将棋コラム

加古川青流戦のアマチュア代表選抜が決定!「棋士のまち加古川」での予選の様子をご紹介

加古川青流戦のアマチュア代表選抜が決定!「棋士のまち加古川」での予選の様子をご紹介

更新: 2017年05月23日

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加古川市、加古川市ウェルネス協会によって開催されている加古川青流戦。四段の棋士、三段の上位者に加え、女流棋士2名、アマチュア3名によって行われるトーナメント戦だ。決勝三番勝負は加古川市で開催されている。2011年より開始され、昨年は第6期が行われ、井出隼平四段が初優勝を飾っている。

なぜ加古川市が棋戦を主催しているのか。それは加古川市にゆかりのある棋士が5人もいることから、「棋士のまち加古川」をスローガンに将棋を取り入れたまちづくりが行われているからだ。数々のタイトルを獲得した久保利明王将、神吉宏充七段、第1期加古川青流戦の優勝者である船江恒平六段は加古川市出身。井上慶太九段は加古川に住んで「加古川将棋倶楽部」を開催している。また、名人挑戦を決めた稲葉陽八段も加古川市在住だ。

加古川市は平成12年の第58期名人戦第2局をはじめ、竜王戦や王将戦など、数々のタイトル戦を開催している。他に加古川将棋フェスタ(かつては加古川将棋まつり)も10年以上にわたって開催するなど、非常に将棋に力を入れている市だ。

このように、駅にも立て看板が出ている。

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加古川青流戦の特色は、アマチュア代表を決める選抜大会が開催されていることだ。プロ公式戦にアマチュアの出場する枠のある棋戦は多いが、いずれも全国大会の上位から選出されている。専用の選抜大会があるのは男性棋戦においてはこの加古川青流戦のみだ。第3期から2枠を決める選抜大会が地元の加古川市で行われ、プロ棋戦出場権を求め、全国各地から多くの強豪が集まってきている。ちなみにもう1枠は地元兵庫県のアマ名人戦代表者(今年は天野啓吾さん)だ。

話題を呼んだのは第5期で、選抜大会を抜けてアマチュア代表となった稲葉聡アマが勝ち進み、アマチュアとして初めてプロ公式戦で優勝するという快挙を成し遂げた。なお、稲葉アマは稲葉八段の実兄で、かつては加古川に住んでいたこともある。

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3月上旬は毎年、加古川に訪れるのが恒例となっている。初めてアマチュア選抜大会が開催された第3期は全国大会と重なって参加できなかったものの、第4回からは毎年欠かさず参加し、4年連続だ。

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今年の開催は3月4日、兵庫県加古川市の「加古川駅南まちづくりセンター」で行われた。今回の参加者は103人と過去最多となった。関東から17人もの参加があったほか、四国や九州からの参加者もあってまさに全国大会のようだ。もちろんレベルも非常に高い。最年少は10歳、最年長は67歳と年齢層も幅広い。誰でも平等に戦えるのがアマチュア大会の魅力だ。

この日一日で代表の2人を決めなくてはならないため、持ち時間は25分で切れたら負けと、スピーディーな早指し勝負だ。審判長は地元の井上慶太九段。気さくに感想戦に参加する姿も見られた。

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予選はなく、最初から負けたら終わりの一発トーナメントだ。クジにもよるが、青流戦出場権までは5~6勝が必要となる。地元のケーブルテレビなど取材陣も入り、熱気のこもった戦いだ。ちなみに筆者はあえなく準々決勝で敗退。無事決勝の取材に回ることができた。

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ブロックの決勝に勝ち残ったのは、Aブロックが稲葉聡さん(愛知)と知花賢さん(千葉)。Bブロックが鈴木肇さん(神奈川)と三宅潤さん(神奈川)の4人。稲葉さんは言わずと知れた前々期の優勝者。他の3人は元奨励会三段。4人とも30歳前後と、切れ負けのトーナメントらしく若い世代の活躍が目立つ。決勝のみ持ち時間が30分、切れたら30秒の長丁場だ。

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Bブロックは神奈川対決。鈴木さん(左)は第5期でアマチュア予選を勝ち抜き、公式戦でも1勝を挙げている。鈴木さんの居飛車に、三宅さんは石田流に構えた。

【図は41手目▲6八金左まで】


後手の作戦がまずく、先手がペースをつかむ。後手は馬を作ったものの、のんびりしていると▲7七角や▲6九金で大駒を目標にされてしまう。図から△5八馬▲同金△3五金が勝負手。とにかく暴れて攻め合いに持ち込もうとする狙いだ。▲5八同金では▲同銀の方が手堅かったが、本譜でも問題ない。しかし、先手の楽観に乗じ、後手は角損の強襲を決めて逆転することに成功した。

【図は97手目▲5三桂まで】


図から△5九角が厳しい寄せ。▲6八銀なら△8七銀から送る手がある。実戦の▲7七銀にも△6九銀が下段に落とす寄せ。以下▲同玉△7七角成▲5八玉△6六歩と、手順に駒を取って寄せが筋に入った。最後はピッタリ詰まして三宅さんが制勝。

三宅さんは三段リーグに在籍していたが、公式戦に出場した経験はない。三段時代、アマ復帰後を通じて初のプロ棋戦出場だ。「決勝戦は時間も、形勢も、苦しい将棋だった。初めての公式戦。せっかく出られるので、一局一局を大事に指したい」と話した。

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Aブロックは元青流戦優勝の稲葉さん(右)と知花さんとの決勝戦。稲葉さんは森下裕也さん、知花さんは遠藤正樹さんと、ともに昨年の代表者を倒しての勝ち上がりだ。戦型は相掛かりに。

【図は17手目▲8八銀まで】


図で△3三銀や△6五銀なら一局だったが、△8六歩は手拍子だった。▲同歩△同飛に▲9七角が厳しい反撃。△7六飛と取ったものの、▲5七銀とされて飛車が負担になる展開で後手が苦しい。ただ、先手も簡単には勝ちきれず、二転三転の泥仕合に。

【図は107手目▲7一角まで】


図から△6四桂の反撃に▲6六金が勝負手の受け。対して△3八飛が敗着。詰めろではないため▲8二角成と取って先手の勝勢となった。△3八飛では△7六桂▲同金△6四桂と迫れば際どかっただろう。

稲葉さんは3年連続の加古川青流戦出場。「決勝はいろいろありすぎて...。去年は三段に負けてしまったので、1勝して四段と指したい」と話した。

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井上慶太九段は「決勝の2局は大熱戦で、私もこういう将棋を指したいなと。お二人には青流戦でも活躍を期待します。今年は過去最高の参加者、そしてレベルだったと思う」と大会を総括した。

渡部壮大

ライター渡部壮大

高校生でネット将棋にハマって以来、趣味も仕事も将棋な人。
将棋の月刊誌、週刊紙、書籍などの編集部に在籍経験あり。
アマチュア大会の最高成績は全国ベスト16だが、もう少し上に行けないかと日々努力中。

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