将棋コラム

加藤桃子女王vs上田初美女流三段。女王4連覇か返り咲きか。マイナビ女子オープン五番勝負の展望は?

加藤桃子女王vs上田初美女流三段。女王4連覇か返り咲きか。マイナビ女子オープン五番勝負の展望は?

更新: 2017年04月10日

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2年ぶりの番勝負

4月に開幕する第10期マイナビ女子オープン五番勝負、加藤桃子女王に挑戦するのは上田初美女流三段。加藤と上田は2年前の第8期マイナビ女子オープンで五番勝負を戦っており、そのときは女王の加藤が3勝1敗で上田の挑戦を退けた。内容でも加藤が押していたシリーズで、「加藤強し」を印象づけた。

図はその五番勝負の第1局、先手の加藤が▲1六香△同香▲同飛△1五歩に▲3六飛と寄った局面だ。

【図1は▲3六飛まで】

序盤の研究に定評のある加藤に対し、対抗型の得意な上田が横歩取りで挑んだことにまず驚かされた。次に驚いたのがこの▲3六飛。△3五歩▲4六飛に△4四香と打たれると飛車が死んでいる。ところが△4四香には▲5五銀△同飛▲5六香と切り返して戦おうというのが、加藤の読み。瞬間的に銀損だが、△4六香には▲5五香△5三歩▲4六歩として、盤上と手駒の香二枚で攻めかかろうというのだ。実戦で、上田は、3五歩ではなく、△4二玉と自重し、そこで機を逃さず▲2六歩から動いた加藤の快勝となった。

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第8期マイナビ女子オープン五番勝負第2局での加藤女王。この期は、3勝1敗で加藤女王が上田女流三段の挑戦を退け防衛した。撮影:常盤秀樹

第2局以降も加藤は踏み込みよく攻め、最終第4局では上田の玉を長手数の即詰みに討ち取って女王防衛を果たした。二人はこのほかにマイナビ女子オープン本戦と女流王将戦本戦で一度ずつ対戦があり、それぞれ加藤、上田が制している。対戦成績は加藤4勝、上田2勝。

好調の挑戦者

さて、今回の番勝負はどうなるか。

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第43期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局終局後。鬼手△5一角で勝負を制した。撮影:常盤秀樹

挑戦者となった上田の2016年度の成績は27勝9敗、勝率0.75。勝数27勝はランキング1位だ。この冬、里見香奈女流五冠と女流名人戦五番勝負を戦ったばかり。開幕2連勝、里見をあと一歩のところまで追いつめた。タイトル奪取とはならなかったものの、直後のマイナビ女子オープン挑戦者決定戦でその里見を破り、挑戦権を獲得した。このほか倉敷藤花戦、女流王将戦においても挑戦者決定戦まで勝ち進んでいる。産休が明けて復帰した上田は、まるで自分自身生まれ変わったような勝ちっぷりである。

図は第43期岡田美術館杯女流名人戦五番勝負第1局の終盤戦。上田が▲5一角と打ち込んだところだ。

【図2は▲5一角まで】

この手には皆、度肝を抜かれた。以下△5一同角は▲7九玉。また△5一同金は▲同成銀が詰めろ。次に△7七桂成▲同桂△4二銀としても、▲同竜△同角▲6一銀から後手玉は詰む。

実戦は▲5一角に△7七桂成▲同桂△4二銀としたが、▲4二同竜△同角▲6二角成△同金▲7九玉以下、上田が激戦を制した。穴熊戦で鍛えた終盤の腕力を、この守り駒のいないに等しい玉形においても発揮した一局だ。女流棋士の中で終盤力が群を抜いている里見と終盤で競り合えるのは、上田だけだろう。

一方、奨励会員とあって現在の加藤の調子はつかみづらい。今期の女流棋戦での成績は4勝5敗。1年前の春、女王は防衛したものの、秋の第6期リコー杯女流王座戦五番勝負では里見に敗れ女流王座を失う。内容もぱっとしなかった。とはいえ、加藤が戦ったこれまでの9度のタイトル戦のうち、敗れたのは2度、里見との番勝負だけである。タイトル獲得数は早くも7期。参加している女流棋戦が少ないことを考えても、すごいことだ。本調子とはいかなくとも、「研究熱心で努力家」と言われ、奨励会で鍛えている加藤だけに、熱戦が期待される。

戦型は対抗型が有力

横歩取りから相振り飛車まで何でも指す両者だが、子育てに忙しく、勉強時間が思うように取れない上田にとって、研究だけで勝負がついてしまいかねない横歩取りや角換わりの将棋は選びづらいに違いない。戦型は上田の中飛車や四間飛車に加藤が急戦や居飛車穴熊で戦う、居飛車と振り飛車との対抗型が有力。両者とも持ち味の出やすい将棋で、勝負としてはまったくの互角だろう。

加藤は序盤研究に定評のある鋭い攻め将棋、上田は終盤のパンチ力が武器のバランス型だが、二人とも勝負どころの踏み込みがよく、見ている者を楽しませてくれる戦いになりそうだ。

個人的には和服のよく似合う二人の袴姿も楽しみである。加藤が勝てば女王4連覇、上田が勝てば4年ぶりの女王返り咲きとなる。第1局は4月11日、神奈川県「元湯 陣屋」で。

渡辺弥生女流初段

ライター渡辺弥生女流初段

大学で将棋を覚えて以来、すっかりその魅力の虜になった。王様より飛車が大事な、振り飛車でしか勝てない居飛車党。

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