六段の挑戦をフルセットで退けた。撮影:常盤秀樹

対する羽生善治棋聖。棋聖の他に王位・王座と三冠を保持し、第一人者の地位は揺るがない。棋聖戦では9連覇中(棋聖戦における最多連覇記録)で、ここ2年は前々期の豊島将之八段、前期の永瀬拓矢六段と、勢いに乗る若手を下して格の違いを見せつけている。今期は10連覇がかかっているが、仮に実現すると王座戦の19連覇、棋王戦の12連覇に続いて、3棋戦目での2桁連覇達成となる。過去に3棋戦で2桁連覇を達成した棋士は大山康晴十五世名人(名人戦13連覇、王位戦12連覇、九段戦・十段戦10連覇)しかいないので、ここでも偉大な先輩に追い付くことになる。

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若手棋士にとって「羽生善治」という存在は越えなければならない、とてつもなく大きな山だ。撮影:潤(棋聖戦中継plusより)

羽生棋聖の昨年度成績は27勝22敗(0.551)。この数字を見て「あれっ」と思われた方は鋭い。並みの棋士ならば十分な成績だが、羽生棋聖が年度勝率で6割を下回るのは1985年のデビュー以来、これが初めてなのだ。また、年度間勝数が30を下回ったのも、1996年度の26勝(17敗、0.605)以来である。96年度は前年度の七冠達成(46勝9敗、0.836)の反動と言えなくもないが、昨年度はどうだったのか......。

いやいや、将棋界史上空前の存在ともいえる大棋士を目先の数字だけで語ってはなるまい。これまでも幾度となく「羽生不調説」(それでもほぼ複数タイトルを維持していたあたり、並の棋士とは不調のレベルが違う)が流れたが、ことごとく跳ね返してきた。事実、五番勝負初戦でも勢いに乗る斎藤を跳ね返している。

次戦以降がどのような展開となるか。第2局は羽生の先手だが、ここも相居飛車の可能性が高そうだ。斎藤が研究を第一人者にどうぶつけるかということになるだろう。

筆者が斎藤の研究の深さに驚かされたのは、2015年の電王戦FINALのことだった。棋士チーム代表として将棋ソフト「Apery」と戦った斎藤だが、事前に貸し出されたソフトとの練習対局を繰り返し、ある局面に誘導してこちらが長考すれば、相手が疑問手を指すことまで突きとめていた。もちろん、対ソフトと対人の研究には違いがあるが、対局への用意周到さを感じさせるエピソードと言える。

斎藤の師匠である畠山鎮七段は「タイトル挑戦後は周りに気を遣わず、そして対局の感想戦が終わったら、タイトル戦が終わるまでは振り返らず、次の対局に集中するようにと伝えました」と語る。将棋の内容に関しては「師匠といえども対局中に対局室には入ることができません。一度対局のことが気になってしまうとキリなく、(小言が)どんどん出そうですね。(笑)」。とのこと。西のイケメン王子が第一人者に挑むシリーズ、第2局以降も要注目である。

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2016年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、叡王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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