里見女流王位VS伊藤女流二段。1戦目が大きなポイント。第28期女流王位戦五番勝負の展望は?

里見女流王位VS伊藤女流二段。1戦目が大きなポイント。第28期女流王位戦五番勝負の展望は?

ライター: 相崎修司  更新: 2017年04月26日

里見香奈女流王位に伊藤沙恵女流二段が挑戦する第28期女流王位戦五番勝負は、4月26日に第1局が行われる。両者がタイトル戦でぶつかるのは今シリーズが初めて。五番勝負の展望を見ていこう。

まず、女流王位の里見に関してはあらためて特筆すべきこともないだろう。昨年度は女流王位戦の防衛を皮切りに、出場したすべてのタイトル戦を制して五冠復帰。成績は22勝4敗と他の女流棋士を圧倒している。年度末のマイナビ女子オープン挑戦者決定戦で、上田初美女流三段に敗れ、全六冠制覇こそ来年以降に持ち越しとなったが、死角は見当たらない。本年度はこの第1局が初手合となる。

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第27期女流王位戦五番勝負第2局。里見女流王位は、岩根忍三段の挑戦を3連勝で退け、防衛を果たした。撮影:牛蒡

対する挑戦者の伊藤女流二段。タイトル戦は2015年度の第5期リコー杯女流王座戦以来、2度目の出場となる。このシリーズは持将棋指し直しもあり、女流棋界史上初となる五番勝負の第6局が行われる激闘のシリーズだった。加藤桃子女流王座(当時)に敗れはしたものの、一線級で戦う実力を見せたと言える。昨年度の成績は22勝8敗で、勝ち数は上田女流三段の27勝、室谷由紀女流二段の25勝に続く第3位タイだ。また、女流棋士代表として参加した男性棋戦では高野智史四段、宮田敦史六段、そして所司和晴七段を破っている。本年度は女流名人リーグで室谷女流二段を破り、白星スタートを飾った。

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第28期女流王位戦挑戦者決定戦の昼休明けの伊藤女流二段。撮影:常盤秀樹

これまでの女流棋戦における両者の対戦成績は1勝1敗で、ともに先手番で勝っている。また、2011年に行われた里見の奨励会1級編入試験では当時奨励会2級の伊藤が試験官を務めた(里見勝ち)。

女流棋戦での初手合いは2013年のリコー杯女流王座戦。相振り飛車の熱戦を155手で里見が制した。2戦目は2015年のリコー杯女流王座戦で、こちらは相居飛車から103手で伊藤勝ち。基本的には居飛車党の伊藤だが、裏芸で相振り飛車を指すことも多い。しかし対抗形を嫌っているというわけではなく、前述の室谷戦では向かい飛車に居飛車穴熊で快勝している。

受けて立つ里見。こちらは基本、相振り飛車も辞さずの振り飛車党で、当然ながら昨年度も振り飛車採用率が圧倒的に高い。だが前期女流王位戦五番勝負では岩根忍女流三段の振り飛車を全て居飛車で対抗し、3連勝と圧巻の防衛劇を見せている。

昨年度の傾向からすると、今シリーズは里見の振り飛車―伊藤の居飛車という対抗形になると思われるが、上記の通り、過去の2局で対抗形はみられなかった。どちらが序盤で作戦の駆け引きをみせるかということにも注目だ。

勝敗の流れは、伊藤が初戦を取れば面白くなるだろう。女流王位戦の里見は2期連続で3連勝と、対戦相手を圧倒している。その流れを崩すには、1戦目を制するかどうかが実に大きい。そうなると1局目の振り駒で伊藤が先手を引けるか、ということにも注目だ。

目を転じて、男性棋戦において若手棋士が羽生三冠にタイトル戦で勝つには「圧勝で勝たなければダメ」という見方がある。理想は勢いに乗ったストレート、悪くても1敗でというのだ。もつれれば最後は場数を踏んだ羽生三冠に分があるという。それと同じことが女流棋戦の里見にもいえるだろう。両対局者は年齢こそ離れていないが、女流タイトル戦の場数では2回目の伊藤に対して、里見は31回目と、圧倒的大差がある。この差を埋めるためにも、シリーズ序盤で勢いをつけるのが、まず挑戦者に求められることではないだろうか。

相崎修司

ライター相崎修司

2000年から将棋専門誌・近代将棋の編集業務に従事、07年に独立しフリーライターとなる。2024年現在は竜王戦、王位戦・女流王位戦、棋王戦、女流名人戦で観戦記を執筆。将棋世界などにも寄稿。

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