中学生棋士・藤井聡太四段、デビューから負けなしの14連勝。これまでの対局からみる、その強さの秘密とは?

中学生棋士・藤井聡太四段、デビューから負けなしの14連勝。これまでの対局からみる、その強さの秘密とは?

ライター: 渡辺弥生  更新: 2017年04月27日

藤井四段、破竹の14連勝

藤井聡太四段が強すぎる。2017年4月26日、第43期棋王戦予選の平藤真吾七段戦に勝ち、デビュー以来負けなしの14連勝を達成した

藤井が一期抜けすることになった三段リーグの最中、初参加で白星を重ねる13歳の三段と、2年前に詰将棋解答選手権で優勝した小学生(藤井はこの詰将棋解答選手権で現在3連覇中)が同一人物であることにようやく気が付いた私は、三段の知人に「藤井というのはすごいのか」と尋ねた。答えはこうだった。「彼は世界が違う」。直後、藤井が史上最年少四段となったニュースを耳にすることになる。

これまでの連勝記録

これまでのデビューからの連勝記録は松本佳介六段と近藤正和六段の10連勝が最高だ。松本と近藤が四段昇段したのはそれぞれ1995年10月と1996年の10月。半年間勝ち続け、翌年の3月、松本は森?二九段に、近藤は泉正樹八段に敗れることになる。

藤井と同じ中学生棋士で、現在棋界のトップに君臨する羽生善治三冠と渡辺明竜王は6連勝止まり。こちらの連勝を止めたのがそれぞれ関浩六段と伊藤能七段であることは、時折話題にのぼることだ(段位はすべて現在のもの)。天才と評判の藤井が、プロ昇段半年で早くも新たな記録を打ち立ててみせた。

非公式戦で勝敗には入らないが、AbemaTVの「藤井聡太・炎の七番勝負」においても、そうそうたるメンバーを相手に6勝1敗の成績を挙げている。まさに末恐ろしい、否、すでに恐ろしい14歳だ。

手厚く、負けにくい藤井将棋

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藤井聡太四段の公式戦初対局は、2016年12月24日に行われた第30期竜王戦ランキング戦6組で、加藤一二三九段との対戦であった。年齢差62歳、現役最年長棋士と最年少棋士との対局に多くの報道関係者が詰めかけた。撮影:常盤秀樹

デビュー戦は2016年12月24日、それまで最年少四段の記録を保持し、名人を含むタイトル獲得8期の加藤一二三九段。最年長棋士の加藤は76歳。14歳の藤井との年齢差はなんと62歳、最長年齢差の一戦として注目を集め、取材陣でごったがえした当日の将棋会館はまるでタイトル戦のときのようであった。将棋はがっぷり四つの矢倉戦となり、先手の猛攻を凌いだ藤井が、最後に蓄えた持駒を生かして加藤玉を寄せ切り、110手の熱戦を制した。

さて、「終盤が強い」「攻め将棋」と聞く藤井だが、これまでの将棋を見ると、手厚く指して中盤で優位を築き、最後は相手の攻めをきっちり一手余して勝つパターンが多い。対振り飛車戦においても、相手の飛車角を押さえ込み、終盤に入る前に投了に追い込む指し回しが目を引く。安定感のある、負けにくい将棋だ。12戦目までの戦型は角換わり6局、居飛車振り飛車の対抗型4局、矢倉1局、その他の戦型1局となっている。

藤井は、双方攻めたり受けたりの接戦を、わかりやすい一手勝ちの局面に持っていくのが実にうまい。終盤の読みの速さ、正確さ。藤井はなんといってもこれだ。 第1図は第30期竜王戦6組ランキング戦の所司和晴七段戦の終盤戦。

【第1図は△1五角打まで】


後手の所司が△1五角打と、4八の金取りに攻防の角を放ったところだ。考えることわずか2分。藤井はここで読み切った。△1五角打以下、▲1三銀△3三玉▲2二銀打△同金▲同銀不成△同玉▲3一銀まで、所司投了。一見すると一枚足りないようだが、最後のまるで詰将棋のような▲3一銀の捨て駒で、後手玉は詰んでいる。△同玉は▲4一竜△2二玉▲3二金△1二玉▲2一竜まで。▲3一銀に△3三玉と逃げるのも▲4二竜△2四玉▲3三角△1四玉▲1三金△同玉▲1二竜△同玉▲2二角成までで、ぴったり捕まる。これだけの詰みをあっという間に読み切ってしまうその終盤力には舌を巻く。

もう一つ、11戦目(第67期王将戦一次予選)の小林裕士七段戦をご紹介しよう。第2図は先手の小林が桂取りに▲7四歩と打った手に対し、藤井が△6五桂と歩頭に桂を跳ね出したところだ。

【第2図は△6五桂まで】


これが好手で、藤井が一気に流れを引き寄せた。▲6五同歩は△6六歩▲5八金に△8五歩▲7七銀△9六歩の取り込みが厳しい。歩切れの先手は▲9八歩と受けることができない。実戦は△6五桂▲7三歩成△同金▲6一と△8五歩と進み、以下10手足らずで先手陣を上から押し潰して藤井の勝ちとなった。この手厚い攻めも、藤井の武器だ。

4月13日の第30期竜王戦6組ランキング戦の星野良生四段戦、続いて4月17日の第67回NHK杯将棋トーナメント本戦の千田翔太六段戦、さらに4月26日の第43期棋王戦予選の平藤真吾七段戦にも勝利した藤井は、現在連勝を14に伸ばしている。

この先、どこまでその記録を伸ばすのか、果たして止めるのは誰なのか。破竹の勢いで勝ち続ける新星・藤井聡太。一戦一戦から目が離せない。

渡辺弥生

ライター渡辺弥生

大学で将棋を覚えて以来、すっかりその魅力の虜になった。王様より飛車が大事な、振り飛車でしか勝てない居飛車党。

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