斬新すぎる駒のデザインには理由があった。クリエイターが初心者向けにつくった文字のない将棋駒とは?

斬新すぎる駒のデザインには理由があった。クリエイターが初心者向けにつくった文字のない将棋駒とは?

ライター: 松谷一慶  更新: 2017年03月15日

王将、飛車、角行、金将、銀将、桂馬、香車、歩兵。

将棋の駒は8種類あり、すべて異なる動きをします。初心者が一番はじめに苦労するのが、この駒の動かし方。一度説明されただけでは覚えきれず、覚えたつもりでもいざ実戦になるとわからなくなって、なんてこともよくある話。

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そんな中、優れたデザインに送られる2016年グッドデザイン賞を受賞した「大明駒(たいめいこま)」が今注目を集めています。なんとこの駒、漢字は一切書かれておらず、その代わり駒の表面には金・銀・黒の三色の塗装があるだけ。でも、よくみるとこのデザイン、それぞれの駒の動きを視覚的に表しているんです。

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今回はこの「大明駒」の生みの親の、グラフィックデザイナーの稲葉大明さんにインタビューさせていただきました。

 ――「大明駒」をデザインしようと思ったきっかけはなんですか?

「浅草のよく行っていた飲み屋さんに将棋の盤と駒を置かせてもらって、友人と飲みながらよく指していたんですが、ある時、周りのお客さんたちから頼まれ、将棋を教えることになったんです。そこでルールを説明したとき、まず駒の動き方でつまずく方が多くて。その時、初めて将棋に触れる人でも簡単にゲームが始められるような工夫はできないかな、と思ったのがきっかけです。子供向けの入門駒はいくつかあるんですが、大人向けの入門駒はなかなかなくて」

 ――それで、駒をデザインしようと思ったんですね。

「ほんとうは、駒の形も含めて、まったく新しいものを作ろうと思っていたんですが、いざ考えてみると改良点が思いつかなくて。将棋の駒って、厚み、大きさ、形状、どれを取ってもデザイン的に完璧なんですよ(笑)。そこで駒の形はそのままに、デザインだけ工夫することにしました」

 ――「大明駒」のデザインにあたりこだわった部分はありますか?

「なるべくシンプルに、という部分は気をつけました。構想段階では、赤や黄色などさまざまな色を使い、カラフルにした方が初心者も馴染みやすいかなと思ったんですが、あまりに将棋の雰囲気から離れすぎてしまって。やはり、将棋に興味を持ってもらうのが目的なので、将棋の持つ和の部分は壊さないようにと考えました」

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 ――いちばん難しかったところはどこですか?

「裏面、つまり成駒をどうするか、という部分は頭を悩ませました。というのも、『と金』は全て動きが同じなので、動きを表すデザインだけではその駒がもともと桂馬だったのか香車だったのか、見分けがつかないんです。そこで表面と裏面だけではなく、駒の側面にも塗装を施すことで、裏返しても、その駒がなにかを判別できるようにしました」

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 ――他にも将棋関連でデザインをしたいものはありますか?

「ほんとは盤も作りたいんですが、これももうデザインとして完成されすぎていて(笑)。ずっとグラフィックデザイナーとしてやってきたこともあり、次は将棋をグラフィックでデザインできないかなと思っています」

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「将棋は難しそう」というイメージを払拭し、一人でも多くの人に将棋を楽しんでもらいたい、という思いを込めて作られた「大明駒」。駒の素材により楓(9,720円)と斧折(16,200円)、黄楊(27,000円)の3種類の価格で販売されています。

駒の動かし方に自信がないあなたも、少し気分を変えて将棋を指してみたいあなたも、ぜひこの「大明駒」で将棋を指してみてはいかがでしょうか?

下記の場所にて購入ができるので、皆さんぜひチェックしてみてください。

・3331 Arts Chiyoda
住所:東京都千代田区外神田6丁目11-14
・HALU Unique & Universal
住所:東京都世田谷区三軒茶屋1-36-6-203
・オンラインショップ FUNDAMENT PRODUCTS

大明駒のHPはこちら

松谷一慶

ライター松谷一慶

2013年より世界一周に出発し、アジア、ヨーロッパ、アフリカ、南米、北米を経て、2016年春に帰国。これまでに訪れた国は約100ヵ国。 自然と音楽とお酒とお祭りとトライアスロンとバンジージャンプと甘いものとキリンとぶり大根とが好き。将棋は祖父と何度が指したことがあるくらいだったが、最近また覚えはじめる。

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