「巨匠、今度は阿佐ヶ谷で撮って下さい。」
先生は口癖で話しかける時若い者にも巨匠と言います。
連れて行かれた店は入り口から時代劇に迷い込んだ風で、利休好みの渋い着物の高齢の女性が、徳利と杯を、付け出しに出された小皿にはキャビアだろうか?
「アウンサン・スーチーさんは美人ですね。」と先生が話し始めます。
差し向かいの僕は出された小皿を睨み付けていました。
「あ、それトンブリ。」
そうそう、先生は声をかける時、若い女性にはお嬢さん、高齢な女性には小町さんと声をかけます。先生風に言うと、徳利を運んできたその女性は小町とんと言う事になります。
小町さん、
「それ、箒の実」と僕に教え笑顔。
僕、初めて頂きました。